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区分 イタリア
首長
・選任方法
・権限(議案提出権・予算提出権・規則制定権・議会の解散権
【憲法第121条】 州代表の権限
・州評議会は、州の執行機関である。
・評議会議長=州代表は、州を代表し、州の法律および規則を公布し、中央政府の訓令にしたがい、国により州に委任された行政機能を指揮する。
【憲法第122条】 州代表の選出
・州憲章で特別な指定がなされない限り、州の有権者が州代表を直接選挙する。
【憲法第126条】 州代表の任期、不信任、辞任
・州議会が、5分の1以上の議員の署名により州知事不信任案を提出し、過半数によりそれを承認した場合、州知事は解任され、州議会および州評議会は解散される。(直接選挙で選ばれた州知事のみに適用され、各州の憲章で別の定めをしている場合には、適用されない。)
【地方自治法典第46条】 コムーネ首長・県代表の選出
【地方自治法典第50条】 コムーネ首長・県代表の権限
・コムーネおよび県の責任者・代表者
・コムーネおよび県の評議会および議会(自らが議長も務める場合)の招集、その議長
・コムーネおよび県に委任された国および州の事務の執行
・法律、憲章および条例により付与されたその他の権限
・危機管理
・コムーネおよび県の議会の議決した方針に基づき、公共機関、関連団体等(地方自治体の出資法人)におけるコムーネおよび県の代表者の任命・罷免
・コムーネおよび県の憲章および条例に従って行う、各部局等の責任者の任命等
【地方自治法典第51条】 コムーネ首長・県代表の任期、多選禁止
・コムーネ首長および県代表の任期は5年。
・任期を2度継続して満了したコムーネ首長および県代表は、3度目における被選挙資格を喪失する。
・2度の任期のうちどちらかが、自発的辞任以外の理由によるもので、かつ2年6ヶ月を超えない期間であった場合、連続3度の就任可能である。
*小規模コムーネについては連続3選が認められている。
【地方自治法典第52条】 コムーネ首長・県代表の不信任決議
・コムーネ首長および県代表は、議会において不信任動議が提出され、採択された場合、その任務を停止する。
【地方自治法典第53条】 コムーネ首長・県代表の辞職・解任・免職・死去など
・コムーネ首長および県代表の辞職、業務遂行不能、死亡等の場合、評議会は失効し、議会は解散される。新しいコムーネ首長および県代表の選出、議会の選出までは、コムーネ副首長および県副代表によって、それぞれの首長の機能が遂行される。
【地方自治法典第54条】 国からコムーネ首長への機関委任事務
【地方自治法典第71・72条】 コムーネ首長・議会の選挙(人口によって異なる)
【地方自治法典第74条】 県代表の選挙
 コムーネ・県についての選挙の手続きの詳細は、93年81号法に定められ、2000年に地方自治統一法典に吸収された。
評議会
・権限
・任期・職務
 コムーネおよび県の評議会は、法律や憲章によって特定の機関が明確に規定されている場合を除き、コムーネおよび県の行政の全ての分野において独立した権限を有する県の執行機関である。
 コムーネおよび県の評議会は、県代表およびコムーネ首長、それぞれの評議員からなり、県代表およびコムーネ首長によって運営される。
≪コムーネ評議員数の上限(地方自治法典第47条)≫
コムーネの人口 評議員数の上限
       〜  10,000人以下 4人
  10,000人超〜 100,000人以下 6人
 100,000人超〜 250,000人以下
 100,000人以下の県庁所在地
10人
 250,000人超〜 500,000人以下 12人
 500,000人超〜1,000,000人以下 14人
1,000,000人超〜 16人
≪県評議員数の上限(地方自治法典第47条)≫
県の人口 評議員数の上限
       〜 300,000人以下 6人
 300,000人超〜 700,000人以下 8人
 700,000人超〜1,400,000人以下 10人
1,400,000人超〜 12人
・評議会の主な権限(地方自治法典第48条ほか)
(1)議会の定めた行政の一般方針を県代表およびコムーネ首長とともに実施する。
(2)年に一度、議会に対して活動を報告する。
(3)議会に対して予算案等の提案を行う。
(4)議会の議決した基本方針に基づいて貸付契約を締結する。
(5)議会の定める一般的基準に基づいて、行政組織および事務内容に関する規則を定める。
・評議員の任期、職務
