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支援の基本的な考え方
・違いを認める
・自閉症スペクトラムの人は物事の感じ方や理解の仕方などに違いがある
・違いをよく理解し、違いを認め尊重する
・お互いに歩み寄る、まずこちらから歩み寄る
・長所や興味を生かす
・強みを生かして、苦手を補う
・得意なことを伸ばす、認める(自信につながる)
・好きなことを生かす
 
自閉症スペクトラムの人の得意と苦手
<得意なこと>
・目で見て理解すること
・具体的ではっきりしたことを理解すること
・経験したこと、目に見えるものを正確に記憶すること
・細かい部分を見ること
・興味のあることに対する集中力
・学習したことをきちんとすること
<苦手なこと>
・言葉を聞いて理解すること
・抽象的であいまいなことを理解すること
・経験していないことや目に見えないものを想像すること
・全体を把握すること
・幅広くいろいろなことに興味を持つこと
・学習したことを他の場面に応用すること
 
自閉症の人に必要な支援
・環境をわかりやすくする
・時間の見通しが持てるようにする
・コミューケーションの受信を支援する
・自発的なコミュニケーションを育てる
・人とのかかわり・社会性の支援
・感覚への配慮
・自立した行動を育てる
 
個別化について
・すべての支援の前提
・自閉症スペクトラムの人には共通した特徴があるが、障害の程度や表れ方もさまざま
・実際に支援を行うときには
1. 基本的な考え方を知る
2. 評価をする(一人ひとりの特性を知る)
3. 個別のプランを考える
 
評価のポイント
―子どものどこを見るのか―
・子どもの興味・関心
・嫌いなことではなく、とにかく好きなことから!
・子どもの強み・弱みを知る
・できないこと、弱いところではなく、できることに目を向ける
・苦手なことを知って、得意なことで補う工夫を
・子どもの持つ自閉症特性を知る
・子どもの行動の背景になっている認知、感覚、注意、運動などの特性を理解する
 
環境をわかりやすくする(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は
・細かいところに注目するが全体を見れない
・物事の相互関係がつかみにくい
・目に見えないことや経験していないことを想像することが難しい
まわりにある情報から、環境の意味を把握することが苦手なので、環境をわかりやすく整える必要がある
 
環境をわかりやすくする(2)
・余計な刺激を(目に見えるもの、耳に入る音など)減らし、必要なものだけにする
・場所と活動を対応させ、場所から何をするのかが分かるようにする
・場所の境界や物の置き場所をはっきりさせる(敷物をしく、印をつける、ラベルをつける)
 
時間の見通しがもてるようにする(1)
・時間の流れは目に見えない
・想像力に障害を持つ自閉症の人は、時間の流れを把握し、見通しを持つことがむずかしい
・先に何が起こるのかわからない、いつ終わるのかわからない不安
・待てなかったり、終われなかったりする
 
時間の見通しがもてるようにする(2)
・流れをできるだけ一定にする
・予定は前もって知らせる
・時間の流れを視覚的に(文字、絵、写真、物)示したスケジュールを使う
・終わりを目に見えるようにはっきりさせる
・カレンダー、時計、キッチンタイマー、砂時計など時間を視覚化した物の利用
 
コミュケーションの理解を助ける(1)
・自閉症の人は
・耳から言葉を聴いて理解するのが苦手
・抽象的なこと・あいまいなことを理解するのは苦手
・感情やその背景にあることを理解するのは苦手
子どもに分かりやすく伝える
 
コミュケーションの理解を助ける(2)
・視覚的に伝える
・絵、写真、物を見せる
・絵や文字を書いて伝える
・具体的に伝える(抽象的なことを具体的に言い換える)
「早く終わりなさい」
→「もう一回したら終わり」「10数えたら終わり」
「もうちょっと待って」
→「〜時まで」「タイマーがなるまで」
「ちゃんと片づけなさい」
→「この箱に入れて」
 
