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棚田とっこ積みフェスティバル in 西有田
1 西有田町の概要
(1)地域の概要
 西有田町は、佐賀県の西部に位置し、西になだらかな国見連山が南北に連なり、稜線を境にして長崎県世知原町、佐世保市に接している。
 東は名水百選、水源の森百選に指定された竜門の清水が流れる竜門峡など、山紫水明の自然が今なお残っている。
 また、柿右衛門様式や古伊万里など磁器の生産に関係の深い伊万里市と有田町の間に位置し、人口はおよそ1万人の農業とやきものが中心産業の町である。
(有田町ホームページより)
(2)有田町へのアクセス
 東京から約1,200kmの距離がある。
 空路で、東京から、博多空港、佐賀空港へ約90分。それぞれの空港からバス、特急を使い約80分である。
 
2 棚田とっこ積みフェスティバル
(1)概要
 平成2年から11年までの町のイベント「田植唄アジアフェスティバル」の流れを汲み、「稲作文化」に着目して開催する秋の収穫感謝祭。
 ステージ催事や市が立ち並び、10月の最終日曜日に勤労者体育センター周辺で開催。
 特設ステージでは町民芸能祭や稲作文化を共有する民俗芸能等を披露。
 
(2)祭りが行われる場所
 西有田町民体育センター野外特設ステージで行われる。
 このほか、町内24集落にて、「とっこ積み」や稲わらアートが町内をにぎわかしている。
 
3 視察委員による感想
 西有田町には鉄道の駅がない。駅はまちの顔と言われる。駅を降りるとそのまちの様子が見える。漁業のまち、工場の町、商店街が広がったまち、農地が広がるまち、それぞれに生活と暮らしを特徴づける。駅に特徴がないことも多い。駅前だけがどこかよそよそしく、まちと離れているのでは、特徴とならない。西有田町に鉄道の駅がないことが、かえってまちの特色となっている面もある。
 西有田町は、人が元気である。とっこ積みフェスティバルも、もとは職員の提案で始まった。そして、職員が各国に出かけていって、芸能を連れてくる。実に7カ国からの参加となった。ただ芸能を演じるだけではない。西有田町の各集落ごとにホームステイする。担当した国の言葉はもとより、食べ物、習慣までもみんなで勉強する。国際化は、それぞれの国や民族によって、考え方や価値観が違うことを知るところから始まる。芸能は、まさにその違いの象徴である。
 フェスティバルのもとは、田植えである。日本各地だけでなく、東アジア各地にも広く広がる。田植えは、田を耕すことである。米を作ることは、田づくりから始まる。田を起こし、水を張る。自然を知ることによって、初めて米ができる。棚田は、その象徴である。自然と闘うのではなく、自然を最大限に自分に引き寄せることによって、棚田は存続できる。その棚田にも耕作していない田んぼがみられる。伝統は維持できるのか、多少の不安を覚える。
 財源の面では、当初は助成金なども集めていた。最近では、そうした支援が少なくなってきた。しかし、このフェスティバルだけは、集落の参加で続いている。かつてのホームステイと同様に、集落ごとのテントが会場に隣接してもうけられている。多くの人が集まって、飲食や話しに打ち興じている。家や集落に元気がある。
 外国から多数呼ぶということはなくなっても、この地域の伝統芸能祭りとしてのフェスティバルは残って欲しい。
(三好委員)
 
 1997年12月に文化庁まちづくり事業の協力者として西有田町にいったときには「田植唄アジアフェスティバル」の非常に優れたイベントに感激した。その特徴は、
(1)コンセプト
 稲作文化はアジアと手を結んでこそ守ることができる。
(2)運営
 業者を一切使わず、町職員の創意と涙ぐましい程の努力で招聘事務などをこなしていたこと。
 
(3)町民の対応
 アジア6ケ国の人々を、すべてホームステイで歓迎し、各地区の人々の工夫で歓迎行事を行い、文字通りのすばらしい草根交流が行われていた。これはその後も続いている。
 
<棚田とっこ積みフェスティバルヘの変化>
 平成2年からさまざまな団体の補助を受け、平成9年(1997)からは文化庁の文化まちづくりの補助金も受けていたが、それらが次第に受けられなくなって町自体のイベントは縮小せざるを得なくなって、棚田とっこ積みフェスティバルに形を変えた。
 最初の印象としては、普通の町の文化祭になり果てたのかと思ったが、韓国の芸能団も招かれており、各集落ごとのテントでの交流も、いいムードで行われており、6月に行われた全国田植唄コンクールの優勝者なども参加して、アジアフェスティバルで養われた生き生きとした町民の空気は、生きているのを感じた。
 
<町当局の姿勢>
 文字通りガラス張りの庁舎と町議会議場に現れているように、町役場の姿勢が開放的でまさに町民のための行政の姿勢に徹していると感じられて、一つの行政の模範的な例という印象を受けた。


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