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4. IMOでの審議状況
4.1 MEPC52の審議状況
4.1.1 MEPC52の提案文書一覧
 2004年10月に開催されたMEPC52におけるバラスト水関連の提案文書は、次の18であった。
(1)MEPC52/2: バラスト水管理条約におけるガイドライン(英国提案)
(2)MEPC52/2/1: バラスト水サンプリングのためのガイドライン草案(ドイツ提案)
(3)MEPC52/2/2: バラスト水管理同等対応のためのガイドライン草案(ISAF提案)
(4)MEPC52/2/3: 有効なバラスト水電子報告型式(インド提案)
(5)MEPC52/2/4: バラスト水管理条約のためのガイドライン草案(ノルウェー提案)
(6)MEPC52/2/5: バラスト水管理システム承認のためのガイドライン(G8)草案(オランダ提案)
(7)MEPC52/2/6: 活性物質の承認のための手順(G9)の検討状況(ドイツ、日本、オランダ提案)
(8)MEPC52/2/7: テスト・ベッド試験に使用されるバクテリアの定量的分析方法(日本提案)
(9)MEPC52/2/8: テスト・ベッド試験に使用される生物の定量的分析方法(日本提案)
(10)MEPC52/2/9: テスト・ベッド試験のための試験水中の指標生物の最少濃度(日本提案)
(11)MEPC52/2/10: バラスト水管理システムの承認のための手順(米国提案)
(12)MEPC52/2/11: バラスト水交換実施時のMARPOLからの一時的な逸脱(IACS提案)
(13)MEPC52/2/12: バラスト水交換実施時における一時的な否適合(英国提案)
(14)MEPC52/2/13: 規則D-5改正のための付託指針(米国提案)
(15)MEPC52/2/14: 緊急事態を含む追加方策の導入のガイドライン草案に関する意見(米国提案)
(16)MEPC52/2/15: プロトタイプ処理システム承認ガイドラインに関する意見(米国提案)
(17)MEPC52/2/16: リスクアセスメントガイドラインの概略草案に関する意見(米国提案)
(18)MEPC52/2/17: 自動バラスト水交換システム(サウジアラビア提案)
 MEPC52の直前の2004年10月4日から8日には、バラスト水WG第3回中間会合が開催された。以下には、中間会合からMEPC52までの審議概要を各テーマ(ガイドライン等)毎に示す。
4.1.2.1 バラスト水WG第3回中間会合での審議概要
(1)バラスト水管理システムの承認のためのガイドライン(G8)について
1)総論
 型式承認ガイドラインであるG8については、オランダをコーディネータとして取りまとめられた文書と、アメリカから提案のあった文書のいずれをベースとして審議を進めるかについて審議された。また、第1日目には、議長から、船上検査の実施の是非、文書の構成、G8とG10ガイドラインを統合することの是非が審議され、第2〜4日目までは、第1日目の審議に基づき、個別の問題について小グループを設置して検討を行い、小作業グループからの報告を、全体の会合で随時審議した。時間的関係から、G8全体の草案については、WGではクリーンテキストは作成されず、WGでの議論を踏まえ、MEPC52までに事務局が用意することになった。
2)船上検査の是非
 船上検査の是非については、我が国から、船上検査は再現性及び実行可能性に問題があり、型式承認ガイドラインに含めるべきでないとの指摘を行い、ドイツ、ノルウェー、オランダ、インド、ウクライナ、ICS等からはこれに加えて経済的にも難しいとの指摘がなされた。これに対し、アメリカ及びブラジルは、不確実性はあるとしても規則D-2基準に満足しているか否かの検証を条約は求めており、船上検査を行うべきであるとの主張がなされた。結局、議長が、参加国の意思を表示することを求めたところ、船上検査の支持する国が2カ国、船上検査を支持しない国が16カ国であり、船上検査は求めないこととなった。これに基づき船上検査に関する規定は、G8ガイドラインから削除されることが合意された。ただし、その後、米国より、最終段階での船上検査の実施は求めないものの、申請者が船上検査データを型式承認書類の一つの申請書類として提出することを義務付けることが提案され、この提案については別途検討されることになった。
 最終的に、各国に船上試験データ書類提出の強制化に関する採決を行い、結果は、賛成8(アメリカ、オランダ、ブラジル、中国等)、反対8(ドイツ、日本、ノルウェー、フランス等)の同数であり、コンセンサスは得られなかったた。議長は、この部分についてはスクウェアブラケットとして、来週のMEPC52において判断を求めることにすると総括した。
3)ガイドラインの構成