(1)評議員は、県代表およびコムーネ首長の任期終了もしくは辞職等とともにその職を終えるため、結果的に県代表およびコムーネ首長と同じく5年の任期を有することとなる(地方自治法典第51条)
(2)評議員は県行政およびコムーネ行政における事務事業の管理について、合議を通じて県代表およびコムーネ首長とともに実施する(地方自治法典第48条)
主要な補助機関(副知事・出納長・その他の主要な公務員)
・選任方法
・権限
 州および県の副代表(副知事にあたる)。副市長(助役にあたる)は政治職であり、首長および地方議会の選挙の際、通常は、議会の首長会派(多数会派)の中から選出(形式的には首長の任命)される評議会メンバーの中から選ばれる。評議会を構成する評議員には非議員の任命も可能であるため、非議員が副代表、副市長になる可能性もあるが、実際にはきわめて稀。なお、評議員に選出された議員は議員を辞職する。(地方自治法典第47条コムーネ・県の評議員、地方自治法典第64条 兼職の禁止)
 首長の補佐役であり、平時においてはほとんど独自の権限を有しない。首長不在時には、首長の代理を務める。
 出納長、収入役にあたる役職はない。財政を担当する評議員(政治職)が類似の役割を務めるが、どちらかというと財政局長的な役割に近い。
 首長の補佐役としてシティ・マネージャ(ディレクター・ジェネラル)がある(97年59号法による。地方自治法典第108条)。非公務員、非政治家、プロフェッショナル
行政委員会制度(性格・種類・権限)
 日本のようないわゆる行政委員会は存在しない。機能的に近いものとしては選挙管理委員会があるが、首長および議員の中から選出されるメンバーによって構成されるものである。
会計原則
・会計年度(期間・複数年予算の有無)
・予算編成に係る規定
・決算(現金主義か発生主義か)
・政策評価の手法
会計年度は1月1日から12月31日
基本は単年度(州は5年を最長とする複数年予算を含む)
州の予算原則の規定:2000年76号委任立法
予算原則:収支の均衡(5条)、単年度性(6条)、総額性(7条)、包括性(8条)
予算手続き:州評議会が原案を作成し、州議会に提案。州議会は財政法により予算を議決。暫定予算、補正予算の制度あり。決算書(収支決算書、資産計算書)は州議会で承認される。
県・コムーネの予算原則の規定:地方自治法典第151条(財政制度:同149〜269条)
予算原則:収支の均衡、単年度性、総額性、包括性、単一性、公開の原則、など
予算手続き:評議会が予算案を編成し、関連計画とともに議会に提案。決算書(収支決算書、経営決算書、資産計算書)は議会で承認。(地方自治法典第162、226、228、229、230条)
現金主義を基本とするが、発生主義も併用されている
地方自治体における政策評価は自治体毎にまちまち(中央改府による統一基準はない)
財産
・公有財産に関する特例(貸付等の規制・借地借家方の適用除外等)
日本に類似した制度は見受けられなかった
州および地方自治体の相互関係
・協議機関
・協約
・事務組合
【憲法123条】
・各州は、憲法との調和を保ちつつ、州政府の形、その機構および機能に関する基本原則を定める憲章を有する。憲章は、州の法律および行政措置に関する住民発議および住民投票の権利の行使、州の法律および規則の公布について規定する。
・憲章は、州議会により、その議員の絶対多数をもって二ヶ月以上の間隔をおいて二回、可決されなければならない。
・各州において州憲章は、州と地方自治体との間の協議を行うための期間について定める。
【地方自治法典第30条】
・複数の地方自治体は、特定の事務事業について相互に協力することを、自らの選択と合意により定めることができる。
・国および州は、その専管事項について、一定期間内における特定のサービスの管理のため、あるいは事業の実現のため、地方自治体間に拘束的協約を定めることができる。
【地方自治法典第31条】
・単一または複数の役務の共同運営および職務の遂行のために、地方自治体間で事務組合を設立することができる。
・同じ地方自治体同士が二つ以上の事務組合を同時に創設することはできない。
国の関与
・関与の類型
・首長の解任権
・議会の解散権
【地方自治法典第14条】 コムーネの団体委任事務 ⇒「事務」の欄参照
【地方自治法典第54条】国からコムーネ首長への機関委任事務 ⇒「事務」の欄参照
【憲法第126条】 州議会の解散および州代表(首長)の解任権
・憲法に違反する行為または法律の重大な違反を行ったとき、州議会を解散もしくは評議会議長の更迭をすることができる。
・州議会の解散および評議会議長の更迭は、国の安全のために実施される。
・解散は、州問題のために、共和国の法律によって設けられる、下院議員および上院議員によって構成される委員会の意見を聞き、命令によって行われる。
