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4.1.2.2 MEPC52での審議概要
 10月11日のプレナリーにおいて、MEPC事務局から、先週の第3回バラスト水作業部会中間会合(ISBWWG3)でG8(バラスト水管理システムの型式承認ガイドライン)及びG9(活性化物承認手順ガイドライン)が大きく進展したことが紹介された。
 バラスト水作業部会議長(英国:マーク・ハンター氏)からは、先週開催された第3回バラスト水作業部会中間会合の報告が行われ、今、第52回MEPCでは、G8及びG9を草案化し、G4(バラスト水管理ガイドライン)、G6(バラスト水交換ガイドライン)、G7(リスクアセスメントガイドライン)、G10(プロトタイプ・バラスト水管理承認ガイドライン)等のドラフティングを進めることが説明され、作業部会での審議が開始された。最終日の10月15日には、作業部会の報告(MEPC52/WP.7)がプレナリーで行われ、2005年7月のMEPC53でこれらガイドラインを最終化することで承認された。
 以下には、各テーマ(ガイドライン等)毎の審議概要を記す。
(1)G8及びG10の関連性、及び両ガイドラインの船上試験の取り扱いについて
 最初に、幾つかの国が、船上試験の困難性・不確実性等について意見を述べた後、先週(ISBWWG3)で、承認試験としては不採用としたG8における船上試験の取り扱いについて再度議論することになった。我が国は、再度、船上での生物効果試験の実施は望ましいが、困難で不確実であると主張したが、各国の意見が一致しなかったため、議長は、船上試験の取り扱いを、米国を中心とする小グループで検討することを指示した。小グループには、議長の米国の他、日本、豪州、韓国、ドイツ、ニュージーランド、ブラジル、スウェーデンが参加して行われた。小グループでは、各国の意見を基にフルスケール(コントロールタンクを除き全バラスト水を処理)、最低6ヶ月以上、3有効サイクル以上の船上試験を実施すること、サンプルは漲・排水時でそれぞれ3回(初期、中期、末期)で採取することで合意した。また、有効サイクルとは、漲水時の生物濃度(バクテリアを除く)が規則D-2基準の10倍以上であること、その他、船上試験計画は、主管庁が承認すこと。漲水バラスト水容量と場所、バラスティング操作パラメータ、漲・排水履歴等を記録することが合意された。
 小グループの合意内容は、作業部会に報告され、G8に生物効果試験を含む船上試験内容を含めた草案を作成することとなった。草案は、ノルウェーとドイツが作成し、再度、作業部会で審議することとなった。なお、G8での船上試験取り扱い及び実施内容の議論に終始して、G10との関連性については審議されなかった。
 ノルウェーとドイツが作成したG8草案が作業部会に報告され、審議が再開された。主要審議項目である船上試験及び船上試験における生物効果試験の条項に関しては、多くの国が、実施には賛成であるが[ ]扱いとすること、及び各条項にエディトリアルな修正を加えて、プレナリーにバラスト水作業部会の報告書のANNEX1(巻末の参考資料に収録)として報告することとなった。
(2)G9について
 先週のISBWWG3で作成された草案の各条審議が行われたが、内容については特に変更はなく、エディトリアルな修正を行うことを合意した。
 アメリカ、オランダ、ニュージーランドが主に修正に関する発言をし、ICS、FOE、バハマが船員の安全について確認、単語の加筆を行った。ラボの品質管理(セクション4.2.2)は、G8を引用することが確認された。承認手順(セクション8)では、CEFIC等から条約批准国「the Party to the convention」だけでなく、批准していない国からの活性物質の承認を認めるべきとの指摘があり、本文中の「the Party」が「members of the Organization」に変更された。バハマは沈殿物に対する毒性評価が含まれていないことを指摘した。
 この間、G9の添付資料として「活性物質の特性データの要求事項に関する仕様書」を添付することが、オランダから非公式にドイツ、米国および日本に打診された。4カ国で同文章を検討した結果、有用な情報を含むものの本会合では十分な検討時間がないため、同文書をG9に添付することは望ましくないとの結論に達し、同文章の添付提案はなされなかった。
 オランダは、逐条審議の終了後に、G9については承認のための具体的方法については、さらなる検討が必要であり、今次会合にて承認することに反対する声明を行い、ドイツもこれに賛成したが、ノルウェー、ICS等からは今次会合での承認に賛成する意見があった。議長はレポート中に更なる検討が必要であるとの意見があったことを明記した上で、プレナリーに報告すると説明した(議場外で情報を収集したところ、現在、EU委員会において、農薬製造に関するEU指令(DIRECTIVE 98/8/EC)の修正作業が行われており、同修正内容特に大量に製造される農薬の承認手続きとの整合性を精査に検討する時間が必要になるため、G9について態度を保留するようEU事務局より各国に要請があった模様。)。
(3)G2について
 提案国のドイツにより提案内容の説明が行われ、審議が開始された。我が国は、通信部会を設けてさらに検討すべきであるが、マンホールからのサンプリングは、科学的に不正確な要因が多く、賛成できないこと、サンプリング及び分析方法は、正確性と現実性から決定されるべきであり、特に、PSCでの違反査定に必要なサンプル・分析方法については充分に検討すべきであるとの意見を述べた。そのほか、ニュージーランド、スロベニア、ノルウェー、ICS、米国、ブラジル等がそれぞれの立場で意見を述べた後、議長は本会合では基本的な構成を中心に審議を行って、通信部会での検討を経て、2005年4月のBLGで審議を重ねて、同年7月のMEPC53で締結するスケジュールを説明し、了承された。
(4) その他のガイドライン等について
1)G3について
 提案者である国際ヨット協会(ISAF)より提案内容の説明の後に、意見聴取が行われた。なお、議長より、本ガイドラインに関しても2005年5月のBLGで審議された後、2005年7月のMEPC53で締結する予定が説明された。なお、提案には、ノルウェーとオランダから承認証書を添付すべきとの意見が出された。
2)G4について
 通常のバラスト水交換が実施できないケースにおけるバラスト水交換に関する審議が行われた他、エディトリアルな修正を行うことが合意された。ノルウェーは許容量について決めるのではなく、出きる限り数多くタンクを完全に交換するとするべきであると主張し、結局、ノルウェーの意見を受け、出きる限り数多くのタンクを完全に交換するとすることで合意された。
3)G6について
 オーストラリアより、条約上のバラスト水排出海域(designated Area)について、このガイドラインに規定したい旨の提案があり、今後のMEPCで検討することが合意された。
 そのほか、エディトリアルな修正に関する意見があったが、内容を大きく変更するものではなかった。なお、日本より、管理計画には、バラスト水の漲水と排水の記録の情報に加えて、タンクシフトについても記録の情報も加えるとの提案を行ったところ合意された。
4)G10について
 先週及びG8の合意内容を受けて、G10の内容及びG8との関連性について審議された。各国の意見を受け、議長はG8とG10とは関連性を有しないとの見解を述べ、この考え方によりノルウェーがガイドラインを継続して作成していくことが合意された。
 ノルウェーがG8との関連及び既存船での試験を考慮した大幅改正草案(陸上試験の要求を削除したのが最も大きな修正)を説明し、議長より簡潔に討議するとの要請があり、審議を開始したが結論は出ず、BLG9及びMEPC53で継続審議することとなった。
5)G11について
 提案国の英国より概要説明があり、各項目毎にエディトリアルな意見交換が行われた。
6)G13について
 提案国であるノルウェーより提案説明が行われた後に、意見聴取が行われた。なお、議長より、本ガイドラインに関しても2005年5月のBLGで充分に審議された後、2005年7月のMEPC53で締結する予定が説明された。なお、ノルウェーは、規則C-1条項の適用のために、建設的な方法を見いだすことが重要であり、強制を意図したものではないことの追加説明も行われた。結局、結論は出ず、今後のBLG9及びMEPC53で継続審議することが合意された。
(4)規則D-5見直し規定について
 見直し規定に関しては、審議されなかった。
 
