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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/03/22 読売新聞朝刊
[社説]トウ小平氏がめざす「トウ小平以後」
 
 中国の国会にあたる全国人民代表大会が開幕し、李鵬首相が政府活動報告で改革・開放を加速させる施政方針を表明した。
 首相は「改革・開放の成否得失を判断する主要な基準は、社会主義社会の生産力発展と総合国力の強化、生活水準の向上に有利かどうかである」とし、「思想を解放し、人類社会の生み出したあらゆる文明の成果を大胆に吸収する」必要を強調した。
 当たり前のことのようだが、二、三か月前まで改革をめぐり「姓社姓資」(社会主義か、資本主義か)を問うべきだとする主張や資本主義の浸透に警戒心をつのらせる議論が根強かった中国では意味がある。
 そうした主張は昨年のソ連のクーデター失敗、ソ連共産党の解体、ソ連の崩壊もあって、中国の保守派が強調していたものだが、自身、保守派寄りとされてきた李首相が別の主張をする変わりようだ。
 もちろん、理由があった。
 一月から二月にかけ、最高実力者のトウ小平氏が突然の感じで、改革・開放の象徴でもある深セン経済特別区など各地を視察し、社会主義が発展するかどうかの基準は生産力だと話した。資本主義の手法も利用できるとも言って、改革・開放の加速を促した。「左」を警戒する必要を説いた。
 トウ氏が旅行に出たのは、保守派が経済特別区は資本主義を生み出し、和平演変(平和的手段で社会主義政権を転覆させる西側の陰謀)の温床になると、その廃止を要求したことに危機感を持ったためだという話もある。この旅行が保守派に対するトウ氏の反撃だったことは間違いない。
 トウ氏の講話を受けたかのように、「資本主義の大胆な利用」をうたう論文も人民日報に掲載された。党政治局全体会議はトウ氏の講話内容を党の政策とした。李報告はその延長線上にあり、党、政府で、当面、改革派が主導権を握り、天安門事件以前の改革・開放路線に戻ったと言える。
 中国共産党は今年、党大会を開き次の五年の党路線と指導部人事を決める。八十七歳のトウ氏としては、改革・開放路線を定着、加速させ、トウ小平以後の後継体制を改革派で固めたいところだ。巻き返しを図る保守派との綱引きの行方を注視したい。
 改革・開放加速のトウ路線は、経済特別区など、いわば“資本主義化”で成果をあげている実態の追認でもある。同時に、ソ連崩壊の教訓を学んでのトウ氏の総括でもあろう。ソ連が資本主義の利用を怠って自滅したという教訓なのだろう。
 改革・開放の加速が必要だとのトウ氏の考えは理解できる。だが、それで十分かと言えば、そうではあるまい。改革・開放と一党独裁の政治体制に矛盾があるのは、天安門事件を見ても明らかだろう。
 トウ氏が、民主化への何らかの軟着陸を考えているなら評価されようが、そうでないとすれば、トウ以後の中国の安定的発展は望めまい。中国の政治体制の弱点は、完全に引退し、一党員のはずであるトウ氏のお声掛かりで、政策が揺れ動き、しかも、政策論争が権力闘争に結びつく現実に表れていると言ってもよいだろう。
 
 
 
 
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