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2.4.3 60海里ショートカットの最適化
(1)目的と概要
 大陸棚限界線が決定した後、60海里ショートカット最適線を計算する。海洋法第76条において、大陸棚限界線は「60海里を越えない長さの直線」として定義される。そのため、前段階で計算された大陸棚限界線データから最適なショートカットデータを抽出することにより、さらに大陸棚を拡張できる。
 本プログラムは大陸棚を最も拡張できる点間距離60海里未満のショートカット線分群を抽出することを目的とする。点間距離60海里未満の最適ショートカット線分を以降「最適線」とする。
 
(2)入出力データ
 連続線分データを入出力する。入力データは大陸棚限界線の自動選択プログラムを通過したものであることを規定する。
 
(3)アルゴリズム
 本研究では以下に示す2つのアルゴリズムを考え、その両方を実現し比較した。
 
アルゴリズム1: 基点を固定し計算する方法
アルゴリズム2: 基点を固定せずに計算する方法
 
 両アルゴリズムを以下に説明する。
 
アルゴリズム1
1)最初のデータを基点とし、出力する。
2)60海里探索:基点から距離60海里以下の最遠点を最適点とする。ここでもし距離が60海里以下の点がなければ、データエラーとする。
3)沖凸探索:基点−最適点の直線よりその間の点が沖に突き出していないか調べる。沖に張り出している点があった場合、その点を最適点に設定し、3)を繰り返す。
4)近隣探索:基点、最適点近傍で仮基点と仮最適点を移動し、面積が最大の仮基点−仮最適点の組を正式な基点、最適点として出力する。
5)最適点を次の基点に設定し、2)以降を繰り返す。
 
 アルゴリズム1の流れを図47に示す。
 
図47 計算基点を固定する方法全体の流れ
 
アルゴリズム2
1)1点を基点として全ての点に対し、面積計算を行う。
2)全ての点に対し、1)の計算を適用する。
3)計算したショートカット線で最大面積のものを最適線として採用する。
4)採用した最適線を除いた点で再度1)から3)の計算を繰り返す。
5)ショートカット線を作成できなくなった時点で計算を終了する。
 
(4)動作状況
 同一のデータを用い、2種類のアルゴリズムを比較した。計算結果を出力し、さらにその結果で最適化を行い、増加面積が0km2になるまで繰り返した。なお、ここでの増加面積は簡易な面積計算法で算出したため、比較は可能であるが、絶対値は正確ではない。アルゴリズム1の結果を図48から図50に、アルゴリズム2の結果を図51と図52に示す。両図で青色の連続線分は計算に使用したデータ、赤色の連続線分は最適化結果である。
 
図48 アルゴリズム1の計算結果 1回目
 
図49 アルゴリズム1の計算結果 2回目
 
図50 アルゴリズム1の計算結果 3回目
 
図51 アルゴリズム2の計算結果 1回目
 
図52 アルゴリズム2の計算結果 2回目
 
 アルゴリズム1では基点から60海里離れた点を検索し、その近傍で最適点を探す。最適点が近傍にない場合、別の点で最適化を行ってしまう。そのため最適化結果を再度最適化すると、図49のとおり増加面積が0にならなかった。またアルゴリズム1より、アルゴリズム2の方が、図53のように増加面積が大きい場合もあった。
 
図53 両アルゴリズムによる計算結果比較
 
 増加面積は表6のとおり、アルゴリズム1で27,066km2、アルゴリズム2で29,897km2であり、アルゴリズム2で2,872km2多い。総じてアルゴリズム2がアルゴリズム1より優れていた。
 
表6 両アルゴリズム比較
アルゴリズム1 アルゴリズム2
増加面積 計算時間 増加面積 計算時間
1回目 27,025km2 約1分 29,897km2 約27時間
2回目 41km2 約10秒 0km2 約30秒
3回目 0km2 約10秒 - -
合計 27,066km2 - 29,897km2 -


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