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6.2 塗装実験塗装
(1)実験期間:平成17年12月23日(金)、24日(土)
 
(2)実験塗装場所:ユニバーサル造船(株)有明事業所
 
(3)実験塗装範囲
(3)-1 防食塗料(バラストタンク用)実験塗装対象区画
 防食塗料においては、就航後のバラストタンク内の環境条件の違いなども考慮し、トップサイドタンク部および二重底部の2箇所について実験塗装を行った。
 
図6.2-1 バラストタンクトップサイドタンク部ブロック
 
図6.2-2 平底部(二重底部)ブロック
 
 図6.2-1、図6.2-2は、実験に使用したトップサイドタンク部・バラストタンク二重底部のブロックを示している。バラストタンクは、各ブロックとも原則としてブロック端部/エアテスト対象部を除き、ブロック搭載までに塗装完了となるため、これらブロックの1トランス間の一部(トップサイドタンクボトム[板+ロンジ]部:約5m(L)、面積約30m2)、及び二重底部[内底板+ロンジ]:約3m(L)、面積約20m2)を実験塗装対象区画として選定し、地上ステージにて実験塗装を実施した。
 
(3)-2 防汚塗料(外板用)塗装対象区画
 防汚塗料試験塗装対象区画は、平底部及び立上部を選定した。防汚塗料の試験施工エリアは平底部/立上部共に約3m×3m=9m2の範囲とした。平底部塗装においては渠中での盤木ダメージを防ぐため、また立上部塗装においては、岸壁係船時のフェンダー(防舷材)によるメカニカルダメージを防ぐため、それぞれこれらの部位を避けるように実験塗装を行った。
 
(4)実験結果
 12月末と寒い時期ではあったが、防食塗料、防汚塗料とも、大きな問題なく所定の箇所に塗装を完了することができた。また、両塗料とも施工後は良好な塗膜を形成した。実船塗装試験結果を図6.2-3〜-7に示す。
 
(4)-1 防食塗料実船塗装
 2次処理としてブラスト+ジンク塗料施工し、その後、本塗装前に軽くパワーツール処理
 
図6.2-3 二重底タンク(防食塗料施工時)
 
塗装後の状態(1)
二重底タンク
 
図6.2-4 二重底タンク(防食塗料完了時)
 
塗装後の状態(2)
トップサイドタンク
下地処理としてブラスト施工し、直ちに本塗装施工
 
図6.2-5 トップサィドタンク(防食塗料完了時)
 
(4)-2 防汚塗料実船塗装
平底部(3m×3m)施工
 
図6.2-6 平底部(防汚塗料施工時)
 
立上部(3m×3m)施工
塗装後の状態
 
図6.2-7 立上部(防汚塗料完了時)
 
6.3 まとめ
 開発された防食塗料、防汚塗料を用いた実船実験を実施し、特に大きな問題なく塗装施工ができることを確認した。また、防食、防汚両塗料とも、施工後は良好な塗膜が形成されていることを確認した。VOCの削減を目的として約3年という長い期間をかけて開発された新塗料であり、実船に適用した箇所については今後就航後の調査を実施し、所定の防食性能、防汚性能が発揮されているかを確認していくことが肝要であると考える。
 
7. 結言
 3ヶ年の研究計画において、防食塗料用及び防汚塗料用の基礎樹脂を開発し、開発された基礎樹脂の防食及び防汚用の塗料化の試行と性能評価、さらに、開発された塗料を塗布できる塗装機の開発、並びに、造船現場での塗装を行った。
 防食塗料については、目標としたVOC量50g/L以下を達成することができ、耐久性能においても短期的な試験では現用塗料と同等のものが開発された。同塗料の実船への塗装を行った結果、施工条件が劣悪(冬季、降雪後)にもかかわらず良好な塗膜を得た。
 防汚塗料については、アクリルエマルションを検討した結果、目標とした200g/Lを上回る80g/L程度のVOC量の塗料を開発した。耐久性に関しても実施した乾湿交番試験等の結果では現用塗料と同程度であることがわかった。
 塗装機の開発及び現場での施工についても良好な結果を得た。すなわち、開発塗料の実船への塗装を行った結果、施工条件が劣悪(冬季、降雪後)にもかかわらず良好な塗膜を得た。
 以上のように、本研究は当初の目標を達成することができた。
 一方、VOC規制に関しては、改正「大気汚染防止法」が平成16年5月に、国会で可決され、平成18年に施行されることとなり、改善目標は2010年で、2000年のVOC排出量の30%削減である。
 本研究の目標は、塗料のVOCを現行最少の1/2以下とし規制以上のものを実現したが、30%削減であれば価格及び性能面でより有利な塗料の開発も可能であり、今後の規制動向をみながらさらに取り組みを続けていきたい。


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