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2004/03/17 読売新聞朝刊
[社説]中国調査船 軍事目的なら一層懸念が募る
 
 中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域内で、違法な調査を繰り返している。日本の主権を侵害するものであり、地域の安全保障の観点からも、見過ごせない行為である。
 調査船三隻が一月二日から三月七日までの間、南西諸島から小笠原諸島にかけての太平洋上で、計十一件の違法な海洋調査を行った。既に昨年一年間の八件を突破し、過去最多だった一九九九年の三十三件を上回るハイペースだ。
 日本は違法調査を発見する度に中国側に抗議し、二月十日に開いた次官級の日中安保対話でも再発防止を要請した。しかし、中国は「事実関係を把握する」などと答えるだけで、調査を続けた。極めて不誠実な対応である。
 日本は、中国が北朝鮮の核放棄を巡る六か国協議で果たしている役割に配慮したのか、これまでは事務レベルの形式的な抗議にとどめていた。だが、日本の主権と安全保障にかかわる問題である。
 川口外相は、四月に予定している訪中の際、中国首脳部に強く抗議し、再発防止を申し入れるべきだ。中国側には、日本に不信感や懸念を募らせるような行動を慎むよう求めたい。
 排他的経済水域内では、沿岸国が資源開発や海洋調査の主権的権利を持つ。国連海洋法条約は、他国が海洋調査を行うには、六か月前までに沿岸国に申請し、承認を得ることを定めている。中国は条約に違反し、日本に申請していない。
 日中両国は二〇〇一年、東シナ海での科学的調査に限り、調査内容や期間を事前に通報する仕組みを作った。今回のように調査海域が太平洋の場合は、取り決めの対象外となる。実効性を持たせるには対象海域を拡大する必要がある。
 「海洋強国」は中国の国家戦略だ。海洋調査も、海軍力強化の一環として計画的に実施していると見られる。
 ここ数年、中国は主要な調査海域を東シナ海から太平洋に移している。今回の十一件も単なる科学的調査ではなく、台湾有事を想定し、軍事目的で行われた可能性が高い。防衛庁は、中国が潜水艦の航行や作戦、機雷敷設に必要な情報を収集したのではないかと分析している。
 二〇〇四年の中国の国防費は、実質的に十六年連続で前年比二けた増の伸びを示した。ロシア製駆逐艦の購入、配備も進めている。こうした軍備増強路線の延長線上に違法な海洋調査がある。日本が強い懸念を抱くのは当然だ。
 政府は近く二〇〇三年度の中国向け円借款九百六十七億円を決める。執行するかどうかは、調査船問題での中国の対応を見極めた上で判断してもいい。
 
 
 
 
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