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吟剣詩舞
こんなこと知ってる?(14)
 昨年四月号から始まった新企画「吟剣詩舞こんなこと知ってる?」の十四回目です。読者の皆さまと双方向で意見ができるコーナーとして設けております。
 吟剣詩舞の歴史、人物、身近な出来事など、読者の皆さまが驚くようなこと、是非、知らせたいことがありましたら財団事務局月刊誌係まで、ご寄稿をお願いいたします(形式は問いません。写真等も歓迎です)。
 今回は、かつて本誌で発表した「吟詠アクセントの寛容化」(昭和六十年九月二十九日決定)について再度ご紹介し、確認いたしたいと思います。日頃の吟詠の稽古等にお役立ていただければ幸甚です。
 寛容化の具体例としては、一、単語が連続する場合のアクセント複合化の容認。二、頭高及び中高で、符号(┛)の次に来る語が二拍以上の場合の特例。三、音楽性を高める場合のアクセントの平板化の容認。の中で、一と三については、寛容化されるときはコンクール開催年度の指定吟題表に太字で明記することになっていますので、特に説明の必要はないと思いますが、二の特例については、該当の語句は常にあることですので、これについて詳述させていただきます。
 
二、頭高及び中高で、符号(┛)の次に来る語が二拍以上の語の場合、曲調に従って音が下がってもよい。
 
 
 なお、曲調に従って下がるところは、音を滑らかにつなげるため、引いたり揺りを入れたりすることが可能です。この場合、「ワタリ」とは考えません。
 
平成17年度全国吟詠合吟コンクール出吟順決まる
 第38回全国吟剣詩舞道大会(11月13日、日本武道館)午前の部で行なわれる全国吟詠合吟コンクールの出吟順が、出場団体代表者会議での抽選で下記のように決まりました。
 
平成17年度全国吟永合吟コンクール出場団体(出吟順)
順番 吟題 作者 団体名 性別
1 中庸 元田東野 清吟堂吟友会 男子
2 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 群馬県吟剣詩舞道総連盟 女子
3 芳野懐古 藤井竹外 東京都吟剣詩舞道総連盟 女子
4 芳野懐古 藤井竹外 栃木県吟剣詩舞道総連盟 女子
5 天門山を望む 李 白 朝翠流朝翠会本部 女子
6 江雪 柳 宗元 社団法人日本吟道学院 女子
7 芳野懐古 藤井竹外 美声流美声会 女子
8 芳野懐古 藤井竹外 春洋流東洋吟詠会 女子
9 芳野懐古 藤井竹外 紫虹流紫虹会 女子
10 赤馬が関舟中の作 伊形霊雨 不朽流吟詠会 女子
11 赤馬が関舟中の作 伊形霊雨 東京都吟剣詩舞道総連盟 男子
12 天門山を望む 李 白 岳精流日本吟院本部 男子
13 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 泰洲流詩吟朗詠会 女子
14 中庸 元田東野 聖風流吟道会 男子
15 鹿児島客中の作 亀井南冥 詩吟洌風流 女子
16 鹿児島客中の作 亀井南冥 詩吟洌風流 男子
17 芳野懐古 藤井竹外 吟道紘仙流白鴎会 女子
18 中庸 元田東野 契秀流吟詠会 男子
19 黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 李 白 日本国風流 男子
20 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 心彰流愛吟詩道会 男子
21 白楽天の江州司馬に左降せらるるを聞く 元  山梨県吟剣詩舞道総連盟 女子
22 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 心彰流愛吟詩道会 女子
23 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 千葉県吟剣詩舞道総連盟 女子
24 天門山を望む 李 白 吟詠静凰流 女子
25 江雪 柳 宗元 社団法人日本吟道学院 男子
26 大楠公 徳川景山 春洋流東洋吟詠会 男子
27 中庸 元田東野 天洲流吟詠会 男子
28 鹿児島客中の作 亀井南冥 吟剣詩舞道劔豪会 女子
29 赤馬が関舟中の作 伊形霊雨 墨水流墨水会 男子
30 江雪 柳 宗元 山梨県吟剣詩舞道総連盟 男子
31 中庸 元田東野 千葉県吟剣詩舞道総連盟 男子
32 芳野懐古 藤井竹外 契秀流吟詠会 女子
33 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 日本吟心流詩吟國舟会 女子
34 芳野懐古 藤井竹外 吟亮流和花菜会 女子
35 中庸 元田東野 日本国風流 女子
36 江雪 柳 宗元 雪山流日本吟詠学院 男子
37 中庸 元田東野 北海道中央吟剣詩舞道総連盟 女子
38 芳野懐古 藤井竹外 岳精流日本吟院砂子岳精会 女子
39 芳野懐古 藤井竹外 墨水流墨水会 女子
40 中庸 元田東野 神奈川県吟剣詩舞道総連盟 女子
41 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 群馬県吟剣詩舞道総連盟 男子
42 江雪 柳 宗元 雪山流日本吟詠学院 女子
43 芳野懐古 藤井竹外 福岡県吟剣詩舞道総連盟 女子
44 中庸 元田東野 朝翠流朝翠会本部 男子
45 鹿児島客中の作 亀井南冥 聖風流吟道会 女子
46 中庸 元田東野 静岡県吟剣詩舞道総連盟 男子
47 中庸 元田東野 日本國風流詩吟吟舞会
神奈川県地区本部
男子
48 芳野懐古 藤井竹外 宮城県吟剣詩舞道総連盟 女子
49 中庸 元田東野 埼玉県吟剣詩舞道総連盟 男子
50 赤馬が関舟中の作 伊形霊雨 神奈川県吟剣詩舞道総連盟 男子
51 芳野懐古 藤井竹外 茨城県吟剣詩舞道総連盟 女子
52 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 岳精流日本吟院本部 女子
53 芳野懐古 藤井竹外 臥風流吟詠会本部 女子
54 大楠公 徳川景山 吟亮流吟風会 男子
55 楠公子訣るるの図に題す 頼 山陽 吟道紘仙流白鴎会 男子
 
