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(3)STEP3(地域課題を自律的に解決するまちづくり組織化へ)
 
●設立メンバーと後続・後継メンバーの円滑な連携と継承
●今後の展開方向、使命、目標の再構築
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 やる気と達成感に基づき活動メンバーの継承が円滑に行われるよう、取組目標の設定や進行管理などの地域自衛型防犯システムの成熟を目指すとともに、後継メンバーとなる豊富な人材確保の機会創出を行う。
 中長期的な自主防犯活動展開を持続可能なものとするためPDCAサイクルに基づく事業経営(マネジメント)を確立する。
 
イ 具体的取組内容(例)
 地域状況に応じた今後の展開方向、目標の再構築を定期的に行い、活動メンバーのモチベーション向上を図りつつ、団体をNPO法人化するなどして他の地域団体との組織的な連携、協働体制の構築を図る。
 
ウ 行政・警察支援
 他地域、企業、大学等との連携、協働が図られるよう情報発信を行うほか、防犯だけでなく防災、福祉等との連携を含め地域間の人材紹介、情報連携のコーディネイトを行う。
 
<活動例> 防犯活動団体をNPO法人に(大津市)
 
 2章でも取組を紹介した西大津駅前防犯推進協議会では、パトロール以外にもジャズコンサートの開催などにより、緩やかな住民交流の道を拓いている。
 また、協議会を一過性でなく長期的な取組にしたいという思いから、全国でも珍しい防犯活動団体としてのNPO申請に踏み切り、地域の支援を受けやすい組織づくりを進めている。
 法人格の取得によって、団体名での契約行為が可能となるなど、組織面でのメリットがある。企業、大学など地域のつなぎ役となり、地域課題を自律的に解決してゆくNPOに期待が高まっている
 
 
(出典:04/11/10 京都新聞、04/11/22 読売新聞)
 
 
(1)STEP1(新団体設立、既存団体による個別活動)
 
●活動開始時の資金確保(ユニフォーム、看板などの基本的な装備、設備の調達)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 地域自衛型防犯への取組をめざすためには、具体的な活動展開のための基盤整備が不可欠である。活動メンバーや地域住民の共通認識を深めるための会議・広報啓発活動をはじめとして、初期の不定期活動を行えるだけの資金確保、および活動グループとしての一体感を得られるような基本的な装備の調達(ユニフォーム、腕章、看板など)を行う。地域住民の目に見える形で取組を行うことで、参加者の確保が期待できるなどのことから、行政、企業等と連携して資金、拠点などの活動基盤づくり(自主活動団体立ち上げ)を行うことが必要である。
 
イ 具体的取組内容(例)
 活動メンバー自らが、自主活動団体のユニフォーム、腕章、ロゴマークなどについて企画、作成するなどで、組織としての一体感を高める。
 防犯を地域課題として捉え、自治会費充当等により自主防犯活動の立ち上げ費用の予算化を行う。また、活動について、持続可能な地域自衛型防犯の取組が展開できるよう、地域の企業、団体等の資源の有効活用や活動資金の確保を含めての活動基盤づくりを行う。
 
ウ 行政・警察支援
 自主活動団体の活動立ち上げにあたっての財政的支援のほか、防犯アドバイザーの派遣や先行事例の紹介などの情報提供を行う。また、立ち上げの会合場所の確保や必要な装備の貸出などの支援を行う。
 
<活動例> レイクウェストパトロール(高島市)
 
 ボランティア活動にとってメンバーの士気は重要である。組織の一体感や活動の充実感を得る上で、メンバー専用のジャンパーや腕章を揃えることには大きな意味がある。
 高島市内(旧安曇川町周辺)で活動する「レイクウェストパトロール」は、メンバーたちが鮮やかなジャンパーを手作りでそろえ、中高生との落書き消し活動やゲームセンターのパトロール、防犯カメラ設置など、チームワークを生かして積極的な活動を展開している。
 
(手作りのジャンパー)
 
(出典:「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり大賞関係資料)
 
(2)STEP2(地域団体の連携による自主防犯組織設立)
 
●活動装備・設備の拡充
●活動拠点の確保(装備・設備の保管場所)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 活動メンバーのユニフォーム、腕章、パトロール資機材などの補充、点検活動はもちろんのこと、公共施設などを利用した拠点の確保を通じて、定期的、継続的な活動を展開していくための活動基盤の整備を行う。
 
