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a. 水質メーターによる測定方法(水温、塩分、pH、溶存酸素量、濁度、電気伝導度、密度)
 表II.5.1-3には、水質メーターで測定する項目の測定原理等を示した。
 測定は、サンプル採水後、サンプル水にセンサーを挿入し表示値を読みとった。
 吸光度の測定は、各試験水を吸光光度計(Thermo Electron製、Genesys10UV、光源キセノンフラッシュ、波長範囲190〜1100nm、精度±1.0nm)を用いて、各波長(254、480、630、645、663、665及び750nm)の紫外線(以下UV)を試験水に照射し行った。波長254nmのUV吸光度は、日本国内で湖沼や海洋を対象に有機物量の指標項目として広く分析されている酸性法の化学的酸素要求量(以下CODMn)と良好な相関関係(R≧0.98)のあることが知られている。その他の波長は、海洋調査などで生物の色素を指標する際に測定されるものを参考とした。
 測定方法は、蒸留水でブランク測定を行いゼロ校正し、各サンプルを同様に測定し値を読みとった。
 
表II.5.1-3 水質メーターの測定原理等
項目 単位 測定原理
水温
(Water Temp)
温度の変化に従い抵抗値が大きく変化する熱に敏感なサーミスタ(Thermistor)と呼ばれる抵抗体(Thermally Sensitive Resistor)の性質を利用し測定する。
測定範囲:0〜55℃、分解能:0.01℃
塩分(Salinity) PSU ある水温における電気伝導率と塩分濃度の間には一定の関係があり、電気伝導率と水温を測定し演算することで相当する塩分濃度を求める。
測定範囲:0〜40PSU、分解能:0.1 PSU
水素イオン濃度(pH) 試水中に存在する水素イオン(H+)濃度をガラス電極により測定する。ガラス電極法とはガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、この2つの電極の間に生じた電圧(電位差)により試水のpHを測定する。
測定範囲:0〜14、分解能:0.01
溶存酸素量
(Dissolved Oxygen)
mg/ 酸素透過性隔膜を通過してきた酸素により、酸素透過性隔膜と密着した銀では還元反応、鉛では酸化反応が生じ、2者間の回路を酸素量に応じ流れた電流を利用し測定する。
測定範囲:0〜19.99mg/、分解能:0.01 mg/
濁度(Turbidity) NTU 試水中にある濁度成分により散乱した光と透過した光の比率に基づいて測定する。
測定範囲:0〜800NTU、分解能:0.1NTU
電気伝導率
(Conductivity)
S/m 2電極間を流れる電流の流れ易さを利用して測定する。
測定範囲:0〜9.99S/m、分解能:フルスケールの0.1%
密度(Density) σt 海水の密度σは1.000〜1.031の間にあり、便宜上1を減し1000倍した値をσとして表す。水温と電気伝導率の換算により測定する。
測定範囲:0〜50σt、分解能:0.1σt
 
b. 水生生物の分析方法等
◇ 50μm以上及び50μm未満10μm以上の水生生物(動植物プランクトン)
 50μm以上及び50μm未満10μm以上の水生生物の分析方法は、20Lの海水サンプルを50μm以上の水生生物はオープニング50μmのメッシュで濃縮し、捕集物をサンプルとした。また、50μm未満10μm未満の水生生物はオープニング50μmのメッシュ通過水をオープニング10μmのメッシュで濃縮し、捕集物をサンプルとした。
 各サンプルは、採水後速やかに上記濃縮作業を行い、50μm以上の水生生物は原海水量として最低10L、50μm未満10μm以上の水生生物は最低1Lを顕微鏡下で分析(同定・計数)した。分析に際する生死判定は、写真II.5.1-1に示す基準で行い、最終的に生きた水生生物の濃度を用いて殺滅率を算出した。
 なお、採水から分析まで、4時間以内で終了するようにした。
 
写真II.5.1-1 水生生物の生死判定基準
 
◇ 大腸菌群
 写真II.5.1-2には、バクテリアの培養までの作業手順を掲載した。
 作業手順は、滅菌100容器に採水後、あらかじめ作成しておいた平板寒天培地(X-GAL)に塗抹し、37℃で培養後形成されたコロニーを計数した。
 
写真II.5.1-2 バクテリアの培養までの作業状況
 
 図II.5.1-1には、大腸菌と大腸菌群の関係を示した。
 大腸菌群の代表格であるE.coliは、人や動物の糞便中に多数存在するが、いったん外界に排出されると比較的早く死滅するため自然界における分布は非常に少ない。しかし、E.coli は死滅が速いためE.coliが陰性であるからといって糞便汚染を否定することはできない。これに対してE.coliを包含する大腸菌群に属するCitrobacter、Enterobacter及びKlebsiellaなどは糞便中にも存在するが、人の生活と無関係である土壌や植物、貝類などにも広く分布している。したがって、E.coliを包含する大腸菌群を対象とすることで、安全性を上乗せした判定が可能と判断できる。
 
図II.5.1-1 大腸菌E.coli(I型)と大腸菌群との関係
 
◇ 従属栄養細菌
 滅菌100容器に採水後、あらかじめ作成しておいた平板寒天培地(ZoBell 2216E: Marine agar)に塗抹し、水温±10℃の範囲となるよう調整した室温にて培養後、形成されたコロニーを計数した。


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