コミューケーションの理解を助ける(3)
・肯定的に伝える
(禁止ではなく、どうすればいいかを伝える)
「ちらかしたらだめ」→「ゴミ箱にすてて」
「うろうろしない」→「いすにすわって」
「机に書いちゃダメ」→「紙に書いて」
 
・穏やかに伝える
・感情の理解はむずかしい。理解しているように見えていても表面的にすぎない。
・きつく叱ることは有効でないばかりでなく、悪影響が残ることも少なくない
 
自発的なコミュニケーションを育てる(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は
・ことばや身ぶりの発達が遅れるため伝える手段が限られる
・ことばはあっても人との間で使うことが難しい
必要なことを人にうまく伝えられない
人に促されないとコミュニケーションできない
自発的に自分の意思を人に伝えられるようにする
 
自発的なコミューケーションを育てる(2)
・コミュニケーションの機会を意図的に作る
・話しことばが上手く使えない人には、ことば以外のコミューケーション手段(絵や写真など)を積極的に使っていく
・ことばが話せる人には、どのような場面でどうことばを使ったらいいかを教える
 
人とのかかわり・社会性への支援(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は
・表情・しぐさ・雰囲気などを感じて、他の人の内的な状態や感情を想像することが苦手。
・対人的なやりとりは同時に多くの情報を処理する必要があり、変化が多く、あいまいな状況で、自閉症スペクトラム障害の人にはとても難しい
・人とのかかわることに関心が少ないこともある
 
人とのかかわり・社会性への支援(2)
・本人がわかること、楽しめることを基本にする
・繰り返しパターンが決まっているやりとり(予測可能で大人からの働きかけを期待できる)をする
・子どもが好きな活動を選ぶ(たとえば、体を使った遊び、料理、工作など)
・少ない人数(まずは1対1)から始める
・ルールや役割がはっきりした活動
・「集団」のリスクを認識する(“人の刺激”のデメリット)
・一般的な価値観を押し付けない
・1人でいることも尊重する
 
感覚刺激への配慮(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は、
・感覚刺激(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など)に対して過敏だったり鈍感だったりする
・感覚刺激が一度にたくさん入りすぎて負担
・特定の感覚刺激に強い苦痛を感じる
 
感覚刺激への配慮(2)
・強い苦痛を感じる感覚刺激はできるかぎり取り除く
・聴覚、触覚・触感、味覚、嗅覚、視覚
・静かで刺激の少ない場所を用意する
・好きな感覚刺激は、リラックスするための活動や遊びに取り入れる
 
興味を生かす(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は、
・自分の興味のあることはとても集中する
・好きなことのためなら納得して努力する
・人からほめられたり認められたりするためにがんばることに意味を見出せない
 
興味を生かす(2)
・興味のあることを課題にする
・好きなことを教材に使う
・ごほうび(お楽しみ)として使う
・趣味や遊びの活動に
 
自立した行動を育てる(1)
・自閉症スペクトラム障害の人は、
・自分が何を期待されているのかがわからない
・見通しが持てない
・やり方がわからない
*ひとりでできない
*人から指示されないと行動できない「指示待ち」と言われる状態になる人もいる。
*常に人に依存していて自信や自己有能感が持てない
 
自立した行動を育てる(2)
・自立して行動することは大人になってからの生活に不可欠
・自分でできることが自信や自己有能感を育てる
*小さい頃から自立を意識した指導(声かけや援助をできるだけ少なくする)
*環境をわかりやすく整理する(構造化、視覚的な手がかりの活用)
*いっぱい指示して苦手なできないことをやらせるよりも、本人がわかる・できることを自分でやりきって達成感を持つことを大切にする
 
III. 自閉症の家族への支援
〜相談をうけることが多いことがらを中心に〜
 
診断にまつわる相談
・診断を受けるまでの保護者の気持ち
・診断を受けることの意味をどう伝え、受診を実現するのか
・診断を受けた後、保護者(家族)をどう支えられるのか


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