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今月の詩(6)
平成十八年度全国吟詠コンクール指定吟題から
【幼年・少年の部】(絶句編)(6)
偶成  朱熹
 
【大意】偶成とは、特に題を設けないで偶然にできた詩をいう。この詩は歳月のたちやすく、学問の成就し難いことをいい、一寸の時間をも惜しんで勉学に励まねばならぬと世人を戒めた勧学の詩。
 若者は年を取り易く、それにひきかえて学問はなかなか成就するものではない。だからほんの僅かな時間でも、いい加減にしてはいけない。池の堤に萌える春の草を見ているうちに、庭先に茂っている青桐の葉に、もう秋風がいつのまにかしのび寄るのだ。
 
【青年の部・一般一部・二部・三部】(絶句編)(6)
秦淮に泊す 杜牧
 
【大意】秦淮に舟泊りして、向こう岸の酒家で妓女の歌う玉樹後庭花の曲を聞き、感慨にふけったことを詠じた詩。
 夕もやは冷たい秦淮河の水の上にたちこめ、月の光は白々と川岸の砂を照らす。この夜、私は秦淮河に舟泊りをしたのだが、川の向こうは料亭であった。妓女たちは、昔、ここに都した陳の国の亡国の恨みのこもる歌とは知らずに、いまなお玉樹後庭花の曲を歌ってさんざめいている。
(解説など詳細は財団発行「吟剣詩舞道漢詩集」をご覧ください)
 
吟詠家・詩舞道家のための
日本漢詩史 第28回
文学博士 榊原静山
江戸時代の詩壇【その四】
釈 元政(げんせい)(一六二三〜一六六八)別名を日政、号は妙子とか不可思議、あるいは泰堂と称し、近江の出身。京都の妙顕寺の日豊上人について得度し、深草に瑞光寺を建て、持戒堅固で、親に孝養をつくし、詩文和歌が上手な聖僧として名が高く、詩文を集めた“草山集”三〇巻がある。
 
 
(語釈)草山晩眺・・・夕方の眺め。
(通釈)自分は山を愛するがゆえに、いつものように門を出て山中に来た。杖を投げ出して松の根っこにもたれて坐ると目の下に秋の川の水が平野を二つに区切って流れ、夕方のもやが遠くの村をへだてている。露が昇ったのか、林表が白く星が見える頃には樹も梢も暗くなっている。初めてこんなに長く坐っていたことに気がついて腰をあげると、蒼い苔の上に自分の坐ったあとがくっきりと残っていた――。
 元政や丈山の死後、名ある者として、山崎闇斉、伊藤仁斉、伊藤東涯、木下順庵などがいる。また兵学者として有名な山鹿素行も“元旦試筆”というようなすぐれた詩を残している。


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