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津波とは?<津波から命を守るために>
気象庁 総務部総務課 文書・情報管理官 板東 恭子(ばんどう きょうこ)
地震火山部地震津波監視課 上野 寛(うえの ひろし)
 
日本近海で発生している津波のメカニズム
 地球上で発生する津波のほとんどは、海底で発生する地震によって起こります。日本近海もその例外ではなく、太平洋沿岸または日本海沿岸の海底で地震が発生することによって、津波が発生しています。
 日本およびその周辺には太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートが存在し、その境界付近では海溝型の巨大地震がたびたび発生しています。その模式図を【図1】に示します。
 海のプレートが陸のプレートに沈みこんでいる【図1】の(1)が、この際に陸のプレートが海のプレートに引きずり込まれ、ひずみがたまります(【図1】の(2))。このひずみが限界に達したときに、陸のプレートが跳ね上がることによって巨大地震が発生します(【図1】の(3))。この時に上下左右に地殻変動が発生し、その上にある海面を変化させ、津波が発生します。この地殻変動は、同じ地震の規模(以下、マグニチュード)であっても震源が浅いほど、またマグニチュードが大きいほど、大きくなります。そのため津波は震源の深さ、マグニチュードに大きく左右されます。
 このような海溝型巨大地震の他にも海底地滑り、火山爆発、隕石衝突なども津波の原因となります。
 
【図1】海溝型巨大地震によって発生する津波の模式図
 
津波予報と津波予報の発表と通知
(1)津波予報
 気象庁では津波災害軽減のために、地震が発生してから約3分を目標に津波予報を発表しています。まず、津波の高さを海岸各地で細かく予測できるように、数値シミュレーションにより、あらかじめ計算した結果を蓄積しておきます。
 このデータを基に、予想される津波の高さによって、津波警報(大津波、津波)、津波注意報(津波注意)の3つに分け【表1】、全国の沿岸を66に分けた津波予報区【図2】ごとに発表しています。また、各地の満潮時刻、津波の到達予想時刻も津波予報に続いて発表します。実際に津波を観測した場合には、津波の到着時刻、高さを随時発表します。
 
【表1】津波予報の種類
予報の種類 発表される津波の高さ
津波警報 大津波 3m、4m、6m、8m、10m以上
津波 1m、2m
津波注意報 津波注意 0.5m
 
【図2】津波予報区の例
津波予報区の全国版は気象庁HPからご覧頂けます(http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/fig/tsunami_yohoku.pdf)。
 
(2)津波予報の伝達
 気象庁では、気象業務法に基づき、本庁および各管区・沖縄気象台で津波予報を発表し、各地方気象台などを通して、津波予報を関係機関に通知(伝達)しています【図3】。通常は地上の電話回線を用いて伝達しますが、通信障害時には、衛星を経由して伝達します。
 伝達先には、内閣官房、海上保安庁や警察庁などの関係省庁、NHKや民放などの報道機関やNTT、地方自治体などがあります。国民は、主に報道機関や各市町村などを通して、津波予報を知ることになります。気象庁のホームページ(以下、HP)
http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jp/wave_j/>でも確認することができます。
 船舶関係者には各地方公共団体から無線などで伝達されています。また、海上保安庁からNAVTEX注)として伝達されます。沿岸50km以内の海域の警報については、海上保安庁のHPを介して携帯電話でも利用できます。詳細は、海上保安庁のHP
http://www.kaiho.mlit.go.jp/>をご覧ください。
)=主に沿岸から約300海里までの航行中の船舶に対する航行警報等の海上安全情報
津波防災広報用ビデオの制作
(1)制作の目的
 平成15年に発生した十勝沖地震や平成14年に発生した沖縄近海の地震では、津波警報や津波注意報が発表されているにもかかわらず、津波の様子を見るために海岸へ近づく人がいるなどの事例がみられました。
 このため、気象庁では、津波の恐ろしさを十分に理解していただくとともに、津波の事例や発生メカニズムを分かりやすく説明し、迅速な避難行動を促すための広報用ビデオ「津波から命を守るために!」(CD-ROM)を平成16年6月に制作しました。
(2)ビデオの概要
1)オープニング:過去の津波被害の映像や写真
2)津波被害国日本:日本における過去の津波被害の映像と説明(日本海中部地震、北海道南西沖地震など)
 
【図3】津波予報の伝達経路図
 
3)津波体験:大津波のCG映像による津波体験や実験装置を用いた津波の様子、50cm程度の津波での被害写真
4)津波の説明:津波の発生のしくみと特徴についての説明
5)津波に対する注意:津波から命を守るためにどうすればいいかの説明
6)エンディング:津波に対する注意の再確認
 ポイントとしては、小学生でも集中力が続くと思われる17分という時間にしたこと、実際の津波の速度を基本に津波が迫ってくる映像を真正面から見た場合のCG映像を通して津波のこわさを体感してもらうこと、避難することの大切さを繰り返したこと、などがあげられます。
(3)ビデオ制作にあたって
 ビデオの制作は、「CGや実写や実験場面を入れ込むようにして、体験に訴えることのできるもの」というコンセプトの確認から開始しました。
 今回のビデオは、「ツナミ博士」と女性アシスタントの「さちよクン」の2人の会話により話が進んでいく構成です。2人の会話の中に、津波がどんなに恐ろしいもので、そこからどう命を守ればよいのかについての情報を埋めこんでいきます。その過程では、「表現上不正確なもの」や「誤解を受けそうなもの」、「流れが不自然なもの」、「防災上の観点から他の表現を考えたほうがよいもの」などについて考慮しながら作業を進めていきました。
 子供にも理解できるような分かりやすい表現で、かつ飽きずに見てもらえるもの、書いてしまえば一言で終わるのですが、実際にはなかなか気を使う、骨の折れる作業でした。
(4)ビデオの配布
 こうして完成したビデオは、CD-ROMの形で、気象庁の各地方気象台などを通じ、全都道府県、全市町村に配布しました。また、(財)気象業務支援センターから市販(税込み500円)されています。気象庁のHPでもダイジェスト版を掲載しているので、ぜひ一度ご覧ください。
読者の皆さんへ
 最近の津波予報技術の向上により、昔より早くかつ正確に津波予報を発表することが可能になりましたが、震源が陸に近い場合は、津波予報が発表される前に津波が来襲する場合があります。海岸で地震を感じたときは、ただちに海岸から離れるようにしてください。また、地震を感じなくても、津波予報が発表されたら、ただちに海岸から離れ、急いで高台などの安全な場所に避難してください。
 津波から自分の命を守るためには、各自の心がけが一番重要となります。
 
気象庁が国民への津波の関心を深め、迅速な避難を促すために作成したCD-ROMのジャケット


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