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深江丸による運用検証航海1
医療スタッフの体験乗船 7月18〜19日
 
第1回目の運用検証航海は深江港から明石峡大橋付近まで往復するコースがとられた
 
船内学生ホールで行われた検証航海の目的、検討内容の説明
 
船内宿泊体験の夜の深江丸
 
 
岸壁でのラジオ体操の後、船内に戻る
 
1. 実施概要
1.1 運営組織
 「災害時医療支援船運用計画策定と実施」調査委員会が実行部会を組織して実施した。
 
1.2 実施日時
2005年7月18日(月)17時より
7月19日(火)17時まで
 
1.3 実施内容
医療スタッフによる乗船検証
目的:災害時に船舶を使用した透析患者の搬送ならびに透析資機材輸送の運用上の問題点を「深江丸」による航海を通じて抽出するとともに、乗船体験をもとに透析医、看護師、臨床工学技士といった医療スタッフが個々の職責の視点および職責相互関係の視点から検証する。
 
検証方法:
(1)医療スタッフ及び実行委員が乗船
(2)深江〜大阪湾〜深江の航海中、医療関係者による乗船体験を通じた問題点調査と意見収集
(3)抽出された問題点の改善に関する分析検討
 
1.4 実施要領
(1)スケジュール
平成17年7月18日(月)
17:00 事前検討会
17:30 透析医会(山川先生)挨拶
17:40 井上実行委員長挨拶
17:50 運用検証航海日程の説明
18:10 船内生活説明(矢野船長)
18:30 質疑応答
19:00 夕食
平成17年7月19日(火)
07:00 起床、朝食
09:00 運用検証航海
透析医会(山川先生)挨拶
09:10 井上実行委員長挨拶
09:20 運用検証航海の説明
10:00 深江出港 大阪湾航海
12:30 深江帰港
12:30〜13:30 昼食
13:30 検討会(学術交流棟1階 コンファレンスホール)
運用検証航海を踏まえた問題点・改善点についての議論、意見交換
井上実行委員長挨拶
透析医会(山川先生)挨拶
15:00 解散
(2)深江丸乗船
医療スタッフによる船内環境の視察(患者態様による医療対応、船内加療とその環境、資機材輸送とその環境等々)
航行中の動揺、振動、騒音環境の体験
深江丸の生活環境、衛生環境の調査
深江丸のライフライン支援、通信機能の調査など
(3)検討会
 上記一連の体験、視察を通じて感じた問題点ならびに今後の要チェック項目を抽出する。
(4)記録
検証調査の様子をVTRで記録
(5)報告書
実施結果を報告書の形式に取りまとめる
 
1.5 検証時の想定と検証の目標
 巨大海溝型地震と津波により一定範囲の透析室が壊滅的被害を受け、維持透析の継続が不可能になったこと。なおかつ交通網の寸断によりある程度の期間孤立化をみる状況となったため、当該施設に通院中の患者様50名全員と付き添いスタッフとして臨床工学技士2名と看護師3名が、深江丸(総トン数449トン、乗船定員64名)に乗船して被災地外の施設での支援透析を行うことを想定する。被災施設は比較的元気な方が通院されているサテライト施設で、45名が電車や自家用車で通院可能であり、5名程度の方が車椅子ないしは介護保険などによる通院補助を受けている状況の患者群である。重症を負っている方は空路による搬送を受けることを想定しており、この患者群の中には含まれない。
 また船内での治療は、補液と圧迫止血などによって止血可能な創傷処置、酸素投与程度までを想定している。それ以上の処置が必要な方は、地上で処置を済ませた後に乗船するか、もしくは処置が不可能な場合は空路による救援を受けていただき、乗船しないものとする。
 患者群はバスなどで港に集合し、整然と乗船が可能であること。不特定多数の患者様が三々五々やってくる状況は想定しない。また船舶により搬送された先は被災地外であり、ライフラインも治療手段も十分用意されているため目的地に着いた後は高度医療を適切に受けられるものとする。またそういう活動が迅速に行えるように救急車を含む適切な輸送手段を用意して、待ち構えていてくれるものとする。
 以上の想定に基づき、重症を負っていない患者様を被災地外に船舶により搬送するとした場合、実際にはどのような問題点が発生するかを検証するための航海である。
 
