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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/12/26 毎日新聞朝刊
[社説]国際 毛沢東ブームが訴えるもの
 
 きょう生誕百周年を迎えた故毛沢東主席に対する新たなブームが中国で広がりをみせている。昨年来出版された毛沢東関係の書物は百数十種類以上、再刊された毛沢東選集は隠れたベストセラーになっている。故人の肉声の演説や一昔前の毛沢東賛歌などを収めたCDやテープ、記念コイン、時計などの毛沢東グッズもなかなかの人気らしい。
 中国社会科学院が先月初めに行った十八歳から三十五歳の若い世代五十人を対象にした調査では、大学生や労働者、党・国家官僚や企業経営者までを含め半数近くが、程度の差こそあれ、この歴史的人物を崇拝していたという。
 これまで中国では故毛沢東主席に関しては「建国に偉大な功績あり、治国に過ちあり」という一九八一年の「歴史決議」の評価がほぼ定着していた。五七年の反右派闘争に始まった毛沢東の階級闘争至上主義は、大躍進運動の失敗を経て、文化大革命の悲劇へとつながった。“走資派”(資本主義の道を歩む党内の実権派)を民衆に批判させた文革はやがて子が親を、妻が夫を、同僚が同僚を告発、民衆同士が武闘を繰り広げるみぞうの大混乱へと発展し、中国社会の人間関係に今も深い傷跡を残している。
 にもかかわらず数年前から毛沢東を懐かしむ空気が古参労働者や農民の間で再燃し、最近になって若者をも巻き込むブームになったのはなぜか。「一種のファッション」「商魂の産物」「若者にありがちな英雄崇拝」「形を変えた政権批判」など、さまざまな解釈が可能だ。
 トウ小平氏の資本主義的改革に反発する保守派が陰で扇動しているとのうがった見方さえある。しかし採算の合わないものが商品化されるご時世でもない。需要があるから供給されているとみるべきだろう。
 トウ小平氏の「改革・開放」政策は、十五年前の十一期三中全会で毛沢東の階級闘争至上主義と決別、経済建設を活動の中心に据えることから始まった。「先に一部の人々、地域を豊かにする」という同氏の先富論と市場経済の大胆な導入は、確かに中国経済全体を底上げさせた。
 しかしその半面、「新貴族」「百万富翁」と呼ばれる一握りの改革成り金と庶民との貧富の格差、沿海部と内陸部との経済格差は拡大した。経済関係の役所はもちろん警察、検察、裁判所などの司法部門や教育現場までが拝金主義に毒され、麻薬、売春、人身売買など新中国建国後一掃された諸悪が不死鳥のようによみがえり、まん延し始めている。
 インフレや国営企業改革に伴う失業者の激増などに対する不満も根強い。外資系企業では過酷な労働・福利条件の下で多数の死傷者を出す重大事故が相次いでいる。
 このような「改革・開放」政策のひずみに対する不満が、物質的には貧しくてもみんなが平等だった毛沢東時代への郷愁につながっているのではないか。毛沢東思想がいまなお党公認の指導思想であるという背景もある。
 中国指導部は生誕百周年を前にトウ小平氏の伝記や発言集を出版し、同氏の理論こそが「毛沢東思想を継承し発展させた現代中国のマルクス主義である」と宣伝することで、毛沢東ブームを克服しようとしているかにみえる。しかしブームの根底にある社会のひずみが正されなければ、ポストトウ小平時代の混乱期に民衆の間の毛沢東の影はさらに大きくなるかもしれない。
 
 
 
 
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