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診断までの保護者の気持ち
・“ちょっとおかしいかな?”という気もするけど
・個性が強いだけ?
・自分の子育てが下手なの?
・テレビばっかり見せていたから・・・
・かまってやれなかったから・・・
・まわりのひとの言葉で不安を打ち消す
・「子どもはこんなもんだ」
・「うちの子もこんなだったけどよくなったよ」
・「他にもそんな子はいっぱいいるから気にしないで」
・保健所や保育園で指摘されたけど
・慣れない場所でいつもはできることもできなかっただけ
・家ではふつうだし、何も困っていない
・なぜうちの子だけ問題児扱いされるの?
 
受診を勧めるために
・「欠陥」ではなく「発達の特性」として捉えられるように
・診断を受けること(知ること)にメリットがあるということを伝える
・子どものことを理解してあげられる
・子育てや対応のコツがわかる
・子どもが将来的にも不必要な苦労をしなくてすむよう配慮してあげられる
 
わが子が診断を受けて
―さまざまな反応―
・診断を受けてほっとした
・これまでの「なぜ??」が解決した
・自責の念から開放された
・方法が見つかった
・とまどいはあるが、受け入れなければ・・・
・でもどういうことなのか、どうすればいいのか?
・これからどうなっていくの?
・大きなショックを受ける
・絶望、悲嘆
・否認したい、考えたくない、怒り
・将来に対する大きな不安と焦り
・信じられない、誤診だ
・少し個性が強いだけ、大きくなったら大丈夫
・「そんなところには行くな」
・相談や通所が中断
 
「診断」のときに伝えること
・子どもの発達的特徴(三つ組の特性、AD/HD症状、発達レベルなど)
・診断の根拠
・自閉症スペクトラム障害とは何なのか
・支援(育て方)の基本的な考え方
・自閉症スペクトラム障害の特徴(強みと弱み)
・支援の方法
・将来の見通し(できる範囲で)
・受けられるサービスや書籍・インターネット、親の会、研修会などの情報
 
診断を知ったあと
・症状探し
・あれも症状、これも症状
・わが子のを、「自閉症の診断基準」をとおしてネガティブにしか見れなくなる
・症状をなくしたい
・情報過多
・いろんな情報を集めたり、色んな人からいろいろ聞かされ、整理できない
・どれが大切?どれがわが子に関係あるの?
 
診断を受けとめるために必要なサポート
・継続的な相談や療育の場
・家族の他のメンバーの理解とサポート
・同じ障害を持つ子どもの親との対話
・子どもにかかわる他の人からのサポート(教師や保育士、地域のサービスなど)
・適切な情報源(書籍、インターネット、親の会など)
 
将来的な見通し(1)
・入所施設で多くの介助を受けながら生活している人、自立して生活して仕事もしている人など、人によりさまざま
・自閉症の程度や知的レベルと、社会的自立度の相関はある程度見られる
・しかしながら、知能が高いことや、自閉症の症状が目立たないことが、必ずしも社会適応の良さにはつながらない
・知能が高い人や、一見自閉症に見えない人は、障害がわかりにくいゆえに周囲の無理解から来る二次的問題をおこしやすい
 
将来的な見通し(2)
・将来的な転帰には、周囲の理解や支援的なかかわりが大きな影響を与える
・知能レベルを上げることや、自閉症症状を見えなくすることが、支援の目標にはならない。その人にとって必要なスキルを教え、その人の過ごしやすい環境を整えることが支援となる
・障害理解が進み、より適切な支援アプローチがされることにより、今よりも良い将来像が期待できる
 
自閉症の人の行動上の問題(1)
・自閉症の人には行動上の問題が多い
・かんしゃく・パニック
・自傷
・攻撃・他傷
・破壊
・固執・こだわり・反複行動
・食行動異常
・睡眠異常
・多動 など
 
自閉症の人の行動上の問題(2)
―なぜ多いのか?―
・自閉症の人と一般の人には、「違い」がある
・物の感じ方(感覚)、物の理解の仕方(認知)、行動の仕方
・自閉症の人がどのように感じ、どのように物ごとをとらえているのか理解されないで、一般的なやり方に合わさせられる
 
自閉症の人の行動上の問題(3)
―対応についての考え方―
・「問題行動を起こしたときにどうしたらいいのか」よりも
・「なぜ問題行動を起こすのか」「どうしたら問題行動をおこさなくてすむのか」を考えることが重要
・行動には意味や理由があり、人によってその意味や理由は違う
・一般的な用語で片付けない
「思春期」「反抗期」「わがまま」「甘え」・・・
 
氷山モデル
・水面上に見えている行動の下には、水面下に潜む自閉症の特性があり、こちらの方が本質的で重要である。水面上に見えているものよりも、水面下に潜む部分に焦点を当て理解しなければならない。
(ゲーリー・メジボフ)
 
 
 
自閉症の人の「問題行動」の理由として多いもの(Wingより改変)
・ふだんの日課や反復的行動を妨げられた
・なじみのない出来事や場面で混乱した
・説明、指示、励ましなどが理解できない
・人に接する場合のルールを知らない
・人の気持ちや考えが想像できにくい
・要求や感情を言葉や身ぶりで伝えることができない
・音、光、触られること、人が近づきすぎることなどに過敏
・無害な物や場面でも特別な恐怖心を抱いている
・難しすぎる課題や嫌いな課題、時間的に長過ぎる課題を押しつけられた
・終わりがわからない
・過去の不愉快な体験がフラッシュバックした
・まれだが、不快感・痛み・病気のため
 
行動上の問題への対応
・自閉症特性を考慮しないで、一般的なやり方で対応してもうまくいかない
・叱る、謝らせる、など
・自閉症特性を考えた対応が必要
・構造化
・コミュニケーションスキルの習得
・感覚刺激の調整
・活動内容の調整(興味、発達レベル、集中時間などに合わせる)
・余暇活動の開発
・リラックスできる活動・時間 etc.
・対応の方法は一人ひとり違う
 
薬について(1)
・薬物使用の目的
・自閉症そのものの改善をめざすもの
・次々色々と出てくるが、効果が実証されたものはない
・自閉症に伴う行動上の問題や精神症状の改善を目的とするもの
・著しい興奮
・睡眠障害
・抑うつ、不安、強迫症状、などの精神症状 など
 
薬について(2)
・薬物治療を行うときの留意点
・使用目的、副作用について十分に説明
・薬物の効果・副作用には個人差が大きい
・一定のガイドラインに基づいて薬物の種類や量の決定を行うが、使用後のモニタリングと調整が重要
・本人や保護者とのコミュニケーションが重要
・学校や施設などからの情報もできるだけ得る
・薬物だけで治療するのではないことを忘れずに
 
おわりに
・まわりの人が障害を理解することがとても大切だが、自閉症はとてもわかりにくい障害
・私たちの理解はまだまだ不足している。理解を広め、理解を深めるための努力を続ける必要がある
・自閉症の人が少しでも生きやすくなることをめざして・・・


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