 G8の構成については、ブラジル、アメリカ、ノルウェー等が油水分離器のガイドラインの構成と類似した構成とすることを内容とするアメリカ案の構成を支持し、オランダ、日本等他の国は構成については強い意思がないことを表明したため、アメリカ案をベースにG8案は構成することとなった。しかし、ICSから、アメリカ案の中には、実質的な改正部分が含まれていることから、実質的な改正部分についてオランダ案とアメリカ案とを比較しながら検討していくことが提案され、オランダ案をアメリカ案の構成に沿って編成しなおした上、比較検討を進めていくことが合意された。
4)プロトタイプ処理システムの承認ガイドラインG10との統合の是非
 G10との統合の是非については、アメリカ、オランダから申請内容が異なることから別途議論されるべきと主張があり、別途議論した上で、G8ガイドライン案が作成された段階で再度検討することが合意された。また、製造者、船主のいずれがプロトタイプ試験の申請者となるべきか議論され(前者は、ノルウェーが、後者はアメリカの主張)、結局、どちらも申請者となりうるとの合意が得られた。
5)プランクトン及びバクテリアの分析方法
 我が国により、プランクトン、バクテリア等の分析については、D-2基準の記載内容だけでは計測することが不可能であることから、代用種の使用及び生死の判定方法を明確化することを提案する提案文書(MEPC52/2/7、2/8、 2/9)の内容について、第1日目の昼休み時間にプレゼンテーションを行い、説明を行った。これについては、ドイツのステファン氏をリーダーとする生物学的小グループを設置して検討を行うことが合意された。
 小作業グループでは、バクテリアについては我が国の提案通り、代用細菌を利用することについては合意が得られたが、プランクトンの分析方法については、時間的関係から議論されなかった。
 第4日目の全体会議において、我が国より、プランクトン分析に関する我が国提案が小グループで検討されなかったことに対し、遺憾の意を表明し、改めて十分審議すべきであるとの主張を行った。これに対し、米国より、プランクトンの計数方法について、日本の方法を唯一の方法とすることは受け入れられないが、日本提案の方法を含めて複数の方法を主管庁が選択できることとし、日本の方法、ISOの方法、米国環境省の方法など複数の計数方法について参照できるようにすることが必要であるとの主張があり、我が国もこれに賛意を示した。結局、この考え方に基づき、日本、アメリカで文書を作成し、その文書を基に検討を進めていくことが合意された。第5日目午前には、ドイツ、アメリカ、日本が話し合い、G8のガイドライン案の代替草案案が作成され、これを基に検討を進めることを合意し、議長に文書を提出した。
6)試験に用いる水の規定
 オランダより、試験に用いる水中の有機物濃度について通信部会において合意が得られてないことの報告があった。これについても、生物学的小グループを設置し、まず検討を行うことが合意された。
小グループにおいては、次の試験水を用いることで合意された。
(1)塩分:32PSU以上、あるいは15〜25PSU、あるいは3PSU以下 及び
(2)溶存態有機物炭素:1mg/l以上、あるいは[5]mg/l以上、あるいは[10]mg/l以上 及び
(3)懸濁態有機炭素:1mg/l以上、あるいは[5]mg/l以上、あるいは[10]mg/l以上 及び
(4)全浮遊物質量:[5]mg/l以下、あるいは[5]mg/l以上 に変更
(5)各サイズの試験生物濃度は、
・最小形状部50μm以上の試験生物は、ことなる最低[3]生物門から最低[5]種類が代表され、106個/m3以上の合計濃度であるべき。
・最小形状部10μm以上で50μm未満の試験生物は、ことなる最低[3]生物門から最低[5]種類が代表され、104個/ml以上の合計濃度であるべきである。
・ これら生物濃度は、自然水中に加えることで達成しても良い。
(7)試験は、処理水と無処理の対象水を平行して行い、その比較で評価する。
(8)サンプルは、処理前、処理直後、排出時の3回行い、それぞれ3サンプル採取する。
(9)最小形状部50μm以上の試験生物は開口部50μmのメッシュ、最小形状部10μm以上で50μm未満の試験生物は開口部10μmのメッシュで濃縮し、計数する。
(10)分析は、サンプリング後6時間以内で行う(開始する。)。
(11)分析方法に関しては、主管庁に認める方法で行う。バクテリアの分析方法は、日本提案文書(MEPC52/2/7)の方法をスタンダードとして用いる。
 小作業グループからの上記報告は、特に反論はなく、G8ドライン案として含めることが合意された。
7)装置のスケーリング
 オランダよりG8のスケーリングについてG10と異なっている点があり、検討が必要であるとの報告があった。これを受け、議長は、G8のスケーリング小グループを設置し、検討することを指示した。
