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深江丸による運用検証航海2
患者さんの体験乗船 10月2日
1. 実施概要
1.1 運営組織
 「災害時医療支援船運用計画策定と実施」調査委員会が実行部会を組織して実施する。
 
1.2 実施日時
2005年10月2日(日)9時より17時まで
 
1.3 実施内容
(1)目的:
 災害時に船舶を使用した透析患者の搬送を行うにあたって、医療スタッフが乗船した「深江丸」に透析患者を乗船させ、深江―大阪間の訓練航海を行い、透析患者の海上搬送のフィジビリティを検証する。
 
(2)検証方法:
(1)患者、医療スタッフ及び実行委員が乗船
(2)深江〜大阪間航海による、患者の海上搬送の実施、乗船体験を通じた問題点調査と意見収集
(3)抽出された問題点の改善に関する分析検討
 
(3)訓練時の想定:
 阪神地域を襲った甚大災害により、神戸にある一定範囲の透析室が壊滅的被害を受け、維持透析の継続が不可能になった。
 また、阪神地域間の陸路の寸断によりある程度の期間孤立する状況となった。
 「海陸連携システム」の利用により、当該施設と被災地外の大阪にある受け入れ施設との間で調整を行うことができた。
 そこで、当該施設に通院中の患者が海路を利用して移動し、被災地外の施設で維持透析を行うこととなった。
 当該施設からバスで神戸大学海事科学部附属練習船深江丸(総トン数449トン、乗船定員100名(臨時変更)係留岸壁まで搬送される。
 
 医師、臨床工学技士及び看護師が乗船待機する(受け入れ側の港から同乗してきたと想定)深江丸に乗船して被災地外の施設付近の岸壁まで搬送される。
 岸壁から被災地外の施設までバスで搬送される。
 その後、被災地外の施設での維持透析を行うという想定。
 被災施設は比較的元気な方が通院されているサテライト施設で、電車や自家用車で通院可能な20名の患者群である。
 重症を負っている方は空路による搬送を受けることを想定しており、この患者群の中には含まれない。
 また、船内での治療は、補液と圧迫止血などによって止血可能な創傷処置、酸素投与による応急処置程度までを想定している。それ以上の処置が必要な方は、地上で処置を済ませた後に乗船するか、もしくは処置が不可能な場合は空路による救援を受けていただき、乗船しないものとする。
 
1.4 実施要領
(1)スケジュール
9:00 阪神西宮駅に集合
(山崎委員、赤塚委員、山川委員、宮本委員、看護師2名、患者20名)
9:15 阪神西宮駅出発 ←訓練航海開始
9:30 神戸大学海事科学部内、深江丸係留岸壁に到着(残りの実行委員はここで集合し合流)
10:00 深江丸出港
・実行委員長挨拶
・医会挨拶
・患者に訓練内容説明
・船内調査活動
(バスは、花崎撮影クルーを乗せて神戸大学から大阪港へ回送)
12:00 大阪港(天保山岸壁)着
12:00〜13:00 昼食及び休憩
以後2班に分かれる
 
■大阪班(山川委員、看護師3名、臨床工学技士2名、大阪の患者5名)
13:00 バスで白鷺病院まで、出発
13:30 白鷺病院着、白鷺病院スタッフによって船内で収集した患者情報の精度をチェック
←訓練航海終了
14:00〜15:00 患者と意見交換会
15:00 終了、患者は最寄り駅までタクシーでお送りして解散、バスは深江まで回送
■神戸班(兵庫の患者14名)
13:00 大阪港出港
15:00 深江帰港
15:30〜16:30 患者と意見交換会
16:30 終了、患者をバスで阪神西宮駅までお送りして解散(船内で収集した患者情報の精度は後日照合によりチェック)
 
患者さんの体験乗船は西宮の宮本クリニックから大阪の白鷺病院に患者を移送する想定で行われた
 
9:00 阪神西宮駅に患者さん、スタッフが集まる
 
9:30 深江キャンパスから深江丸に乗船
 
日本透析医会山崎会長のあいさつ
 
深江丸の矢野船長から船での生活の注意点について説明される
 
1.5 実施報告
(1)実施概要
 10月2日(日)に、日本財団助成「災害時医療支援船運用計画策定と実施」事業の一環として、第2回目となる深江丸による運用検証航海が実施された。この航海は、災害時に船舶を使用した透析患者の搬送を行う際、患者情報の何を、どのように取得し、陸上側支援施設に伝達するか、患者が海上搬送に耐えられるかなどを、透析患者、及び透析医、看護師、臨床工学技士といった医療スタッフが個々の職責の視点および職責相互関係の視点から検証することを目的として実施された。
 当日、事業主体者である日本透析医会を代表して山崎先生の挨拶、井上実行部会長の挨拶、災害医療連絡協議会会長の押田先生の挨拶の後、赤塚先生より検証航海の目的、検討内容について説明がなされた。そして、参加された患者、看護師、臨床工学技士を以下の4つのグループに分けた。そして、患者情報シートを使用して、患者から情報を収集した。
 収集した患者情報は、パソコンを使用して電子化(エクセルファイル)にした後、海陸連携システムを用いて陸上側に転送後、電子メールを使用して受け入れ側施設である白鷺病院に患者データを送信した。これにより、船上において患者情報を収集し、陸上の支援施設に転送出来ることが検証できた。
 大阪天保山岸壁着岸後、昼食をとった後、大阪の患者群は白鷺病院までバスで搬送した。白鷺病院では送信された患者情報を確認するとともに、検討会を行い積極的な議論が行われた。
 また、神戸の患者群は大阪から深江までの復航時に操船体験や船内見学を行い、船内の環境を検証するとともに、クルージングを楽しんでいただいた。深江着岸後船内において検討会を行い、ここでも活発な意見交換が行われた。
 
(2)検証項目
●災害時における患者情報伝達の精度と方法についての検討
●患者、医療スタッフによる船内環境の視察(患者態様による医療対応、船内加療とその環境、資機材輸送とその環境等々)
●航行中の動揺、振動、騒音環境の体験
●深江丸の生活環境、衛生環境の調査
●深江丸のライフライン支援、通信機能の調査など
●海陸連携支援ネットワークを使用した船陸間通信の確認
 
(3)上記一連の体験、視察を通じて感じた問題点ならびに今後の要チェック項目を抽出する。
 
(4)記録・検証調査の様子をVTRで記録
 
(5)報告書
●実施結果を報告書の形式に取りまとめる
 
航海中船尾風景。患者さん達は航海自体を楽しむ余裕も見られた
 
患者さんからの聞き取り(患者カードを持っているか?透析条件を把握してるかなどが調べられた)
 
患者さんからの聞き取り


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