表紙説明◎名詩の周辺
橘 曙覧独楽吟集―橘 曙覧作
福井・福井市
 今年の国民文化祭は福井県で行なわれます(全国吟詠剣詩舞道祭は十一月三日・文化の日、サンドーム福井)。そんなこともあって、一足早く福井市に行ってきました。
 
 福井は幕末に、松平春嶽、橋本左内等が活躍し、吟詠集の中にも多く彼等の詩がとりあげられていますが、「独楽吟(どくらくぎん)」というユニークな和歌集で知られる橘 曙覧(たちばな あけみ)も吟剣詩舞家にとっては重要な人物のひとりです。特に、平成六年六月、天皇、皇后両陛下がご訪米の際、当時のビル・クリントン大統領が歓迎式典のスピーチの中で橘曙覧の独楽吟の一首「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」を引用し、一躍有名になりました。独楽吟は「楽しみは〜とき」形式で詠まれた連作の和歌で、平成十二年四月十日、福井市足羽一丁目にオープンした「福井市橘曙覧記念文学館」には、この連作五十二首が全てイメージポールに表示されており、訪れる人々の目を奪う大胆な演出で展示されています。
 橘曙覧は、幕末の歌人・国学者。藁や文具を商う正玄家の長男として、福井城下の石場町(現在の市内つくも一丁目)に生まれました。正玄家は天皇の子孫の流れをくむ名家で、物心ついた頃より、国学や文学の道を志し、二十八歳で実家を異母弟に譲り、足羽山黄金舎(こがねのや)で隠棲生活に入りました(橘曙覧記念文学館はこの黄金舎跡にあります)。彼はここで勉学に励むかたわら、和歌の道にも励み、数々の名歌を「志濃夫廼舎歌集(しのぶのやかしゅう)」に残しています。嘉永元年、三十七歳のときに、黄金舎から三ッ橋に引っ越し「藁屋」と称した住まいで没するまでの二十一年間を過ごしました。現在の照手二丁目の旧宅跡にはそれを示す石碑と歌碑が立っています(表紙写真参照)。
 その後、この藁屋では、藩主松平春嶽の命により万葉集の秀歌三十六首を選んで謹慎中の春嶽に届けたり、春嶽も藁屋を訪れるなど交流が続きました。
 国民文化祭で福井を訪れられたら、ぜひ、橘曙覧記念文学館へも足を運んでみてください。
記念文学館2階。第2展示室入口。この中に独楽吟全52首のイメージポールが表示されている
 
平成独楽吟。平成六年のクリントン大統領の引用を機に独楽吟を顕彰しようという機運が高まり、平成七年より全国公募。平成十一年からは福井市と財団法人歴史のみえるまちづくり協会を中心に表彰や発表がされている
 
【福井市橘曙覧記念文学館】福井駅よりタクシー約5分。バスは「コミュニティバスすまいる」が市内を循環しており便利。どこまで乗っても1回100円。愛宕坂下車、徒歩1分。
 
(表紙の写真撮影には、福井市役所歴史のみち整備推進室のご協力をいただきました)


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