イ 具体的取組内容(例)
 地域の学校、幼稚園、公民館等を活動拠点として活用することで、装備・設備の保管場所を確保するとともに、メンバーの情報交換の場を持つことができる(個人負担の軽減)。また、学校を活動拠点とすることは、子ども安全リーダーの活動とリンクして、学校、地域で児童・生徒の安全確保も図られる効果がある。
 
ウ 行政・警察支援
 活動拠点となりうる公共施設情報の紹介や利用の斡旋を行うほか、地域自衛型防犯の取組に関する協力企業・団体との連携を支援する。また、青色回転灯やその他の活動装備・設備拡充についても、必要な支援を行う。
 
<活動例> 山中比叡平防犯推進協議会(大津市)
 
 地域における住民の防犯活動が高まりを見せつつある昨今、国土交通省と警察庁は保安基準の緩和を行い、自主防犯活動で使用するパトロール車に限り、所定の手続によって青色回転灯の設置を容認した。
 ごみの不法投棄や空き巣被害に悩まされ続けてきた大津市の山中比叡平地域防犯推進協議会は回転灯を4基購入、自主活動団体としては近畿地方で初めてとなる、青色回転灯設置車「みまわり君」での地域パトロールを開始した。
 活動団体にとってパトロールカーは大きな活動基盤だが、回転灯によってPR効果にも弾みがつくだろう。
 
(「みまわり君」の出発式)
 
(出典:asahi.com MY TOWN 滋賀 05/1/16)
http://mytown.asahi.com/shiga/news01.asp?kiji=4740
 
(3)STEP3(地域課題を自律的に解決するまちづくり組織化へ)
 
●活動拠点の確立(本部・事務所機能)
●常駐スタッフの賃金確保
●PDCAに基づく事業経営(マネジメント)確立
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 自主活動団体の活動拠点として、本部・事務所としての機能を有し、しかも常駐スタッフが設置可能な体制・人材確保をNPO法人化も含めて推進していく。
 また、地域自衛型防犯の取組と併せて自主活動団体の地域住民への認知度の向上を目指すことで、運営資金面の協力を確保していく。
 
イ 具体的取組内容(例)
 地域自衛型防犯活動を発展させ、コミュニティポリス(民間交番)を設立し、住民の自主活動拠点の確立を行い、常駐スタッフの設置により「警察依存型防犯」から脱却し、地域でのPDCAサイクルでの問題解決を実現する。
 また、防犯商品開発、セミナー講師料等による収益をコミュニティポリス活動資金として充当するような活動展開を行う。
 
ウ 行政・警察支援
 自主活動団体のNPO法人化の先例などの情報発信を行い、対外普及を行っていく際の地域間の人材紹介、情報連携のコーディネイトを行う。また、地域自衛型防犯の他地域の先進的な取組実例を紹介するほか、防犯パワーアップセミナーでの事業経営(マネジメント)について支援する。
 
(1)STEP1(新団体設立、既存団体による個別活動)
 
●住民、地域団体への活動・組織のPR、認知度向上
●行政、警察との連絡・連携体制の確立
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 住民、地域団体への活動・組織のPRを通じて、自主防犯組織の認知度を向上させる。また、組織内の連絡体制を強化(窓口の明確化)し、行政、警察との連絡・連携体制の充実を図る。
 
イ 具体的取組内容(例)
 地域自衛型防犯マップ作成のワークショップ開催(交流機会の創出、課題共有化)や地域での防犯活動のPRなどを通じての認知度向上を目指す。
 電力関連企業と連携した街路灯の点検・清掃への取組や地域ぐるみの一斉落書き消しへの取組などを企画するなどで広範な協力・推進体制を確保する。
 警察署連絡協議会等への参画を通じて、行政、警察との連携体制の構築を図る。
 
ウ 行政・警察支援
 行政・警察が主催する会議、研修の機会において、関係団体の協議会、ワークショップ等への参加調整、コーディネイト(地域特性を踏まえた、中核団体メンバーへの声かけが重要)することで、地域自衛型防犯活動との連携を行う。
 
<活動例> 外灯点灯運動で電力会社と連携(彦根市、大津市、八日市市)
 
