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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/05/15 読売新聞朝刊
[社説]中ソ新時代のスタート
 
 ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長兼最高会議幹部会議長が十五日から中国を訪問し、トウ小平氏以下の中国共産党、政府首脳と会談する。三十年ぶりの中ソ首脳会談だ。
 戦後の世界が冷戦から緊張緩和、新冷戦の時代を経て、いま、冷戦の終わりを視界に入れつつある時、短い同盟の時代から対立・抗争、和解模索の時代を経て、両社会主義大国がその関係を正常化する。
 平和共存の原則を基礎とする国家関係の正常化、独立自主などの原則にもとづく党関係の回復が実現するはずである。脱イデオロギーの普通の関係と言ってよい。
 中ソ和解の可能性が出てきたのは、七八年末、中国がトウ氏のもとで開放・改革路線をとってからだが、現実味を帯びるのは、ソ連も八五年、ゴルバチョフ氏のもとでペレストロイカ(立て直し)路線をとってからだ。両者とも経済の活性化のために平和な国際環境を必要としたことが、和解への道筋をつけたと言える。
 近代化路線を進めるため多面的な交流を必要とした中国は、八二年、「主要敵」を設定して対決する戦略から、独立自主外交に転じた。経済立て直しを図るゴルバチョフ氏の新思考外交もアフガン撤兵などブレジネフ政権下の膨張主義の清算に出る。それは中国が提起した和解への三大障害を徐々に除去する方向をとった。
 こうして、昨年、中ソは和解を既定のものとし、米ソ緊張緩和を軸とする潮流にバランスをとる形となった。長い間、中ソ対立を前提としてきた国際関係はその影響を避けられない。だが、中ソ関係の歴史、その和解への筋道をみれば、中ソが五〇年代の同盟関係に戻るとは考えられない。
 地政学上、和解には戦略的、心理的限界がある。相互の脅威感は残ろう。「ソ連の覇権主義が根本的に是正されるかは、実際的行動と時間的試練を待つ必要がある」と中国の学者、于岡氏は書いている。
 とすれば、わが国も中ソ和解にあわてる理由はない。中ソ間の緊張除去は国際関係の安定要因として、歓迎してよい。
 日中友好協力関係は双方の国益だ。中国がわが国の軍事大国化に懸念をみせても、日米安保体制やアジアにおける米抑止力の存在を拒まないだろう。しかも、わが国が軍事大国とならないのは明らかだ。
 李鵬・中国首相は先の日中首脳会談で、北方領土返還要求を今後も支持すると明言している。ソ連の対中正常化はアジア・太平洋地域の発展のダイナミズムに極東開発を結びつける戦略の一環であり、次の目標は対日関係の打開とみられるが、わが国からみれば、北方領土返還を前提とする対ソ関係打開に外交努力を傾ける好機だ。
 中ソ和解はカンボジア問題の包括的政治解決への動きを加速させる。米中ソ三角関係を均衡のとれたものにし、とりわけ、朝鮮半島をふくめ、アジア・太平洋地域の平和共存への構造調整を促すだろう。
 中ソ和解を国際情勢の安定化に寄与させ、アジアにおける平和共存を構造的に定着させるわが国の役割と責任が大きくなることは言うまでもあるまい。
 
 
 
 
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