1.6 実施報告
 7月18日(月)、19日(火)の2日間、日本財団助成「災害時医療支援船運用計画策定と実施」事業の一環として、深江丸による運用検証航海が実施された。この航海は、災害時に船舶を使用した透析患者の搬送ならびに透析資機材輸送の運用上の問題点を「深江丸」による航海を通じて抽出するとともに、乗船体験をもとに透析医、看護師、臨床工学技士といった医療スタッフが個々の職責の視点および職責相互関係の視点から検証することを目的として実施された。
 18日には、事業主体者である日本透析医会を代表して山川先生の挨拶、井上実行部会長の挨拶の後、赤塚先生より検証航海の目的、検討内容について説明がなされた。そして、参加された看護師、臨床工学技士を4つのグループに分け、グループ毎に以下の検討項目を提示した。
Group A・・・・・・
メンバー:大坪(腎不全看護学会、神奈川)、阿部(兵庫Ns)、本庄(兵庫Ns)、松尾(大阪Ns)、宮原(長野CE)、西村(滋賀CE)
課題:透析不能になった透析室の患者50人がスムーズに被災地外施設の透析室で臨時透析を行うためには、患者情報という観点において様々な配慮が必要です。乗船前の準備として何が必要か、乗船中にスタッフとしてどういうことに配慮しどのような動きをすればいいか、ご検討ください。
Group B・・・・・・
メンバー:高橋(腎不全看護学会、神奈川)、松本(兵庫Ns)、安楽(兵庫Ns)、左座(大阪Ns)、河本(大阪Ns)、羽田(兵庫CE)
課題:被災者である透析患者は身体的にも精神的にも疲弊している状態と考えられます。このような透析患者を船舶で搬送するにあたって、船内環境などのハード上の問題、あるいはケアする立場での問題点、職種間の連携も含め、スタッフとして配慮すべき点についてご検討ください。
Group C・・・・・・
メンバー:大川(腎不全看護学会、千葉)、本田(兵庫Ns)、羽生(兵庫Ns)、比良(大阪Ns)、安田(兵庫CE)
課題:透析患者は年々高齢化しており、少なくない透析患者が車椅子を使用するなど、移動に際して介助を要します。今回は50人中そのような患者が5人いる、と想定しているわけですが、このような要介助患者に対する対応を具体的にどのようにすればよいか、あるいはハード上の改善点について、同乗するスタッフの立場でご検討ください。
Group D・・・・・・
メンバー:遠藤(腎不全看護学会、岩手)、仁科(兵庫Ns)、松坂(兵庫Ns)、芦田(兵庫Ns)、古賀(大阪Ns)、伊勢崎(兵庫CE)
課題:最近の透析患者は合併症を多く抱えている方も多く、また被災者というきわめてストレスのかかる状況では、一見問題ないような状態でも、搬送時の病状の悪化も十分考えられます。また緊急に処置が必要な患者はトリアージされて乗船していない、という想定ですが、すぐに処置を要しない程度の軽傷の患者に対する処置は必要な可能性が考えられます。スタッフの立場で、急変時の対応を含めた船内における治療における問題点と改善すべき点についてご検討ください。
 また、CE(臨床工学技士;武田氏、森上氏を中心に)には上記とは別に、CHF装置の船上での安定した運転について検討(旭化成メディカル社の社員の方々とともに)をお願いした。
 その後、深江丸船長の矢野先生より船内生活についての説明があった後、グループに分かれて事前検討を行った。
 19日は、CHF機器の船内への搬入から始まり、深江出港後、六甲アイランド沖から明石海峡手前で折り返し、深江に帰港するまでの約2時間半の間、各班に分かれて、それぞれの検討項目に従って、参加者は船内の設備を見学しながら、問題点の洗い出し、改善策の検討を行った。また、航海中にCHF機器を作動させ、機器が正常に作動することを確認した。
 深江帰港後、総合学術交流棟4階に設置されている海陸連携システムのデモを見学した後、コンファレンスホールにおいて、各グループの代表者から抽出された問題点や改善策について発表が行われ、引き続き質疑応答、意見交換が積極的に行われた。
 
操舵室、矢野船長より航海の説明を受ける
 
武田技師を患者に見立て、船上での穿刺が可能か検討
 
船上透析の可能性を検討するため運び込まれたCHF装置
(協力:旭化成メディカル)


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