 「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり実践県民会議の取組である「外灯点灯運動」は、各戸に玄関灯の点灯を呼びかけ、まちを明るくして犯罪の起こりにくい環境をつくる取組である。
 滋賀県は関西電力滋賀支店の協力を得て、防犯灯の点検・清掃を実施。彦根・大津・八日市の三市において、「暗くて危険」と声の上がっていた箇所を点検した。
 行政、事業者、住民の連携は、課題解決方法の選択肢を広げてくれるだろう。そのためには、三者が共有する課題をうまく見つけ出すことが鍵となる。
 
(点検作業風景)
 
(出典:滋賀報知新聞<特報> 04/12/26)
 
(2)STEP2(地域団体の連携による自主防犯組織設立)
 
●活動内容の多様化、深化に伴う他団体、行政との連携・協力体制の確立
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 地域自衛型防犯活動の自主的な取組内容が多様化、深化してくるにしたがって、防災、福祉、環境等の防犯活動に限定しない多様なテーマ団体との交流・活動連携を目指す必要がある。また、防犯環境の整備に着目した、ソフト・ハード両面からのアプローチが求められることから、土木・建設、機械工学等の部門連携も必要である。
 
イ 具体的取組内容(例)
 定期的な協議会開催等による情報交換を通じての多様なテーマ団体との交流・活動連携を行う。また、構築された連携関係のもとに、PDCAサイクルの持続型の新しい防犯連携活動の企画・実施を行う。
 
ウ 行政・警察支援
 行政側の部局横断的な情報・活動連携を実現するとともに、対費用効果や先見性をもって、地域における各種団体参加の協議会開催のトータルコーディネイトを行う。
 
(3)STEP3(地域課題を自律的に解決するまちづくり組織化へ)
 
●地域のまちづくり活動への参画
●地域内外との連携
●その他団体との連携
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 「防犯」に限らず、様々な地域課題(防災、福祉、環境等)への対応が可能な総合的な安全安心ネットワークの構築を目指す。地域自衛型防犯の実現は、地域の安全・安心まちづくりのグランドデザインの中で考えられることが必要である。
 
イ 具体的取組内容(例)
 いったん、住民の自主的な防犯活動ネットワークが立ち上げられ、活動が充実し組織間の連携が確立された段階で、防災、福祉等複数の地域課題・テーマも含めて対応する包括的な地域住民の自主的な活動に発展させる。
 また、住民自治の視点から、地域のまちづくりへ積極的な参画の機会を持つことが必要である。
 
ウ 行政・警察支援
 地域における協議会開催のトータルコーディネイトを行うとともに、行政側の関係部局間連携体制の構築(住民からの要請に窓口を一元化して対応可能な仕組み作り等)を検討する。
 
 本報告書においては、地域自衛型防犯システムの強化に向けた地域の取組のあり方(基本方針・目指すべき姿)、段階的な取組イメージ(具体的取組内容(例))や、地域の取組推進のために必要と考えられる行政・警察の支援のあり方について、モデル地区調査を通じて得られた知見をもとに、「防犯環境の整備」、「情報(知識・ノウハウ)の共有・発信」、「人材の育成・確保」、「組織運営」、「活動基盤(装備・設備・資金・拠点)の確保」、「その他団体・地域・行政との連携・ネットワーク」の6つの要素から整理を行っている。
 本報告書に取りまとめられた地域自衛型防犯システム構築の考え方は、各地域において地域自衛型防犯を実践していくにあたっての、基本的な指針を提示したものである。そういった意味で、実際に各地域において、地域自衛型防犯活動を展開していく際には、各地域の実情(まちの成り立ち、地域特性、犯罪情勢等)、既存組織の関係性等に応じた対応が、地域住民、行政、警察等の地域自衛型防犯に関連する主体に求められることになる。
 今後、地域自衛型防犯を推進していくための、防犯セミナー等(地域自衛型マップ作成研修会、防犯リーダー講習等)の様々な取組が実施され、地域住民が地域自衛型防犯の重要性に気付き、防犯環境整備の活動を展開し、地域安全情報の共有・発信を行い、継続的な組織運営、活動基盤を確立し、人材発掘・育成、行政・警察との効果的な協力連携等について模索していく中で、本報告書に取りまとめられた様々なノウハウ、先進地域の活動事例等を活用しつつ、より実践的な活動マニュアルやアクションプログラムの作成へとつなげて、各地域の実情に応じた独自の地域自衛型防犯体制の構築を進めていく必要がある。







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