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VII 実海域における流出油防除実験計画
VII-1 概要
 我が国の油防除訓練は、海上保安庁を中心に各自治体、民間防除や石油関連企業等との合同訓練が実施されている。しかしながら、これらの訓練は、各種油防除資機材の使用法等について行われているが、油を海上に流した訓練は行われていない。
 我が国では、原油を用いた海上実験研究は、昭和43年に八丈島沖で流出油の挙動と原油火災及び油回収を目的として行われた。
 この実験研究から海上における原油の拡散式として元良の式が開発され、火災実験からは輻射熱等に関するデータ資料が得られた。
 油回収実験では当時の油回収資機材は、現有資機材と比較して性能や機能性が劣っていたこと、また、原油の海上における挙動が予想以上に拡散が速く対応出来なかったことが挙げられている。
 この海上実験から既に40年が経過し、各種油防除資機材の開発や改良がなされ、ソフト面における防除手法についても、海上災害防止センター防災訓練所における油防除訓練コースの修了者が2万人を超え、防除手法の基礎的な技能を有している者が全国に散在している状況にある。
 これらの状況をふまえ、本調査研究の最終目標の一つとして、これまでの個々の調査研究の結果を総合して、海上に油を流す複合的防除訓練と実験研究の実施を目標とした、実海域における流出油防除実験計画(案)の策定について検討を行った。
 
VII-2 実験内容
 実験内容は、次の2種類の実験とした。
 
1 スキマーによる海上流出油の回収実験
2 回転翼航空機を用いた自己かく拌型油分散剤の散布による流出油分散処理実験
 
 スキマーによる海上流出油の回収実験については、ノルウェーの油濁防除機関NOFO(Norwegian Clean Seas Association For Operating Companies)が過去実施した洋上における海上流出油の回収訓練の内容を参考として検討を行った。
 実施規模については、第VI章のシミュレータによる海上流出油の模擬防除訓練の計算結果より、海上流出量50kl及び100klのいずれの場合も、スキマー2基を使用して夕方までの間に十分な物理的回収が可能であることが分かったが、1日で確実に実験を終了させるために、8時間後の油の回収率が最も高かった(98.0%)、試験油量50kl、回収スキマー2基(TRANSREC250及びFOILEX TDS-200)の条件とした。
 また、自己かく拌型油分散剤S-7の散布による流出油分散処理実験については、試験油量を10kl、S-7を散布する回転翼航空機の機体数を2機とした。
 洋上で回収された混合油水の分離には、本報告書第II章で試作を行った、円筒型簡易油水分離装置を用いることとする。
 スキマーによる海上流出油の回収実験イメージを図VII-2.1に、回転翼航空機を用いた自己かく拌型油分散剤の散布による流出油分散処理実験イメージを図VII-2.2に示す。
 
図VII-2.1 スキマーによる海上流出油の回収実験イメージ
 
 
図VII-2.2 S-7散布による流出油分散処理実験イメージ
 


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