3.2 実証システム構成要素の設計
3.2.1 システム構成要素、ユーティリティ、計測制御系の設計
原理実証システムの構成要素としては、実機での排熱回収系に相当する給水システム、高温高圧水発生装置および超臨界水噴射弁、弁駆動油圧装置、そして単筒試験機となる。本報にて説明のとおりH16年度までに装置の製作は概略完了しているが、原理実証システムでの試験に備えて、新たに製作した装置で必要なユーティリティをまとめた。
また本システムの制御系としてとくに重要となるのは超臨界水噴射弁の制御である。超臨界水噴射弁は、アクチュエータヘの電流波形で噴射弁リフトを制御する。本年度、超臨界水噴射弁のコントローラの製作(ソフトも含む)を実施した。PCで予め設定された信号波形がドライバを介してアクチュエータにおくられる。噴射期間、噴射間隔、信号波形の形状は任意に定めることができ、実証システム試験ではさらにエンジンの回転数と同期させて信号を送ることになる。
原理実証システムの単筒試験機では、あらたに2本の超臨界水噴射弁が据えられるシリンダカバーまわりが主な改造箇所となる。H15年度にカバー切断調査を実施しているが、この結果をもとにカバーのサイドに超臨界水噴射弁を2本据える構造として詳細設計・製作をすすめた。図.3-2-1に噴射弁のカバー配置図を示す。
本年度はこの超臨界水噴射弁を2本据えるカバーの製作を実施した。確性試験を行い、鋳物組織、断面硬度、熱伝導率などの調査を実施している。また確性試験結果をうけて木型修正などを行い、再度鋳物を製作した。本カバーをH17年度の原理実証試験に用いる。
図.3-2-1 超臨界水噴射弁配置図
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H17年度実施予定の原理実証試験むけ装置を製作した。製作した主な装置は給水システム(H15年度に一部設計製作済み)、高温高圧水発生装置(炉、熱交換器、ダクト)、そして噴射弁駆動油圧ユニットである。各々について装置概要を述べる。
(1)給水システム
給水システムはH15年度に高圧給水ポンプシステムの部分を製作済みであり、基本的な機能の確認を実施している。本年度はその高圧給水ポンプシステムの上流に水処理装置を追加した。エンジンに噴射する水条件は30[MPa]、400[℃]以上のレベルだが、ここでは規格の数値を参考として水処理装置の設計製作を行った。装置のフローは水道水をイオン交換樹脂に通し、ついで膜脱気装置を経て薬注を行い、高圧ポンプに給水するシステムである。給水システムの全体写真を図.3-3-1に示す。
イオン交換樹脂についてはカートリッジ式の樹脂塔を採用した。あらかじめ今回使用する水の成分を調査したうえで樹脂を選定した。比抵抗計が接続されており、イオン交換樹脂の能力を常時監視することができる。膜脱気は真空ポンプで引くことにより、規定を満足する酸素濃度が実現できる。薬注装置は水のpHを調整するもので、0.1%のアンモニア水を微小吐出できる装置である。また本年度タンクに接点付きのレベル計を接続した。これにより給水システムからの流量が計測できる。
(2)高温高圧水発生装置
H15年度の設計をベースに詳細検討を加えて、高温高圧水発生装置を製作した。製作した高温高圧水発生装置の諸元を表.3-3-1に、また装置の写真を図.3-3-2〜3に示す。装置は主に熱風発生炉(バーナ+炉)、整流器、熱交換器、ダクトからなる。炉からの熱風は水平方向から鉛直上方にL字型に曲がったのち、熱交換器を経てダクトを通じて屋外に流れる。炉から熱交換器までは内側断熱とし、ダクトは外側断熱となっている。外側断熱の部分については架台などで熱伸びの影響を考慮した設計を行った。
熱交換器はH15年度設計のとおりフィンチューブ式にて製作した。チューブ材料は当初NCF800TB(インコロイ800)を予定していたが、材料の入手性などを考慮して、最終的にはSUS316を採用した。
また熱交換器の上流(炉出口)には、なるべく熱風が熱交換器に均一な温度分布で流入するように、整流板、多孔板からなる整流器を接続した。高温高圧水発生装置の性能を決める主要な部分(整流器および熱交換器)については株式会社ササクラ殿に製作を実施いただいた。
表.3-3-1 高温高圧水発生装置主要諸元
要目 |
諸元 |
熱風発生装置入口 |
常温(最低0℃、最大35℃) |
熱風発生装置出口 |
定格 温度610℃、風量3300Nm3/h
最小 温度290℃、風量1700Nm3/h |
熱交換器出口 |
定格 圧力35MPa、温度450℃
最小 圧力35MPa、温度250℃ |
排ガス圧力損失 |
最大 +40mmAq |
供給電源 |
AC200V/50Hz、AC220V/60Hz |
供給燃料*1 |
LPG 8kPa10〜kPa |
制御 |
発生蒸気温度一定制御
PID制御により燃料投入量を制御 |
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図.3-3-1 給水システム外観
図.3-3-2 高温高圧水発生装置(バーナ部)
図.3-3-3 高温高圧水発生装置(熱交換側より)
(3)噴射弁駆動油圧ユニット
噴射弁駆動のための油圧ユニットを製作した。製作した油圧ユニットの主な諸元を表.3-3-2に示す。超臨界水噴射弁には噴射弁の針弁をコントロールする制御油、また針弁のシール油、またアクチュエータ部の冷却油の3ラインが必要となるが、本ユニットにて各ライン向けの油を所定の圧力にて供給することが可能である。
表.3-3-2 噴射弁駆動油圧ユニット主要諸元
要目 |
諸元 |
吐出圧力、容量 |
制御油用 最大70MPa 0.3L/min
シール油用 最大70MPa 0.3L/min
アクチュエータ冷却用 最大 1MPa 3.0L/min |
電動機 |
主ポンプ 3.7kW 4P 1450rpm
冷却用ポンプ 0.4kW 4P 1450rpm |
タンク容量 |
50L |
作動油 |
ISO VG#32 |
許容油温 |
負荷運転時 0℃〜60℃ |
供給電源 |
AC200V/50Hz、AC220V/60Hz |
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