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2.2 一部コンポーネントの設計製作
2.2.1 超臨界水噴射弁の設計・試作
(1)総噴孔面積の決定
 性能検討結果から得た基本諸元をベースに、総噴孔面積を決定から噴射弁の設計をスタートした。噴射弁の入口、出口の圧力温度条件をもとに、所望の噴射量を得る総噴孔面積を導出した。噴射期間45[deg]、最大噴射量3.0倍(対燃料量)の条件で検討した結果、必要噴孔面積は15.0[mm2]となった。
 
(2)弁通路面積と噴孔数の決定
 つぎに導出した総噴孔面積をもとに、ノズル各部の通路面積を決めた。既存の燃料噴射弁を参考に、ノズルの総噴孔面積に対する比率で各部の通路面積を決定した。なお、噴射弁本数は1〜3本について検討した。
 また噴孔数についても検討した。これも既存の燃料噴射弁にならい、噴孔面積と噴孔ピッチの関係から噴孔数を確定した。基本的に噴射弁はシリンダのサイドに配置することとし、噴射弁の先端において、噴孔の配置角度は150[deg]とした。
 
(3)噴射弁図面
 上記のノズル部計画をベースに噴射弁全体の設計を進めた。後述のカバー配置の制限もあり、噴射弁のサック部を長くするタイプとした。噴射弁の全体写真を図.2-2-1に示す。また噴射弁製作メーカにて実際に噴射テストを行い、ノズルの噴霧特性を検査している。
 
(4)カバーへの噴射弁配置
 カバーへの噴射弁配置を検討するために、カバー切断による調査を行った。現状のカバーは給排気ポート、燃料噴射弁取付け穴、冷却水流路空間などが入り組んだ複雑な形状をしており、そこの超臨界水噴射弁を現状のカバーのままで配置することは難しい。今後超臨界水噴射弁の改造、また給排気ポートの位置変更も念頭に置き、来年度カバー設計・製作を進めていく。図.2-2-2に超臨界水噴射弁の取付図を示す。
 
2.2.2 超臨界水噴射弁の試験
(1)応答確認試験
 後述の噴射弁テスト装置にて超臨界水噴射弁の高圧N2ガスによる応答確認試験を行った。まず供給N2の圧力35[MPa]、シリンダ模擬容器内圧力を25[MPa]に設定し、針弁リフト時間約5[ms](クランク角22.5[deg])を狙ってリフト量の確認を行った。試験結果を図.2-2-3に結果を示す。
 アクチュエータの電流通電指令時間5[ms]に対して、針弁は無駄時間0.5[ms]、立ち上がり時間1.5[ms]、立下り時間1[ms]の良好な応答が得られた。
 リフト量は目標1.5[mm]に対して、最大1.4[mm]と若干少ない結果となったが、アクチュエータの調整により十分目標値確保が可能な範囲にある。再現性も良好である。
 またここで、簡単にアクチュエータ部について触れる。図.2-2-4が本噴射弁の作動原理のモデル図である。今回採用したアクチュエータは磁気により伸びる超磁歪材を用いたアクチュエータである。
 今回のアクチュエータは、超磁歪材の回りに巻かれたコイルに電流が流れ磁界が発生すると、超磁歪材が伸びてパイロットバルブが開く構造となっている。バルブが開くと、針弁上部の圧力が開放され、針弁がリフトして噴射が行われる構造となっている。
 
(2)噴射量計測試験
 噴射量の計測結果を説明する。試験は供給N2圧力35MPaにて、シリンダ模擬容器圧力を閉じて数回噴射させ、噴射前後の容器圧力差から噴射量を算出した。試験はアクチュエータヘの通電時間をパラメータに約20回噴射を行い測定した。結果は図.2-2-5に示すとおりで通電時間に対して比例で噴射量が増える傾向が確認できた。それぞれの通電時間での噴射波形を図.2-2-6に示す。噴射率可変噴射弁の大型エンジン適用の例ともなっている。
 
2.2.3 コンポーネントの設計
2.2.3.1 熱交換器の設計
 実証試験機用、また実機用(前段(高温側)、後段(低温側))それぞれについて熱交換器の設計を行った。設計は株式会社ササクラ殿に実施頂いた。
 
(1)実証試験機用熱交換器
○伝熱管の材料選定
 熱交換器用継目無ニッケルクロム鉄合金管にて計画を進めた。その他候補としては、ボイラ熱交換器用合金鋼鋼管、またボイラ熱交換器用ステンレス鋼管などが挙げられたが、高温強度、耐食性などの観点から上記のニッケルクロム鉄合金管を選定した。図.2-2-7熱交換器の図を示す。
 
