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おわりに
 バラスト水問題は、1992年のリオ地球サミット以来、環境に関する世界共通の基本方針となった「持続可能な開発(Sustainable Development)」(開発と保全は対立的なものとして取扱うべきものではなく、環境と調和させつつ総合的に管理すべきものであるという考え方)という理念をいかに具体化させることができるかが問われている問題であるともいえるのではないかと思われます。
 本稿においては、本年2月、国際海事機関(IMO)においてバラスト水条約の採択が採択された機会をとらえて、バラスト水問題の現状と課題をとりまとめてみたところです。本稿が、関係の各方面の方々が、この問題への対応を検討される際の参考となり、この問題への対応が適切になされていく上での一助となれば幸いと考える次第です。
 
図5 条約実施のためのガイドライン作成スケジュール
ガイドライン名 関連規定の規定振り スケジュール
(1)「沈殿物の受入施設のための指針」 締約国は、(1)の指針を考慮した沈殿物受入施設を確保しなければならない(条約第5条)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(含むBWWG)で審議
2005.3 旗国小委員会で審議
2005.7 MEPC53(含むBWWG)で最終化・採択
(2)「PSC のためのバラスト水のサンプリングのための指針」 船舶は、(2)の指針に従ったバラスト水のサンプリングによる臨検に従うものとする(条約第9条)
2004.4 独がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(含むBWWG)で審議
2005.7 MEPC53(含むBWWG)で審議
2006.3 MEPC54(含むBWWG)で最終化・採択
(3)「バラスト水管理同等要件のための指針」 全長50m未満で最大バラスト水容積8m3のプレジャーボート、捜索救助用の小型艇の条約と同等の応諾は、(3)の指針を考慮して主管庁が決定する(条約附属書A-5規則)
2004.4 国際ヨット協会がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52( 含むBWWGでドラフト案を審議・最終化
2005.7 MEPC53で採択
(4)「バラスト水管理計画指針」 バラスト水管理計画は、(4)の指針を考慮して主管庁に承認されなければならない(条約附属書B-1規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(含むBWWG)で審議
2005.7 MEPC53(含むBWWG)で最終化・採択
(5)「バラスト水受入施設のための指針」 (5)の指針を考慮して設計された受入施設にバラスト水を排出する船舶にはバラスト水管理の規則は適用されない(条約附属書B-3規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(含むBWWG)で審議
2005.3 旗国小委員会で審議
2005.7 MEPC53(含むBWWG)で最終化・採択
(6)「バラスト水交換(作業)のための指針」 船舶は、(6)の指針を考慮してバラスト水交換を実施することができる(条約附属書B-4規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(BWWG)で審議
2005.7 MEPC53で採択
(7)「危険性評価のための指針」 締約国は、管轄下区域内で(7)の指針に基づきバラスト水管理の除外を許可することができる(条約附属書A-4規則)
2004.4 ノルウェーがドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(BWWGを含む)で審議
2005.7 MEPC53で採択
(8)「バラスト水管理システムの承認のための指針」 バラスト水管理システムは、(8)の指針を考慮して主管庁に認証されなければならない(条約附属書D-3規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(BWWG) を含む。)で原則承認
2005.3 設計設備小委員会で審議
2005.7 MEPC53で採択
(9)「活性物質の承認のための手続」 活性物又は活性物を含む調合剤を用いるバラスト水管理システムは、(9)の手続に基づき、機関により承認されなければならない(条約附属書D-3規則)
2004.4 蘭がドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52(BWWG)で原則承認
2005.3 設計設備小委員会で審議
2005.7 MEPC53で採択
(10)「プロトタイプバラスト水処理技術の手続」 (10)の手続を考慮した主管庁承認プログラムに参加する船舶については、排出基準の適用を5年間免除することができる(条約附属書D-4規則)
2004.4 ノルウェーがドラフト案作成開始
2005.3 設計設備小委員会で審議
2005.7 MEPC53で採択
(11)「バラスト水交換設計構造基準のための指針」 船舶は、(11)の指針を考慮して沈殿物除去等を助長するように設計・建造される(条約附属書B-5規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 BWWGでドラフト案審議
2005.3 設計設備小委員会で審議
2005.7 BWWGで最終化
2005.7 MEPC52で採択
(12)「船舶上の沈殿物管理のための指針」 船舶は、(12)の指針を考慮して沈殿物除去等を助長するように設計・建造される(条約附属書B-5規則)
2004.4 英がドラフト案作成開始
2004.10 BWWGでドラフト案審議
2005.3 旗国小委員会で審議
2005.7 MEPC53(含むBWWG)で最終化・採択
(13)「緊急事態を含む追加的方策のための指針」 追加方策の導入を意図する国は(13)の指針を考慮しなければならない(条約附属書C-1、C-2規則)
2004.4 ノルウェーがドラフト案作成開始
2004.10 BWWGでドラフト案審議
2005.3 旗国小委員会で審議
2005.7 MEPCで採択
(14)「外交会議決議2及び4を考慮したバラスト水管理条約のD-5規則に位置付けられるバラスト水管理技術の見直し」 排出基準は、(14)を考慮して見直しを実施しなければならない(条約附属書D-5規則)
2004.4 MEPC51でドラフト案作成開始
2004.10 MEPC52で審議
2005.7 MEPC53で採択
注)・MEPCとは、海洋環境保護委員会
・BWWGとは、バラスト水ワーキンググループ(MEPCの直前に開催されるIMOの会合)
・旗国小委員会、設計設備小委員会はMEPCからの付託を受けて検討を行うIMOの組織


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