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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/03/20 毎日新聞朝刊
[社説]中国全人代 国家改造を狙う江・朱体制
 
 北京で開かれていた中国全国人民代表大会(全人代=国会)が19日、閉幕した。5年に1度の人事交代期に当たる今大会は江沢民国家主席を再選、朱鎔基氏を新首相に選出して、2003年までを担う新たな政府の陣容を決めた。
 人事を見る限り、中国が来世紀に向けて本気で国家改造に取り組み始めた、という思いを強くする。実行力には定評があるが、根回しや調整といった政治術は不得手とされる朱氏の首相就任自体がその象徴だ。
 朱氏が主導権を握った閣僚人事も、国有企業で業績を上げた経営者を登用するなど実務能力を重視した布陣が取られた。各省・委員会の新閣僚29人のうち、留任した閣僚は6人しかいない。世代交代も進んだ。
 これまで名誉職的なポストだった国家副主席には、21世紀の国家主席、党総書記候補とされる55歳の胡錦涛氏が就任した。副大統領に似た位置づけであり、後継体制を視野に入れた人事だ。
 中国政府はこれから国有企業改革、金融改革、行政機構改革の3大改革を乗り切らなければならない。いずれも社会主義経済体制の下で形作られてきた既得権益にメスを入れる外科手術が必要な難題だ。朱首相はとりあえず、指揮官の陣容を整えたといえる。
 興味深いのは朱首相を支える副首相が6人から4人、国務委員(副首相級)が8人から5人へと削減されたことだ。公務員の大幅削減が実施される行政機構改革を前に、政府自ら姿勢を示した形だが、同時に江・朱体制が党内派閥の勢力均衡にとらわれず、人事を断行できる指導力を得たことをうかがわせる。
 江主席や朱首相には故毛沢東、トウ小平両氏のようなカリスマ性はない。しかし、党大会、全人代の機関決定によってポストに就いたことで、正当性を与えられている。中国の国家体制が「人治」から「法治」へと移行し始めたともいえるが、その正当性は経済発展、国家の安定という二つの命題を解決できなければ揺らぎかねない。
 中国指導部が改革に真剣に取り組もうとしているのは、それができなければ国家間の生存競争に生き残れず、共産党による統治体制さえ危機に陥りかねないという共通認識があるからだろう。
 ただ、改革は失業者の増大や社会主義的な福祉政策の切り捨てにも結び付く。その過程では生活水準の低下を余儀なくされる国民も少なくないはずだ。現指導部は改革・開放政策で弱まった中央権力を再強化し、混乱を抑えることを狙っているようだが、それだけでは済むまい。
 経済発展により中国でも価値観が多様化している。力による統制には限界があるのではないか。より多様な意見を吸い上げるために政治システムの改革を期待したい。
 現指導部は5年後に江主席や朱首相ら「第3世代」から胡錦涛氏ら「第4世代」に移行することを念頭に置いているとされる。だが、中国では最高指導者が自ら引退した例は少ない。政権移行がスムーズに進むかどうかのカギも安定した政治システムの構築にある。
 中国の改革の行方は日本を含めたアジア・太平洋地域の経済、安全保障にも大きな影響を及ぼす。過剰な期待や脅威感を持たずに冷静に見守りたい。
 
 
 
 
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