○システム構成
 加熱源は都市ガスによる熱風加熱とした。熱風発生器の主な諸元は表.2-2-2のとおり。当初は電気ヒータで検討を進めていたが、電気容量が大きいこと、またヒータとして適当なものがないため、熱風加熱方式とした。
 
表.2-2-1 熱風発生器の諸元
項目 単位 数値
熱風量 Nm3/h 3300
熱風温度 610
熱交圧損 kPa 0.07
加熱蒸気温度 450
ガス供給圧力 kPa 6.9
電源電圧 V 200
燃料 - 天然ガス
・バーナの燃焼量制御は加熱蒸気温度にて行う。
・冷風ファン量の制御は熱風発生器出口温度にて行う。
 
○運転方法など
運転時間:試験機最大300[H/年]、実機8000[H/年]
運転パターン:試験機 任意(長期休止もあり)、実機DSS、WSS(長期休止もあり)
起動方法:起動時はまず水を循環させ、熱交出口の温度が設定レベルに達したら、噴射弁に送り噴射を開始する。(循環設備必要(脱気機との関連))
停止方法:噴射弁ストップ⇒熱交換加熱ストップ⇒温度低下を確認してポンプ停止
 
(2)実機用熱交換器
 実機用では、例として過給機の前後に熱交換器を配置することを考えている。過給機の前段(高温側)、過給機の後段(低温側)それぞれについて検討を行い、熱交換器を設計した。
 
○伝熱管の材料選定
 実証試験機用熱交換器の設計に同じである。
 
○データシートおよび外形図
 実機用熱交換器のデータシートの一部を前段、後段それぞれ表.2-2-2、3に示す。また前段熱交換器の図面を図.2-2-8に示す。
 
表.2-2-2 データシート(前段)
項目 単位 胴側 管側
全流量 Nm3/h、 kg/h 42000 3600
温度 525レベル(入口) 450レベル(出口)
交換熱量 kJ/h 5700000
総括伝熱係数 W/m2K 47.0
設計圧力 kPa(G)、 MPa(G) 400 36
 
表.2-2-3 データシート(後段)
項目 単位 胴側 管側
全流量 Nm3/h、 kg/h 42000 3600
入口温度 300レベル(入口) 250(出口)
交換熱量 kJ/h 3360000
総括伝熱係数 W/m2K 40.0
設計圧力 kPa(G)、 MPa(G) 150 36
 
2.2.3.2 高圧ポンプの設計と製作
(1)高圧ポンプの仕様と設計準備
○基本仕様
給水系の仕様、また要検討事項は下記のとおりである。
圧力:35[MPa]
温度:常温
量:300[L/h](試験機)、3600〜5400[L/h](実機)
 
○給水系設計にあたっての留意事項
 給水系設計にあたって下記の留意事項が挙げられる。圧力変動の低減、給水脱気、水のコンタミ、静浄度、吐出調整弁の性能、流量、長寿命化試験検討、長期停止時の養生方法、エアパージ
 
○水処理レベル(実機)
 水処理については熱交換器にて下記が懸念されるが、今回はポンプのみの試験であり、また運転時間も短いため、まず市水にて試験を行い、来年度純水を使用することを考える(試験運転時間ではスケール付着によるトラブル発生の可能性は小さいと想定)。ボイラに関連する一般的な障害に対する対策を下記に示す。
スケール付着:補給水処理(イオン状、濁状不純物処理)⇒ろ過装置、イオン交換法
管材の腐食:水質調整⇒Ph調整、脱酸(脱気+化学処理(ヒドラジン))
付着物大:化学洗浄⇒シリカ対策(製作後)脱脂、水洗
 
(2)高圧給水システムの設計
 ポンプには3連式のプランジャーポンプを採用した。試験向けのため流量に余裕を持たせ、また振動低減の観点からプランジャー2台での駆動を考えた(2台のポンプをカップリングで直結させて、位相をずらして駆動させることを可能とした)。プランジャーポンプはモータ駆動(15[kW]4P)とし、モータはインバータ制御とした。システムとしては300[L]の樹脂タンクに一旦水をため、それをさらに100[L]のタンクに移動させ、それをポンプに給水するシステムとした。昇圧された水を冷却し、100[L]のタンクに戻すラインも備えている。今回採用のプランジャーポンプの給水温度は45[℃]以下となっており、100[L]タンクには温調アラームがついている。戻された水によりタンク内温度が上昇した場合は、冷却水量を調節し温度を制御する機能もつけた。製作したシステムの全体外観およびポンプ部を図.2-2-9、10に示す。
 
(3)高圧給水システムの試験
 製作した高圧給水システムの基本的な試験を実施した。回転数をパラメータに噴射量を計測し、メーカ提示どおりの流量が得られることを確認した。


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