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第2章 研究の内容
2.1 現地観測
2.1.1 現地観測場所及び現地観測工程
1)海洋短波レーダーの設置位置
 海洋短波レーダーの設置位置は、鳴門海峡の北側海域の流況観測のために3箇所、南側海域は2箇所を選点し、それぞれ海岸に近接する陸域の適地に設置した。設置位置を図2.1.1.1に示す。
 
図2.1.1.1 海洋短波レーダー設置位置
 
2)現地観測工程
 現地観測における工種別の実施工程を表2.1.1.1、海洋短波レーダーの観測期間を表2.1.1.2に示す。観測概況は、9月7日に台風14号の影響による停電で、孫埼局で5時間の欠測が生じたほかは、計画どおりの観測が実施できた。
 
表2.1.1.1 現地観測実施工程
 
表2.1.1.2 海洋短波レーダー観測期間
観測場所 観測期間 備考
網干島−大磯埼 7/14 19:00〜8/18 07:30
(34.5日)
宮の鼻−室 8/19 13:00〜9/5 08:00
(16.7日)
孫埼−室 9/5 12:30〜9/22 09:00
(16.8日)
孫埼 9/7 00:00〜05:00欠測
(停電)
 
2.1.2 現地観測方法
1)海洋短波レーダー観測
 海洋短波レーダー観測は、鳴門大橋の南側海域については、観測局を「網干島」と「大磯埼」に配置し、34昼夜の観測を実施した。北側海域は、レーダー視線方向の交差角拡大による精度低下範囲を補うため、観測局を「室」と「宮の鼻」の組合せで16昼夜の観測後、「宮の鼻」の観測局を「孫埼」に移動して、16昼夜の観測を実施した。使用した海洋短波レーダーの性能を表2.1.2.1に示す。
 
表2.1.2.1 海洋短波レーダーの性能
項目 性能等
機種 Sea Sonde(Codar社製)
周波数 41.75〜42.05MHz
周波数掃引幅 300KHz
レーダー形式 FMICW方式
送信出力 25W
掃引繰り返し周波数 4Hz
アンテナ 型式 垂直モノポール(送受)、クロスループ(受信)
偏波 垂直偏波
観測性能 距離分解能 500m
観測範囲 約0.5km〜16km
流速分解能 1.4cm/sec
方位分解能 1度、5度
 
2)機器のキャリブレーション(アンテナパターン測定)
 海洋短波レーダーの電波送受信特性の補正を行うため、各観測局でアンテナパターン測定を実施した。アンテナパターンの測定方法は、調査船側ではトランスポンダーとこれにロギングさせたGPSを搭載し、一定速度で各観測局から1〜2km程度離して円周状に航走した。観測局では調査船からのトランスポンダー信号を受信し、GPS位置と合成してアンテナパターンを作成した。短波レーダーのデータ解析における信号到来方向は、この実際に測定したアンテナパターンを使用して算定した。図2.1.2.1にアンテナパターンの模式図を示す。
 
図2.1.2.1 アンテナパターン模式図
 
3)ADCP観測による精度検証
(1)ADCP観測
 海洋短波レーダーの精度検証のため、ADCP流速計による流況観測を実施した。観測方法は、各観測局において観測海域中央部付近の視線方向に、同一のADCP計画測線を設定し、海洋短波レーダーの距離分割500mの範囲(レンジセル)から得られる視線方向流速と、このレンジ範囲におけるADCP観測値の平均値を比較する方法とした。ADCP観測は、北流時、南流時の両潮時について行い、最小観測層を海面下約5m、層厚は2mとした。対地速度への変換は、使用機器のボトムトラッキング法で実施した。使用した流速計の性能及び観測条件を表2.1.2.2、観測模式図を図2.1.2.2に示す。
 
表2.1.2.2 ADCP流速計の性能
項目 性能等
機種 ワークホースADCP(RD社製)
周波数 300KHz
観測層 5mから2m層厚で100mまで
観測方法 3秒間隔
測定精度 ±6.1cm/sec(測流範囲約15ノット、層厚2mの場合)
 
図2.1.2.2 ADCP観測模式図
 
(2)海洋情報部観測資料との比較による精度検証
 当該海域においては、第五管区海上保安本部海洋情報部が、定期的にADCP流速計による流況観測を実施しており、この観測時に強流域の視線方向観測を実施して頂いた。このデータと海洋短波レーダーの観測値についても、前項と同じ方法で精度検証を行った。第五管区海上保安本部海洋情報部のADCPの観測諸元を表2.1.2.3に示す。また、ADCP観測の航跡を図2.1.2.3に示す。
 
表2.1.2.3 第五管区海上保安本部のADCP観測諸言
項目 性能等
使用船舶 うずしお(吃水2m)
機種 CI-60(古野電気製)
観測層 2、10、20m+吃水
観測方法 15秒毎の平均値
流速精度 ±(2%+0.2kn)
 
図2.1.2.3 ADCP観測航跡


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