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就労に関して
 学校卒業後の進路として就労ということが課題となってきます。就労については、一般就労と授産施設などへの福祉的就労のふたつがあります。いずれにしましてもご本人の能力、適性に合った就労形態を選択することが大切です。ここでは一般就労について紹介します。
 一般就労とは、原則として、最低賃金をクリアーし、健康・労災・雇用の3つの保険が付いた雇用をされることを指します。
 
1. どのような仕事についているのでしょうか
 段ボールの組立、パレット製造、ラベル貼り、電機部品の組立などの製造業。プレス、アイロンがけ、たたみ、仕分け、洗濯機の操作などのクリーニング業。盛りつけ、食器洗い、パン・クッキー製造、野菜の袋詰めなどの食品業関係。倉庫内の清掃や、洗車、配送助手、荷物運びなどの自動車・運輸関係。駅、道路、学校や施設の清掃などの環境整備業。カタログ整理、ダイレクトメールの配布など事務関係。パソコン業務、製本、梱包などの印刷関連業。図書館やスーパーでの業務など他にもさまざまな業種で活躍しています。
 
 自閉症の方々も多くの方が企業で活躍しています。特にその作業性から現場で高い評価を得る方も多く企業にとってはなくてはならない存在になっている自閉症の方が多いようです。「自閉症の方は戦力になる」と感じている企業も少なくないようです。
 
2. どのようなことが評価をうけているのでしょうか
(1)真面目であること
 最も評価をうけていることは表裏無くしっかりと働くということです。決まった時間に決まった仕事量を自分の計画の中でしっかり行うからです。
(2)作業性が高いこと
 決まった作業に関しては他の方の1.5倍〜2倍程度も働くというかたもいらっしゃるようです。加えて作業の完成度、精度が高いということもいえます。「これくらいでいいだろう」という妥協をしないで真摯に取り組むということから作業性の高さに繋がるといえます。
(3)勤務状況が優秀であること
 就労の現場に於いては、最も求められるものとして毎日仕事に行くということが挙げられます。特にライン作業や、製造業というようなチームでの仕事になる場合は休むということは、他の方に大きく影響してしまいます。このような意味で、毎日決められた時間通りに仕事に行くということは重要なことです。その他にもあるかと思いますが大きく3点を述べてみました。
 
3. 就労上の課題としてあげられるものは
 作業能力の点では作業ペースが一定で他の作業ペースに合わせるということが難しかったりします。作業が丁寧で正確性が高いことは良いことではあるのですが、それも度が過ぎてしまうと、丁寧すぎて求められるスピードに合わせられないということになってしまいます。対人行動の点ではコミュニケーションの問題が挙げられます。それに関しては本人のコミュニケーション能力を理解したうえでの周りの方々の適切な支援が必要になってきます。簡単なことばで具体的に、視覚的に話したりすることなどの工夫が必要です。
 環境の面では騒音や、職場の臭いなどへの対応の課題もあります。耳栓やマスクの使用、環境の構造化なども必要になってきます。
 また、作業内容の変更などが原因で不適切な行動にいたってしまう場合の対応についても課題になります。それに関しては変更について予め具体的に本人に理解できる方法で伝えておくという配慮が必要です。
 
4. 企業(職場)が求めていることや知りたいことはどんなことでしょう。
 求めていることとしては、勿論のこと労働力として、チームの一員としての役割、スキルです。たとえば、決まった時間に決まった場所(持ち場)にいること、報告や連絡ができること。基本的な挨拶ができ身だしなみが整っていること。仕事にたえられる肉体的、精神的な体力と仕事における「素直さ」(指示などを受け入れる)などが本人に求められることとしてあげられます。
 企業が知りたいことはこちらが伝えておくことが必要なことと言い換えることもできます。企業は、自閉症の一般的な特性、行動の奇異さについてというよりも、職場にいる○○さんの職場内で起こるトラブルに対して具体的な理由や、解決方法を知ることを求めています。本人の持つ自閉症の特性から簡潔に説明し、解決方法をより具体的に伝えられるように支援することが支援する側に求められてきます。
 
5. 就労に向けて
(1)家庭の中での役割を持った手伝いなど早い時期からの体験することは大切なことです。学校での職場体験実習や、実際の職場を見学するだけでも就労に向けての意識が高まってくると思われます。できるだけ多くの体験から適性を見極めていくことができると思います。より多くの体験の場を探していくことも必要です。
(2)就労を考えていくにあたっては、本人の「働きたい」という気持ちがまず、何よりも大切です。本人のその気持ちをたいせつにしながら、本人の能力に合った仕事を選択すること、周囲の期待と本人の能力のギャップが大きいと過度なストレスとなり継続した就労が困難になってきます。そのところを見極めるためにも職業センターなど就労支援機関を活用(職業評価を受けるなど)し専門のカウンセラーに相談することが大切です。
(3)地域の情報を知ること
 具体的には自宅から通勤できる範囲内にどのような企業があり、どのような仕事の内容であるかという情報を集めておくことは重要です。また、利用できる、相談できる就労支援機関はどのような機関がある、具体的にどのような支援をしているかということも併せて情報を収集しておくことも必要となってきます。
 
6. 就労支援機関や活用できる事業などについて
・公共職業安定所(ハローワーク)
(1)職業相談・職業紹介 (2)求人情報の提供 (3)雇用保険の給付
 ハローワークでの職業相談。紹介業務は、所定の様式により求職申し込みを行い、求職登録します。求職者が障害者の場合は、求職登録票に障害の状況、技能、希望職種などが記載され、この登録票に基づいて綿密な相談が行われます。―自閉症ライフノートより抜粋―
・地域障害者職業センター
 公共職業安定所(ハローワーク)と協力して、障害を持つ方の職業自立のための相談や職業能力の評価を行っています。
(1)対象:
 障害の種類や障害者手帳の有無に関わらず就職や就労で課題のある方を対象にしています。
(2)検査内容など
 職業適性検査、職業興味検査、作業検査、性格検査など
 所要時間は3時間〜5時間程度かかります。
(3)相談対応内容など
・どんな仕事に向いているかについて
・働く上での注意点や課題について
・障害の状況や希望を踏まえた求職活動の仕方につて
・障害者の就職に関わる各種制度や地域の関係機関の情報について
(4)相談・評価の申し込み
 予約制になるので、まず電話で連絡をする。
 
・発達障害者支援センター
 就労担当スタッフが1名配置されています。求職活動、生活面での相談、就労後の継続支援など地域の支援機関と連携しながら支援を行っています。
 
参考
梅永雄二 自閉症者の就労支援 エンパワメント研究所
上岡一世 自閉症の子どもが職場で自立する生活づくり 明治図書
ひょうご自閉症・発達障害者支援センター 「クローバー」 自閉症らいふNote
 
一般的な障害者就労の流れ(兵庫県の例)


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