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1. 開発研究の概要と目的
 超臨界水をエンジンシリンダ内に噴射してNOxとCO2の同時低減を図る、超臨界水場エンジンの原理実証を目的とした開発研究に取組んだ。
 平成14年度実施のFS研究に引き続き、平成15年度からの3ヵ年計画で本システムの原理実証試験を行った。
 平成15年度は原理実証システムの計画および設計の実施を、ついで平成16年度は原理実証システム製作を行い、平成17年度は原理実証システム試験を実施した。
 原理実証システム試験における目標は以下のとおりである。
 
・NOxの低減(1/3に減少)
・CO2の削減(8%削減)
・出力の大幅上昇(15%アップ)
・熱効率のアップ(48%→52%)
 
2. 実証システムの設計(平成15年度実施内容)
2.1. 実証システムの計画と設計
2.1.1 システムの性能検討
2.1.1.1 検討モデル
 エンジンシリンダをモデル化し、マスバランス、エネルギーバランス式より筒内サイクルのdT/dθ、dP/dθ導出する。筒内ガスは混合ガスと考え、各種ガス単体を半理想気体として、比エンタルピを温度の5次式で近似して検討を進める。
 
2.1.1.2 検討結果
(1)超臨界水噴射による性能改善効果
 450kW/cylクラスのディーゼルエンジンを対象に検討を行う。筒内に任意の超臨界水噴射を考えたときの効果を検討した。まず、超臨界水の噴射波形による性能改善幅を検討するため、矩形、三角形(前高、後高)での噴射を考える。噴射期間は20[deg]、エンタルピ3000[kJ/kg](35[MPa]、500[℃]相当)、で計算した。またさらに受熱開始角度を遅らせて、Pmaxを一定とした場合についても検討を行った。検討結果を図.2-1-1に示す。
 検討の結果、Pmax一定とした場合、熱効率は最大3.1P(ポイント)改善の結果を得た。
 
(2)ディーゼルサイクルでの検討
 ついで圧縮比をあげてディーゼルサイクルをつくり、そこでPmaxを維持するように噴射させる検討を行った。ベースサイクル+Pmax維持投入で3.3P改善、ディーゼルサイクル+Pmax維持投入で5.2P改善の結果となった。
 
(3)超臨界水投入+燃料追加投入の検討
 まずディーゼルサイクルをベースに投入燃料量を追加した場合の計算を行った。燃料量を追加するほどTmaxは増大し熱効率は低下する傾向となった。ついで、燃料を追加した状態で、さらに超臨界水噴射をしたときの計算を実施した。検討結果を図.2-1-2に示す。Pmaxにて超臨界水を投入し、その後Pmaxを維持するように燃料からの受熱が行われると仮定した。出力15[%]アップ、熱効率4P改善(8[%]改善)の同時達成できる目処を得た。
 
(4)システム全体での検討(フィードバックの概念を組み込んだ検討)
 前項までで目標性能を達成する条件の目処をつけた。ついでフィードバックの概念をとり入れた検討結果により、下記の性能値達成の目論見を得た。
・2流体サイクルプロセスの解析(理論)モデルより 出力:1.3倍、熱効率1.15倍
・機関の制約(通過可能ガス流量、温度等)を勘案して 出力:1.15倍、熱効率1.08倍
 
2.1.2 原理実証システムの仕様検討および基本設計
 性能検討の結果を参考に、実証システム(とくに排熱回収系〜噴射弁)の仕様を表.2-1-1に示すように決めた。(実証システム向けは12cyl.向けとして記載する)
 本仕様をもとにシステムの基本設計(一部製作)を進める。
 
表.2-1-1 実証システムの仕様
機器 仕様
項目 単位 値/メーカ
高圧給水システム 圧力 MPa 35レベル
最大流量(試験機) kg/h 300
最大流量(実機例) kg/h 3600
熱交換器(試験向け) 胴側入口温度 -
胴側出口温度 -
(バーナor電気ヒータ方式)
水側入口温度 30
水側出口温度 450
水側圧力 MPa 35
熱交換器(実機向け) [高温側]
胴側入口温度 525レベル
胴側排ガス流量 kg/h 42000
胴側圧力 MPa 0.3
水側入口温度 250レベル
水側出口温度 450レベル
水側圧力 MPa 35レベル
最大水側流量 kg/h 3600
[低温側]
胴側入口温度 300レベル
胴側圧力 MPa 0.1
水側入口温度 30レベル
水側出口温度 250レベル
水側圧力 MPa 35
噴射弁 噴射期間 deg 20〜45
噴射圧力 MPa 35レベル
最大噴射量(試験機) kg/h 300
最大噴射量(実機例) kg/h 3600
 
図.2-1-1 超臨界水投入による性能改善
 
図.2-1-2 超臨界水投入による性能改善(燃料追加)


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