 DE48は、2005年2月21日から25日に開催予定である。バラスト水関係では、バラスト水管理システム承認のためのガイドライン(G8)について審議されることになっている。
 DE48に提出されている提案文書は、我が国とブラジルの次の提案文書である。
(1)DE48/17: バラスト水管理システムに関する重要情報に対する必要な質問(ブラジル提案)
(2)DE48/17/1: 世界の商船の限定した数の代表船舶に対しフルスケールの船上試験を実施する必要性(ブラジル提案)
(3)DE48/17/2: MEPC52/WP.7におけるバラスト水管理システムの承認のためのガイドライン(G8)草案のためのコメント(日本提案)
 DE48での審議は、前記3提案文書の内容を中心にされると予想される。したがって、ブラジルの主張「バラスト水処理装置の承認には、船上での多数の性能試験が不可欠である。」に対する審議、つまり、船上試験の是非と、日本の陸上試験設備にバージ等の船舶を活用することを含める等に関する審議が行われる予定である。
 
 BLG9では、2005年4月4日から8日に行われる。バラスト水関係では、バラスト水管理システム承認のためのガイドライン(G8)以外の全12のガイドラインの審議が行われることになっている。ただし、現在のところ通信部会での検討が行われ、BLGに提案文書を提出するとされているのは、バラスト水サンプリングガイドライン(G2)とバラスト水交換ガイドライン(G6)だけである。
 
 MEPC53は、2005年7月18日から23日、また、その前週である7月11日から15日は第4回バラスト水作業部会中間会合が開催される。この2週間での審議で、バラスト水管理条約に関連する全13のガイドラインが最終化される予定である。
 現在のところでは、バラスト水管理システム承認のためのガイドライン(G8)、活性物質の承認のための手順(G9)、及び条約規則D-5見直しに関する次の文書が事務局より提出されている(いずれも巻末資料編に収録)。
(1)MEPC53/2: バラスト水管理システムの承認のためのガイドライン草案
(2)MEPC53/1: 活性物質を使用するバラスト水管理システムの承認のための手順草案
(3)MEPC53/2: バラスト水管理条約の規則D-5規定のバラスト水管理技術の状況審査実行のための推奨事項







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