日本財団 図書館


(2)試験結果
 
1)水生生物に対する処理効果等の要約
 表II.5.1-4には50μm以上の生物、表II.5.1-5には50μm未満10μm以上の生物、表II.5.1-6にはバクテリアに対する試験結果を示した。
 この試験における目標は、STEP基準達成である。その内容は50μm以上の生物を98%以上除去あるいは殺滅し、50μm未満の生物及びバクテリアに関して処理装置の性能報告(生物学的効果の立証)となっている。
 このSTEP基準に対して、50μm以上の生物に関しては、スリット幅0.1及び0.5mmでは処理3日後以降に基準を達成した。0.3mmでは処理7日後からの基準を達成した。また、未処理のまま貯蔵したサンプルも7日間後に処理すると基準を達成する。
 つまり、スリット部流速を平成15年度に実船に搭載したプロトタイプ実機の30m/secから40m/secに速くしたことで、全てのスリット幅で、漲水時に処理した場合で7日後、また未処理で漲水した場合でも7日間貯蔵した後で排水時に処理すると、STEP基準を達成するまでの性能に向上したことを確認した。
 
表II.5.1-4 スペシャルパイプ基本性能向上システム試験における50μm以上の水生生物の殺滅率とSTEPとの比較
サイズ区分 50μm以上(生物数/m3 殺滅率(%)
スリット幅等 未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm 未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm
未処理原水 3,053,133 307,767 878,567 3,526,367 - - - -
処理直後 - 60,567 59,733 399,633 - 80.3 93.2 88.7
処理1日後 2,067,633 7,033 56,733 88,100 32.3 97.7 93.5 97.5
処理3日後 112,867 3,800 89,167 38,933 96.3 98.8 89.9 98.9
処理7日後 71,467 6,067 14,833 30,700 97.7 98.0 98.3 99.1
処理7日後の
処理
3,300*2 3,333 9,433 733 99.9 98.9 98.9 100.0
未処理*1は未処理のサンプルを1、3及び7日間貯蔵、そのうち*2は7日間貯蔵したサンプルを処理
灰色でマークされたサンプルが未処理原水の生物量からの減少・殺滅率でSTEP基準(98%以上の効果)を達成
数値は、3回試験の平均値
 
 50μm未満の生物に対しては、もちろん処理した方が殺滅・減少率が高くなる。ただし、未処理の海水を貯蔵した場合でも7日後には、原水に比べて98.9%減耗していた。
 
表II.5.1-5 スペシャルパイプ基本性能向上システム試験における50μm未満の水生生物の殺滅率
サイズ区分 50μm未満10μm以上(生物数/ 殺滅率(%)
スリット幅 未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm 未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm
未処理原水 12.763 95.118 3726.796 31.886 - - - -
処理直後 - 12.696 1065.644 22.693 - 86.7 71.4 28.8
処理1日後 6.711 12.374 499.265 15.256 47.4 87.0 86.6 52.2
処理3日後 1.405 3.004 428.016 3.251 89.0 96.8 88.5 89.8
処理7日後 0.142 0.706 3.955 0.103 98.9 99.3 99.9 99.7
処理7日後の処理 0.180*2 0.052 0.948 0.112 98.6 99.9 100.0 99.6
未処理*1は未処理のサンプルを1、3及び7日間貯蔵、そのうち*2は7日間貯蔵したサンプルを処理
灰色でマークされたサンプルが未処理原水の生物量からの減少・殺滅率で98%以上
数値は、3試験の平均値
 
 バクテリアに関しては、プロトタイプ実機と同様に処理による明瞭な効果は認められなかった。大腸菌群は経日とともに減少する傾向がみられるものの、この減少は、元来陸域起源の大腸菌群は海水中では自然に減耗するためと考えられる。従属栄養細菌は処理1日後及び3日後に増加しており、これは殺滅されたプランクトンなどの死骸を栄養源として再増殖したためと考えられる。
 
表II.5.1-6 スペシャルパイプ基本性能向上システム試験におけるバクテリアの変化
スリット幅等 大腸菌群(CFU/100 従属栄養細菌(CFU/100
未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm 未処理*1 0.1mm 0.3mm 0.5mm
未処理原水 1,533 7,267 30,600 5,467 825,333 40,239,300 1,014,000 526,667
処理直後 - 4,133 36,400 3,933 - 1,766,333 1,102,667 826,667
処理1日後 3,000 67 49,400 733 1,816,667 52,272,850 16,081,000 3,316,667
処理3日後 2,000 883 2,533 ND 1,326,389 11,777,778 112,392,417 1,308,333
処理7日後 ND ND ND 67 1,914,444 1,553,333 2,115,000 766,000
処理7日後の処理 ND*2 400 ND 267 2,753,333 7,477,778 1,415,833 794,167
未処理*1は未処理のサンプルを1、3及び7日間貯蔵、そのうち*2は7日間貯蔵したサンプルを処理
数値は3試験の平均値
 
 以上の試験結果では、スリット幅0.1mm、0.3mm、0.5mmで水生生物に対する効果には大きな差は見られなかったが、処理直後の殺滅率だけに着目すると0.5mmの効果は他のスリット幅よりも小さかった。一方、各スリット幅のエネルギー効率を検討すると、表II.5.1-7に示した各試験ケース時の圧損係数は、0.1mmが最も大きく、0.3と0.5mmには大きな差がなかった。これら結果を総合すると、スリット部流速40m/secの場合には、スリット幅0.3mmが処理効果及びエネルギー効率の両面で最適であると考えられた。
 
表II.5.1-7 スペシャルパイプ基本性能向上システム試験における圧損係数(スリット部流速40m/sec)
0.1mm 0.3mm 0.5mm
圧損係数(処理直後時) 1.453 1.184 1.162
  〃 (処理7日後の処理時) 1.517 1.126 1.098
圧損係数 = 圧力損失/1/2 × ρ × v2
ρ:海水の密度(g/cm3)1.03 g/cm3、v:流速(m/s)
数値は3試験の平均値


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION