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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/05/12 毎日新聞朝刊
[社説]中国 トウ以後に備える第三世代
 
 中国の江沢民総書記(国家主席)ら「第三世代」指導部がトウ小平以後に備えるため積極的に動き出した。
 第一は「地方指導者」の腐敗の摘発だ。首都の財政を握り、疑惑の中心にいた王宝森・常務副市長の自殺は政治局委員を兼務する陳希同書記の引責辞任へと発展したが、いまだに詳しい公式発表はなく、うわさだけが飛び交っている。
 北京市中心部の再開発プロジェクトにからむ疑惑、総額三十三億元(約三百三十億円)といわれる江蘇省での違法な資金調達、二〇〇〇年五輪誘致運動で集めた巨額の募金の使途など、さまざまな疑惑がうわさされている。書記や市長の秘書、子息、局長級幹部を含め数十人が事情を聴取されているとも伝えられる。
 真相は不明だが、第三世代指導部が首都の腐敗摘発で断固たる姿勢を示すことによって、庶民の信頼を取り戻し、自らの威信を確立しようとしていることは間違いあるまい。権力者の腐敗は、昨年二四%に達したインフレ、貧富の格差、地域格差拡大とともに、庶民の不満が大きく、天安門事件の原因ともなった。
 「社会主義か資本主義か」の論争を禁じ、大胆に市場経済を導入するよう呼び掛けた一九九二年のトウ氏の南方講話以来、「諸侯」と呼ばれる地方の党・政府官僚の一部は株や不動産投機に熱中、私腹を肥やした。国有企業の改革に便乗してもうけた者もいる。北京での腐敗摘発は第三世代指導部を、ともすれば軽くみる「諸侯」を震え上がらせ「中央」の優位を確立するのにも役立つとみられている。
 トウ以後に備えるもう一つの動きは第三世代指導部が「先に一部の人々、地域を豊かにする」というトウ氏の「先富論」の実質的な修正を図ろうとしていることだ。
 「先富論」は確かに一時期、中国経済を活気づけるのに役立った。しかし半数の国有企業が赤字で五、六百元(五、六千円)程度の月給さえまともにもらえない労働者が増えている一方で、一握りの億万長者が誕生している。このような現状では「先富論」の堅持は、逆に社会不安の原因となりかねない。三月の全国人民代表大会(国会)でも、格差是正を求める声が圧倒的だった。
 今年に入ってから中国共産党機関紙「人民日報」はトウ氏の理論を「全面的、体系的に」理解するように呼び掛けるようになった。「先富」よりも「共同富裕」に宣伝の力点を置き、貧富の格差、地域格差の是正こそがトウ理論の目標であることが強調されている。
 昨年十一月にはトウ氏の発言を収めたトウ小平文選全三巻の増補版を出版、学習を呼び掛けた。バランスのとれたトウ氏の前半期の思想で南方講話に象徴される晩年の思想を薄めようとする苦肉の策ともいえる。
 晩年のトウ氏には南方講話にみられるように、さまざまな矛盾、問題、批判は無視し、大胆な改革によって成長の加速を図ろうとする傾向が強かった。一日も早く周辺のアジア諸国の発展に追い付きたいという焦りがあったのかもしれない。
 しかしインフレ、経済の根幹を支えてきた国有企業の不振、農業の低迷、治安の悪化、中央政府の威信の低下・・・と難問は山積している。腐敗の摘発とともに、矛盾を激化させず、よりバランスのとれた着実な成長を目指すことが肝要だろう。
 
 
 
 
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