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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/03/11 毎日新聞朝刊
[社説]中国 「安定」を優先した李鵬報告
 
 十日開幕した中国の第八期全国人民代表大会(全人代)第二回会議で李鵬首相は、高度成長路線を微調整し、今年の経済成長率を昨年実績より四ポイント低い九%に設定、物価上昇率も一〇%以内に抑える努力目標を示した。
 昨年十一月の中国共産党中央委総会(十四期三中全会)では、今世紀中に社会主義市場経済体制を確立するため、財政、金融、国有企業、貿易など各分野にわたる経済改革プランを網羅した「五十カ条決定」が採択された。本来なら今年は「大改革」の年になるはずだった。
 しかし李鵬報告では税収を中央税と地方税に分ける「分税制」や中央銀行によるマクロ管理体系の確立など改革を「重点突破」にとどめるとしている。議論の多かった金融改革では国家開発銀行、輸出入銀行、農業開発銀行の新設などがうたわれているが、「金融改革はゆっくりと推進する」とも強調している。
 一言で言えば「安定優先」が李鵬報告の特徴といえる。
 今年はインフレ、所得格差、官僚の腐敗に対する庶民の不満を背景に学生、知識分子が民主化要求運動を繰り広げた天安門事件五周年に当たるが、経済状況は五年前と非常に似通ってきている。米クリントン政権の人権外交に勇気づけられ、国内や外国にいる民主化グループの動きも再び活発化し始めている。
 江沢民国家主席(総書記)や李鵬首相ら中国指導部が最高実力者、トウ小平氏の「改革、成長加速」の号令にもかかわらず、「改革、発展、安定」三者のバランスをとる道を選択し「社会の安定」を最優先しようとしているのは時宜を得た決断というべきだろう。
 中国経済の矛盾はそれほど深まっている。一九九二年春に最高実力者、トウ小平氏が「チャンスをつかみ発展を加速せよ」と呼びかけて以来、過大な固定資産投資、経済開発区の乱造などによって経済は過熱、同年は一二・八%増、昨年は一三・四%増の高度成長となった。
 経済過熱の中で統制価格を撤廃する価格改革が断行されたこともあって、昨年の消費者物価は全国平均で一四%増、大都市では二〇%増に迫った。今年初めに実施された人民元レート統一の影響も加わり、物価はさらに高騰を続けている。
 「先に一部の人々、地域を豊かにする」トウ小平氏の“先富政策”の下で、沿海部と内陸部との経済格差は引き続き拡大、一人当たり国内総生産(GDP)が全国最高の上海と最低の貴州省では八倍に広がった。もともと「三分の二が赤字体質」といわれてきた国有企業の経営状態はさらに悪化、都市でも農村でも貧富の格差が拡大した。
 都市住民と農民の所得格差も八四年の一・六倍から昨年は二・五倍に拡大した。中国の農民たちは従来、忍耐強いことで知られているが、昨年以来、内陸部での農民暴動の情報が相次いだ。経済改革に便乗した役人の腐敗、治安の悪化に対する庶民の不満も強まっている。
 李鵬報告が安定成長を目指しながらも「国民経済の持続的、高速度かつ健全な発展」という矛盾した目標を掲げているように、高度成長か安定成長かの議論は中央指導部内でも決着していない可能性が強い。しかし中国は十二億の人口、五十六の民族が共生する世界最大の国である。「ポストトウ小平時代」が近づいているだけに、これ以上、経済、社会矛盾を激化させてはなるまい。
 
 
 
 
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