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VII-3 実験の各種条件の設定
1 実験海域
 実験海域は、実油を使用することから、回収等ができなかった試験油が陸岸に漂着する可能性が低い海域であること、船団等の移動が比較的短時間で行える海域であること、航空機の分散剤等の補給が可能となる基地(飛行場)が比較的近い場所にあることといった地理的条件を検討した結果、東京から比較的近い距離にあり、試験油が本州沿岸に漂着する可能性が低いと考えられる海域として、本州から見て黒潮流の外側である、八丈島の南東方向の海域(32°-30′N、140°-30′E付近)に設定することとした。
 実験海域周辺の海流の状況を図VII-3.1に示す。
 
図VII-3.1 実験海域周辺の海流の状況
:32°-30′N、140°-30′E付近)
(拡大画面:123KB)
出典:海洋速報(平成17年2月22日〜3月1日)より
 
2 参加船艇及び航空機
 参加船艇については、2基のスキマーにより流出油の回収を行うために、油回収母船とブーム曳航用支援船とのコンビによる船団を2個編成するほか、実験全体を統括する指揮船、試験油を運搬する油タンカー、回収した混合油水を一時貯蔵するガット船を設定した。
 また、回転翼航空機については、15年度に回転翼機による油分散剤散布に関する調査研究で使用した、民間機のAS350Bの機体を2機使用することとした。
(1)油回収母船(曳船兼海難救助船) 2隻
第1船団 TRANSREC250搭載
第2船団 FOILEX TDS-200搭載
(2)ブーム曳航用支援船       2隻
(3)指揮船(曳船兼海難救助船)   1隻
(4)油タンカー(499 G/Tクラス)   1隻
(5)ガット船(499 G/Tクラス)    2隻
(6)回転翼航空機 AS350B      2機
 
3 資機材
 資機材については、海上災害防止センターが保有している資機材を中心に使用することとし、外洋における流出油に対応することから、TRANSREC250及びFOILEX TDS-200を用いることとした。
(1)スキマーTRANSREC250          1基
(2)スキマーFOILEX TDS-200         1基
(3)スキマー用パワーパック         2台
(4)大型オイルフェンス ユニブームNO-800R 2基
(5)円筒型簡易油水分離装置         1基
(6)航空機用S-7散布装置          1式
 
4 試験油種及び流出量
 試験油種については、事故時に流出の可能性が最も高いと考えられる、我が国への輸入量が最も多い油種とした。
 平成15年度の原油油種別輸入実績(石油連盟)のデータから、最も我が国への輸入量の多い油種として、アラビアン・エキストラ・ライトを採用した。
 流出量については、実験当日の夕方までに無理なく回収または分散防除が可能となる量として、スキマーによる海上流出油の回収実験については50kl、回転翼航空機を用いたS-7散布による流出油分散処理実験については10klとした。
 なお、第VI章のシミュレーション計算結果より、いずれの流出量も、当日の夕方までに十分回収または分散防除が可能となっている。
 
5 試験油の流出形態
 試験油の流出形態としては、瞬間流出と連続流出とがあるが、乗り上げ、衝突した船舶の破孔から連続して原油が流出する状態を想定して、連続流出とした。
 
VII-4 実験計画(案)
 これまでの検討結果を総合して作成した実験計画(案)を表VII-4.1に示す。
 
表VII-4.1 実験計画(案)
第1日目
1200
東京出港
 実験海域まで約180マイル
 11ノットで所要時間約16時間30分
第2日目(スキマーによる流出油回収実験)
0430
実験海域 着
0530
気象・海象情報の収集、実験実施の判断
0600
実験開始
第1、2船団ユニブーム展張開始
0630
第1、2船団ユニブーム250m展張完了(約30分)
0640
第1、2船団ペアスイープ形成
0700
第1船団トランスレックスキマーヘッド海上投入テスト
スキマーユニットポンプの作動確認運転の実施
第2船団フォイレックススキマーヘッド海上投入
0720
同上終了
0730
回転翼航空機 基地(八丈島空港)発
0745
回転翼航空機 実験海域上空着
以後、適宜状況調査を実施する。(状況調査終了後は、基地に帰投。)
0800
油タンカーより風下に向かって試験油の海上放出開始(50kl)
0830
海上放出終了(30分間)
第1船団ガス検知の後、風下より油回収作業開始
第2船団、第1船団の風下に位置し、油回収作業開始
※ 回転翼航空機により適宜、油の拡散状況等を確認
1600
残存油が少なくなった時点で、油回収作業を終了する。
第1、2船団スキマー揚収(15分)
第1、2船団ユニブーム揚収開始
1700
ユニブーム揚収終了(60分)
資機材の清掃
1730
実験終了
第3日目(S-7油分散剤散布による流出油分散処理実験)
0630
気象・海象情報の収集、実験実施の判断
0700
実験開始
0730
回転翼航空機2機 基地(八丈島空港)発
0745
回転翼航空機2機 実験海域上空着
0800
油タンカーより風下に向かって試験油の海上放出開始(10kl)
0815
海上放出終了(15分間)
回転翼航空機により拡散状況調査
0900
回転翼航空機により第1回目散布開始(約4分間)
0904
第1回目散布終了、分散状況確認
※散布終了後は基地に戻り、S-7の補給(約30分間)を行った後、再び実験海域に向かい、散布を繰り返す。
以後、1600頃まで残存油の状況を確認しながら、散布を適宜実施する。
(1機あたり最大で7回実施)
1600
残存油が少なくなった時点で、散布作業を終了する。
付近警戒船により、航走かく拌を実施
航空機により、残存油の状況を確認する。
1630
航走かく拌終了、実験を終了。
各船団、航空機実験海域離脱
1645
航空機基地着
第4日目
0900
各船団 東京入港


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