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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/01/06 産経新聞朝刊
【主張】自由貿易協定 安保や政治も考慮せよ 中国は相手国足りうるか
 
 「FTA」(自由貿易協定)という言葉が対外経済政策の論議で急に流行語のように頻繁に登場してきた。実際の政策としても推進され始めた観がある。だが日本にとってのFTAとは一体なにを意味するのか。言葉のひびきが生む軽いイメージだけが先行し、実体への考慮があまり払われないという印象が強い。
◆農業問題で覚悟を
 FTAというのはその相手国や内容によっては日本の経済システムのあり方、ひいては日本の国のあり方までを左右する重大な意味を持つ対外取り決めなのである。だからその取り組みには少なくとも国政の場での広範かつ慎重な議論が前提となる。だがいまのところ奇妙なほど議論がないままに、官僚主導でFTAの構想が推進されている点に深刻な危惧(きぐ)を覚える。
 自由貿易協定とは二国間、あるいは数カ国間で貿易上の障壁となる関税や輸入割り当てを撤廃する国際合意である。国家間の投資や金融の障壁もなくし、人の出入りまでを自由にする場合も多い。だから国と国との経済統合にもつながっていく。
 この種の協定の代表例はヨーロッパ諸国による欧州連合(EU)や、米国、カナダ、メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)である。実際の協定はこうした一定地域諸国間よりも二国間の取り決めがずっと多く、緩やかな関税同盟まで含めると現在、二百にも達するという。
 世界各国の貿易自由化のための市場開放は従来、関税貿易一般協定(ガット)と、その拡大強化版の世界貿易機関(WTO)を通じての多国間取り決めがほぼ唯一の方法だった。だが近年、WTOの遅れや各国独自の経済、政治の思惑から特定国相互の自由貿易協定を求める国が増え始めた。
 日本政府は当初、この動きに「閉鎖的な経済ブロックを形成しかねない」として留保を表明し、貿易自由化はあくまでWTOによる多国間方式を優先する路線を主張してきた。だがつい二、三年前、きわめて唐突な逆転という形で通産省(現経済産業省)主導によりFTA推進の新方針が示された。その結果が昨年十一月に発効した日本・シンガポールFTAだった。日本政府は現在さらにメキシコとのFTA交渉を始めたほか、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)各国とのFTA締結への意向を表明した。
 貿易自由化のための市場開放の促進手段としてのFTAは少なくとも理念として大いに歓迎されるべきである。だが日本政府のこれまでのFTA取り組みには重大な疑問が提起される。
 第一には市場開放でいつも最大の論議を呼ぶ国内農業分野の処遇がFTA政策論ではまったく論じられない点である。シンガポールには農業は事実上、存在しないから、農業問題を考える必要はなかった。だがこれからの交渉相手からはいずれも日本側の農業市場の開放をある程度は迫られる。長年、ガットやWTOの交渉で堅持してきた農業保護策をFTAでは崩す決意があるのか。米国にはすでに「日本のFTAは農業を除外するから真のFTAではない」(ゼーリック米国通商代表部代表)という批判もある。
◆国政レベルで議論必要
 第二には安全保障など経済以外の重要要因への配慮がうかがわれない点だ。西欧でも北米でもFTAの大前提は国家安全保障上の利害が一致し、しかも共通の政治の体制や価値観を共有しあう現実だった。FTAは一国の財や人の動きのドアを他国に向けて開くのだから、相手が非経済の面でも脅威にはならないことがまず条件である。だが日本の場合、経産省の一部などには「FTAを中国とも結んで、経済統合へ」という主張がある。安保政策が日米両国のそれとは対立するうえ、台湾への軍事力行使の可能性を堂々と宣言する中国との間で経済ブロックにつながりうる協定の是非を経済の利点だけで決められないのは自明である。韓国やASEAN相手でも社会問題など非経済側面の考慮は欠かせない。
 FTAを推進する経産省と外務省の姿勢に食い違いがみえ、国としての政策決定の中枢の所在が明確でない点も気になる。国政最高レベルでの公開の議論こそがこの不透明なFTA政策の再スタート点となるべきだろう。
 
 
 
 
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