 小グループでの検討では、バラストラインで処理する装置の場合は、最低の試験流量を2003/hr以上とし、その範囲内で実験を行うとする草案が作成された。
 全体会合において、小作業グループの検討結果が了承され、これに基づいて草案を作成することになった。
8)その他
 オランダより製造者マニュアルに関する規定はG8では不要であるとの主張があったが、米国、ノルウェー等多数の国は製造者マニュアルは重要であるとして、G8のガイドラインに含めるべきとの反論があり、結局含めることで合意された。
 なお、日本より、処理に伴う汚水の排水処理についてもマニュアルに含めるべきでないかと提案を行ったところ、幅広い支持が得られ、マニュアルに含めることが明記されることになった。
(2) 活性物質の承認のための手順(G9)について
 日本より、G9に関するドイツ、日本、オランダ共同提案文書(MEPC52/2/6)の概要、及び実施中の草案修正作業の報告が行われ、審議が開始された。
 草案は、文章上の訂正が行われた後に、承認され、来週のMEPC52に提出されることとなった。
 本ガイドラインの主要内容である評価クライテリアと承認手順は、次の通り。
1)PBT評価クライテリア
判断基準1: 難分解性(Persistence)
 海水での半減期[>62d]及び清水での半減期[>40d]、あるいは海洋沈殿物での半減期[>180d]及び清水沈殿物での半減期[>120d]
判断基準2: 生物蓄積性(Bioaccumulation)
 BCF>2000, LogPoctanol/water ≧3
判断基準2: 毒性(Toxicity)
 慢性毒性 NOEC<0.01mg/l or 発ガン性、変異原性 or 副産毒物質(Reprotoxic qualities) or 内分泌攪乱影響が観察されないこと
2)承認手順
ステップ1: 基本承認(バラスト水管理システムに使用する活性化物の承認)
活性化物製造者:実験室レベルでのPBTクライテリアデータ及び排出時の予想 → 締約国 → MEPC → IMO専門家グループでの評価・承認 → MEPC → 締約国
ステップ2: 最終承認
活性化物(管理システム)製造者:テスト・ベッド試験(G8)でのPBTクライテリアデータ → 締約国 → MEPC → IMO専門家グループでの評価・承認(排出時の毒性確認)→ MEPC(活性化物を使用するバラスト水管理システム全体の承認)→ 締約国(最終型式承認、公表)
(3) その他のガイドライン等について
1)バラスト水管理計画ガイドライン(G4)について
 議長は、本会合における第2課題であるG4の総論審議の指示があり、提案国である英国の概要説明の後、各国の意見が求められた。ICS、ノルウェー、米国、インド、英国から総論的な意見が述べられ、議長は英国を中心とするG4小グループで草案作業を進めることを指示し、次週のMEPC52で継続審議することとなった。
2)バラスト水交換ガイドライン(G6)について
 議長より、G4に関連するG6の総論審議が求められ、提案国である英国の説明の後、各国の意見が求められた。豪州がバラスト水交換を実施した船舶に対する措置、及び指定地域における措置を検討することが必要と主張し、ドイツとブラジルが各論的な意見を述べた後、議長は、これら意見を考慮して次週のMEPC52で継続審議することとした。
3)リスクアセスメントのためのガイドライン(G7)について
 ノルウェーより、G7の重要性が主張され、議長承認の基に審議を開始した。我が国がノルウェー提案を支持する旨の意見を述べるなど、各国から総論的な意見が出され、引き続きMEPC52までの期間で継続審議することとなった。
4)プロトタイプ処理システム承認ガイドライン(10)について
 G10に関しては、G8及びG9との結合を中心に審議された。我が国をはじめ、提案国のノルウェー、米国、オランダ、英国等が積極的に意見を述べた後、議長がG8とG9との関連性を考慮して、米国を中心とするドラフティング・グループで作成作業を行うことを指示し、次週のMEPC52で継続審議することとなった。
(4)規則D-5見直し規定について
 議長が条約規則D-5(基準の見直し規定)に関する米国提案(MEPC52/2/13)の審議を提案し、米国の説明の後に審議を開始した。ノルウェーの米国提案を支持する意見の他、船主等への情報提供は有意義であるなどの意見が出された。議長は、D-5のクライテリアの来週中の最終化はG8の最終化ができない限り困難であり、そのためG8は是非とも来年のMEPC53での作成が必要であること、最初に条約適用船が発生する2009年から逆算すると事前の基準の見直しは、2006年位が最終時期となることを述べ、来週のMEPC52で再度審議することを指示した。







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