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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/08/23 毎日新聞朝刊
[社説]トウ小平氏が九十歳になった
 
 毛沢東以後の中国の最高実力者、トウ小平氏が二十二日で九十歳になった。八十二歳で亡くなった故毛沢東主席と比べれば大変な長寿だ。
 毛主席は党主席のまま息を引きとったため、その後に大きな政治空白が生じた。党中央顧問委主任などを務めたトウ小平氏は一九九〇年までに一切の公職から身を引いた。終身制の過ちを繰り返してはならない、大きな政治空白を作ってはならないとの決意によるものだろう。
 しかしトウ氏はその後も、ある意味では毛主席以上の権力を行使してきた。「完全引退」後も、党の秘密決議によって重要問題での発言権―最終決定権を握り、最高実力者として君臨してきたからだ。しかも現職ではないから発言の結果に責任を負うことはない。このような二重権力構造は、同氏の健康が目立って衰えた今も続いているようだ。
 トウ氏が推進してきた「改革・開放」路線の下で、中国経済はこの十数年来、年平均九%近い急成長を遂げてきた。このまま順調にいけば、来世紀には間違いなく世界一の経済規模になるだろう。
 しかし「先に一部の人々、地域を豊かにする」トウ路線の下で各種の矛盾が深まったことも事実だ。「改革・開放」の受益者である沿海部と内陸部の格差は大きく広がり、発展に取り残された内陸部の不満が強まっている。持てる者と持たざる者との貧富の格差はさらに拡大している。治安の悪化や「改革・開放」の下で甘い汁を吸っている一部の党・政府幹部やその子弟への不満も根強い。
 西側諸国では社会矛盾が深まれば選挙で政権が交代し、ガス抜きが行われる。しかし安全弁のない中国では、社会矛盾が深まれば何かをきっかけに爆発するしかない。五年前にインフレ、所得格差、腐敗に対する市民の不満が天安門事件の形で爆発したことは記憶に新しい。
 江沢民国家主席ら第三世代指導部も問題の深刻さには気付いているようだ。今春の全国人民代表大会では分税制を導入し、地方財政は豊かだが中央財政は火の車という状況を改善、地域格差を是正しようと乗り出したが、「改革・開放」の受益者である沿海地方の抵抗も激しい。
 その一方で、今年上半期のインフレ率は二〇%以上に達し、天安門事件前の危険ラインを突破した。インフレ率を一〇%以内に抑えこむのが政府の当初目標だったが、達成は絶望視されている。
 トウ小平路線の下で元気なのは外資系企業や私営企業、沿海地方の郷鎮企業(農村工業)だけで、肝心の国有企業の方は今や半数が赤字だ。このため今後は、国家財政からの“輸血”を止め、破産制度の本格導入によって不良企業を清算する方針とも伝えられる。
 これまでも経営不振の国有企業では賃金の遅配、欠配が珍しくなかったが、今後は失業者が大量に出るだろう。昨年来、各地で労働争議も多発している。今度は労働者が主役となった本格的な社会騒動が起きる恐れもある。
 近づくポストトウ小平時代の大混乱を避けるには、同氏が占める政治空間をできるだけ小さくして将来生じる政治空白を極小にしなければならない。社会矛盾をこれ以上激化させてはなるまい。誕生日当日に発表された人民日報の評論員論文は、トウ小平理論の「学習」だけでなくトウ理論を「絶えず豊かにし、発展させるよう」呼びかけた。トウ理論の修正をほのめかしたものか注目されよう。
 
 
 
 
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