・州評議会議長の不信任は、州議会の構成員の5分の1の署名に基づき、州議会の絶対多数によって決議される。
・州評議会議長の不信任決議、更迭、失効、死亡、辞任は、評議会の辞任と州議会の解散を伴う。
【地方自治法典第38条第5項、第141条、第143条】
・コムーネおよび県議会は、下記の場合に、内務大臣の提案を受け、閣議によって審議された後、大統領令によって、任期を待たずに解散
a)憲法に違反する行為があったとき、又は重大で継続的な法律違反があった場合
b)主として次のような理由により組織が通常の機能を果たすことができず、事務の執行に著しい支障をきたしている場合
1)恒久的な議事妨害
2)コムーネ首長および県代表者の辞任
3)半数以上の議員が辞職した場合
c)予算を期限内に成立させないとき
国と地方の係争処理制度
州行政裁判所:執行の手続きおよび内容に関わる係争処理
憲法裁判所:国による州法の違憲性への疑義、州による国の法律または他州法の違法性への疑義
【憲法第127条】
・州議会の可決した州法律が州の権限を超えているときは、国は、当該州法律の公布から60日以内に、憲法裁判所に対して適法性の疑義を提訴することができる。
・州は、国法および他の州法律および法律に基づく行為が、自州の権限を侵害する場合に、法律の公布または法律に基づく行為から60日以内に、その適法性の疑義を憲法義判所に提訴することができる。
なお、協講機関として、国家=州会議、国家=都市会議、統一会議などが恒常的に活動
・国家=州会議
・正式名称を「国家・州およびトレント・ボルツァーノ自治県間常設会議」といい、1983年設立、1997年に常設の会議となる。
・州および自治県の政治・行政活動について諮問、情報収集、合意、協議等を行う。
・全ての普通州と特別州の州知事およびトレント県、ボルツァーノ県の自治県の県知事が参加する。
・州および自治県の利益に関わる全ての国の法令等に関して、同会議の意見が述べられなければならない。
・事務局が置かれ、事務局長の下に、財政計画部、国土基盤整備部、生産活動部、社会福祉政策部、技術部がおかれている。
・国家=都市会議
・正式名称を「国家・都市および地方自治体会議」といい、1996年に首相令により設立、1997年に委任立法第281号により、法律上の根拠を有する団体となる。
・県およびコムーネの職務について影響を与えうる政策方針に関わる問題について、調整、研究、情報交換、検討を行う。
・首相によって主宰され、内務大臣、経済財政相、都市基盤整備相、保健相およびイタリア全国コムーネ協会会長、イタリア県連合会会長、山岳部地方自治体全国連合会会長などを構成員とする。
・統一会議
・1997年に設立される。
・州および地方自治体の共通の利益にかかわる課題を扱う。
・国、州、地方自治体の間において、共通の利益にかかわる活動協定を協議し採択する。
・基本的に国家=州会議と国家=都市会議の構成員よりなる。
*ただし、これらを「係争処理機関」というのには実態的に若干、無理があります。「調整機関」「協議機関」というのがよいのではないでしょうか。なお、これらを超越するものとして、2004年の憲法改正により、連邦上院が(従来の上院に替わるものとして)誕生することが定められました。連邦上院は、地域から選出される上院議員(定員252人)に加え、議決権を持たない各州より2名(1名は州議会の代表者、もう1名は州域内の自治体首長らの代表者)の代表者によって構成されることになっており、主に州間の利害調整、州と国との利害調整を行います。
資料:
イタリアの地方自治(財団法人自治体国際化協会)
Costituzione Italiana イタリア憲法
L.C.n. 1/99 99年第1号憲法改正法 (州代表の直接選挙および州憲章の自治に関する憲法規定の改正)
L.C.n. 3/2001 2001年第3号憲法改正法 (州に関する憲法規定の改正)
Legge n. 142/90 90年142号法 (新地方自治法)
D.LGS. n. 267/2000 2000年267号委任立法 (地方自治統一法典)
Legge n. 81/93 93年81号法 (地方選挙法−コムーネ、県の首長の直接選挙)
Legge n. 43/95 95年43号法 (州選挙法改正)
Legge n. 241/90 90年241号法 (行政手続法、情報公開法)
Legge n. 59/97 97年59号法 (行政改革法、バッサニーニ法の一)


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