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4. 国際競争力と営業税
 
図表9: 所得課税改革年表
1990年までの税率(インピュテーション方式)
法人税(留保利潤課税)56%
法人税(配当利潤課税)36% + 資本収益税25%
所得税(最高限界税率)56%
1990年所得課税の税率引き下げ
法人税(留保利潤課税)56%→50%
所得税(最高限界税率)56%→53%
1994年所得課税の税率引き下げ・事業所得へのキャッピング制度導入(企業立地保全法)
法人税(留保利潤課税)50%→45%
法人税(配当利潤課税)36%→30%
所得税(事業所得最高限界税率)53%→47%
1999年所得税の税率引き下げ(2002年までの段階的実施)
所得税(最高限界税率)53%→48.5%
所得税(事業所得最高限界税率)47%→43%
2001年インピュテーション方式の廃止・2分の1所得方式の導入
法人税・資本収益税の税率引き下げ
所得税の税率引き下げ計画の変更(2005年までの段階的実施)
法人税(留保利潤課税)45%→25%
法人税(配当利潤課税)30%→25% + 資本収益税25%→20%
所得税(最高限界税率)48.5%→42%
所得税(事業所得最高限界税率)43%→42%
 
図表10: 所得税減税のスケジュール(2000年税制改正法による)
1998.12.31まで 2001.1.1.より 2003.1.1より 2005.1.1より
基礎控除 12,300DM 14,000DM 14,500DM 15,000DM
最低税率 25.9% 19.9% 17.0% 15.0%
最高税率 53.0% 48.5% 47.0% 42.0%
 
図表11: 2000年税制改革法以前の事業所得課税
資本会社 人的企業
留保利潤 配当利潤
法人税 課税
(比例課税・45%)
課税
(所得税より全額控除)2)
(比例課税・30%)
-
営業収益税 課税
(比例課税・5%×賦課率)
課税
(比例課税・5%×賦課率)
課税
(累進課税・最高5%×賦課率)
所得税 特定ケースを除き非課税1) 課税
(累進課税・最高53%)
課税
(累進課税・最高47%)
1)株を売却した場合のキャピタル・ゲインは、購入から半年以内に売却した場合、および過去5年のあいだ資本の10%以上に相当する株を保有していた場合に限り、所得税の課税対象となる。
2)配当される利益には、30%の税率で法人税が課せられるが、インピュテーション方式の下では、配当を受け取る出資者の所得税から控除されるため、法人税は事実上所得税の前払いとして機能しており、実質的には非課税に等しい。
 
図表12: 2000年税制改革法以降の事業所得課税
資本会社 人的企業
留保利潤 配当利潤
法人税 課税
(比例課税・25%)
課税
(比例課税・25%)
-
営業収益税 課税
(比例課税・5%×賦課率)
課税
(比例課税・5%×賦課率)
課税
(所得税より一部控除)2)
(累進課税・最高5%×賦課率)
所得税 特定ケースを除き非課税1) 2分の1のみ課税
(累進課税・最高42%)
課税
(累進課税・最高42%)
1)株を売却した場合のキャピタル・ゲインは、購入から1年以内に売却した場合、および過去5年のあいだ資本の1%以上に相当する株を保有していた場合に限り、所得税の課税対象となる。
2)人的企業の営業収益にも営業収益税は課せられるが、基準税額の1.8倍が所得税から控除される。
 
図表13: 法人課税の実効税率比較
日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
1990年 49.98% 40.14% 35.00% 52.87% 38.50%
2002年 40.87% 40.75% 30.00% 38.44% 34.33%
出所:『財政金融統計月報』各年版「租税特集号」より作成。
* 利潤の30%が配当されたものとして計算されている。日本の税率は法人税に加えて、道府県民税、市町村民税、事業税が考慮されており、地方税は標準税率によっている。アメリカの税率は法人税に加え州法人税が考慮されている。ドイツの税率は法人税に加えて営業税が考慮されており、営業税については、1990年の税率が15%、2002年の税率が19.6%として計算されている。
 
5. 改革の動向
(1)付加価値税(Wertshopfungsteuer)
 1982年に連邦財務省学術顧問団により提案された。
 応益原則(等価原則)を回復することができる点で肯定的に評価されるが、賃金高を課税べースに算入することは景気対策上望ましくないなどの批判がなされている。
 
(2)営業税の再生
 概要:2003年に都市会議によって提案された。(1)現在は免税となっている自由業を課税ベースに算入すること、(2)債務利子や賃借料を2分の1ではなく全額算入すること、を柱としている。
 肯定的見解:(1)税収が増加すること、(2)自由業とそれ以外の事業との不公平が解消されること、(3)資金調達中立性が守られること、(4)課税対象が広がるため応益原則(等価原則)が回復すること、(5)基本法(連邦の憲法)の改正を要しないこと、などが長所として指摘されている。
 否定的見解:(1)利子や賃借料を全額算入することにより租税支払能力への配慮がこれまでよりも少なくなること、(2)農林業および不動産賃貸による収益は依然として非課税であるため産業間の中立性が十分に達成されないこと、(3)企業の国際競争力が回復しないこと、などが短所として挙げられている。
 
(3)地方所得税
 概要:2001年にドイツ工業連盟およびドイツ化学連盟によって提案された。営業税と所得税分与に代えて、共同税たる所得税および法人税の付加税を導入するというものである。
 肯定的見解:(1)現行制度では所得税分与に賦課率決定がないが、付加税率の決定権を地方自治体に与えることでこの問題を解決することができること、(2)所得税の課税べースを利用するため、課税ベースの算定に追加的費用がかからないこと、(3)租税負担能力が十分に考慮されること、(4)産業間の中立性が損なわれないこと、などが長所に数えられている。
 否定的意見:(1)外形標準課税(予定収益課税)や付加価値課税に比べて景気の影響を受けやすいこと、(2)賦課率の差が応能課税たる所得税の税負担に格差を生じること(地域の中核となる大都市はより高い賦課率を必要とする)、などの点で批判されている。


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