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(3)人材の育成・確保
(1)STEP1(新団体設立、既存団体による個別活動)
 
●有志の結集、参加呼びかけ(中核メンバーの確保・育成)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 地域で取組やすい外灯点灯運動やあいさつ運動などの活動展開をきっかけとして、その中から防犯意識、ボランティア精神の高い有志(キーパーソン)の発掘を図り、地域自衛型防犯の展開に必要な中核メンバーの確保を目指す。その際、無理なく継続的な取組が行えるよう幅広い参加を呼びかけ、自主活動団体の体制づくりを行う。
 
イ 具体的取組内容(例)
 女性、青年、シルバーなど幅広い層で取組める地域の犯罪抑止活動を設定し、その取組への勧誘を通じて知識、経験、リーダーシップなどから活動の中核を担うキーパーソンの発掘を行う。
 また、先進事例視察やワークショップ等を通じて、地域自衛型防犯の必要性への気付きの機会とそのイメージを創出する。
 
ウ 行政・警察支援
 地域自衛型防犯の成否は、中核をなす防犯リーダーの資質いかんにかかることから、事例視察会、ワークショップの企画などについて参加者の調整(開催連絡、出席依頼等)を行い、人材確保初期段階のコーディネイトを行う。また、研修の場やワークショップには、防犯アドバイザー派遣等の支援を行うほか、参加者の中からキーパーソンとなるべき人材の発掘、登用(一定の役割を担ってもらう)などを行う。
 
(2)STEP2(地域団体の連携による自主防犯組織設立)
 
●活動メンバーの研修(専門性の向上)
●活動メンバーの拡充(参加システムの確立)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 地域自衛型防犯の展開にあたり、中心的な役割を担う防犯リーダーについて地域自衛型マップ作成の研修会などで、その専門性を向上させるとともに、活動の継続性確保に向け、人材確保の幅を広げるための参加システムの確立を目指す。活動メンバーの拡充にあたっては、企業、大学等との連携や定年退職した世代の参加促進に配意する。
 
イ 具体的取組内容(例)
 防犯リーダーや活動メンバーに対するセミナー(地域自衛型マップ作成研修、防犯環境設計に対する知識の習得研修等による地域防犯リーダーの養成、個人情報取扱いに関する講習(プライバシー・犯罪被害者への配慮等)を開催し、PDCAサイクルを取り入れた持続型の取組について共通理解を持った人材を育成する。
 また、地域交流イベント企画(コンサート、スポーツイベント等)を通じての地域活動への広がりと新メンバー参画機会の拡大を図る。
 
ウ 行政・警察支援
 防犯リーダー協議会等を開催して地域間でのノウハウの普及・情報交換を支援するほか、特別な育成カリキュラムを設け、各地域での自主活動団体結成促進や活動メンバーの技術向上を支援するための専門ボランティアを養成する。
 また、自主活動団体が防犯教室やセミナーを主催する際に、開催情報の他団体への周知や必要に応じて専門家・防犯アドバイザーの派遣を行う。
 
<活動例> 平成見廻り隊(近江八幡市)
 
 JR近江八幡駅周辺を管轄する近江八幡駅前交番は、交番単位での犯罪認知件数が県内1、2を争う多発地域。町の安全は自分たちの手で守ろうと、ボランティアによるパトロール組織「平成見廻り隊」が発足した。
 メンバーは近江八幡市と同市安全安心まちづくり協議会が18歳以上なら誰でも参加できるという条件で公募し、30人で結成された。日本ガーディアンエンジェルス京都支部のメンバーから研修を受け、隊のロゴ入りジャンパー姿で月に1〜2回パトロールを実施するほか、ごみ拾いや落書き消しといった活動にも取り組む。
 自治体の公募に市民が応えるという形での防犯組織結成は珍しいケースだが、市では備品購入費などの予算確保を行うとともに、活動拠点として駅前の空き店舗活用の検討も進めている。
 
 
(出典:04/9/17 京都新聞、04/12/9 毎日新聞)
 
(3)STEP3(地域課題を自律的に解決するまちづくり組織化へ)
 
●活動ノウハウの対外普及(のれん分け)
●次世代の活動の担い手の意識啓発・確保(若者・子ども)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 PDCAサイクルによる地域自衛型防犯の取組を具体的に展開し、地域のネットワーク充実によって犯罪のないまちづくりを実現する。この課程で得られた活動ノウハウを対外的に発信し、他地域の防犯活動団体の人材育成支援を行う。
 また、人材確保の視点を次世代の活動担い手の意識啓発にも向け、持続可能な地域自衛型防犯を将来にわたり展開していく。
 
イ 具体的取組内容(例)
 他地域への地域自衛型マップ作成手法等の出前講座(出張講師)や成果物の発表を通じて互いの資質向上を行う。また学校等との連携による児童・学生への地域防犯安全教室(滋賀県子ども安全リーダーの取組)の開催を通じて、子ども安全マップの作成を行うなどして、世代を超えた後継者育成・人材確保につなげる。
 
ウ 行政・警察支援
 地域自衛型防犯の取組や成功実例を取りまとめ、広く他地域に紹介することで対外普及を行っていくとともに、地域間の人材紹介、情報連携のコーディネイトやネットワークづくりを行う。
 
<活動例> 子ども安全リーダー(滋賀県内の小学校)
 
 「子ども安全リーダー」は県内の各警察署から委嘱を受けたボランティアで、県内232校の小学校ごとに5〜8名が活動している。通学児童の見守りや子どもを対象とした安全指導のほか、児童に「子ども110番の家」を覚えてもらうためのスタンプラリーの実施、地域安全情報マップの作成など、地域に根ざした活動を続けている。
 県内の子ども安全リーダーたちは県警本部が主催する子ども安全リーダー連絡協議会で各地域における活動を報告し、活動ノウハウ等の情報共有を図っている。各警察署ごとに連絡協議会を確立している地域も多く、ネットワークを基盤とした活動を展開している。
 
(防犯教室の様子)
 
(出典:滋賀県子ども安全リーダー活動要領、04/8/26 産経新聞)
 
(1)STEP1(新団体設立、既存団体による個別活動)
 
●活動の使命・目標の明確化
●組織の立ち上げ
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 「警察依存型」から「地域自衛型」の防犯への移行を図り、“主役は地域住民である”との認識とPDCAサイクルでの持続型の防犯をめざすという、「地域自衛型防犯」の共通目標の明確化(参加メンバー間での共有化)および活動組織の立ち上げを行う。
 立ち上げにあたっては、地域のキャラクター(既存組織、住民関係等)に即した対応に配意するとともに、地域自衛型マップの作成によって抽出された問題点の解決に向けて、住民自ら取組んでいくという共通理解をつくりあげる。
 
イ 具体的取組内容(例)
 ワークショップ開催を通じ、参加メンバー間で問題意識の共有を図ることを第一歩に、パトロール活動、落書き消し、清掃活動等の取組みやすい活動から無理なく、継続して協力できる範囲で楽しく運動を展開し、組織としての活動経験を蓄積する。また、組織への帰属や目的意識を持つためのユニフォーム、腕章なども対外・対内的に必要となってくるが、これらを手作り、デザインすることで組織のモチベーション向上につながってゆく。
 
ウ 行政・警察支援
 活動の使命や目標の明確化にあたっては、防犯リーダーや活動メンバーを対象としたワークショップや研修会開催に防犯アドバイザーを派遣する等の支援が必要である。また、自主防犯活動団体の立ち上げに必要な経費について、行政から助成が行われることが望ましい。
 
<活動例> シルバーボランティアポリス(栗東市)
 
 栗東市ではごみの不法投棄や車上狙いの増加に対し、老人会有志が自主活動団体を結成。発足会には60〜77歳の男女約30名が集まった。
 「長年の人生経験と時間的な余裕を地域のために生かしたい」、「肩ひじを張るのではなく、ふだんの散歩の際に不法投棄の有無を見てまわったり、子どもに交通安全を呼びかけていきたい」というように、背伸びしない活動を旨としている。
 住民どうしが挨拶を交わすなど、顔の見えるコミュニティづくりこそ地域防犯の大きな一歩であり、防犯に限られることなく地域活性化のきっかけとして、期待が高まっている。
 
 
(出典:04/8/21 朝日新聞)
 
(2)STEP2(地域団体の連携による自主防犯組織設立)
 
●組織的な活動を実施するため体制整備(執行部、広報・PR、実働部隊等)
 
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
 継続的、組織的な活動を実施するための女性、青少年、シルバーなど広い層の参加を得て組織体制を整備するとともに、無理なく楽しく、特定の人材に負荷がかからないような役割分散システムの確立を目指す。
 
イ 具体的取組内容(例)
 中核メンバーを中心として全ての意思決定がなされる集権的な組織構造から、執行部、広報、財務等各部門の設立による組織内部での役割分担、専門性の向上を図る必要がある。
 また、メンバーの入れ替りがあっても活動の質を維持できるように活動内容のマニュアルを作成するとともに、活動日誌等でノウハウの蓄積、メンバー間の意思疎通を図る仕組を確立することが重要である。
 さらに、アンケート等から住民の声を集めて活動に反映させる制度など、組織運営のシステム化を目指していくことが求められる。
 
ウ 行政・警察支援
 継続的、組織的な活動を展開している地域の自主活動団体等を安全なまちづくり大賞で表彰したり、必要に応じて先進地の事例視察企画等を行う。また、防犯に限らずボランティア活動の実例や組織運営のノウハウを紹介する機会を設けるなどし、組織体制整備の支援を行う。







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