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3.3.3 潤滑性能評価方法
 注油された油のリング通過による挙動について考えると、注油された油は大きく分けてリングの潤滑に寄与するもの(潤滑寄与分)と潤滑には寄与せずリングの摺動領域から外にかき捨てられてしまう油(消費分)の2種類がある。そこで油膜厚さ以外に潤滑性能を評価する指標としては図3.3.2に示すように、この潤滑寄与分、消費分や拡がり量といったものが考えられる。一方、潤滑油の劣化がリングの挙動を不安定にし、油膜破断の原因になると考えられると、ライナ面に付着した油の入れ替わりが早い方がより潤滑性に優れると考えられる。注油された油は最終的には排出されていくと考えられるが、1回の注油でライナ面に残される潤滑油が多いほど古い油との入れ替わりが早くなると考えられる。そこで、本研究では潤滑性能の指標として潤滑寄与分を考えることとする。
 図3.3.3の縦軸は注油率を基準にして潤滑油寄与分と消費分の割合をそれぞれ表したものである。
 
図3.3.2 潤滑性能評価概念
 
図3.3.3 注油した油のシリンダ摺動面拡がり性に関しての潤滑寄与分と消費分(かき上げ)
 
4.1 大型機関運転中のライナ変形計測
4.1.1 変形の計測方法
 ライナ変形の計測はライナ内面からと外面からの2方法によって実施した。
 計測対象機関は発電用の12K80MC-Sを用いた。
 内部変形は、ピストンスカート下部に装備した渦電流式非接触変位計によってライナ壁までの距離を計測し、計測結果をFMテレメーターで外部に送信した。外部変形はシリンダライナ外部に冷却水を流した一定温度のサポートを設け、ここからシリンダライナ外面の変形を変位計で計測した。
 
図4.1.1 内部変形計測方法
 
図4.1.2 外部変形計測方法
 
 変形の計算値(緑色の線)と計測値(○、□:外部変形計測結果 赤線、黒線:内部変形計測結果)の比較を図4.1.3に示す。変形は計算値とほぼ合致すること、主な原因は熱変形であることが明らかとなった。
 ライナ変形は油膜形成に影響を及ぼすと考えられるが、変形によるリング、ライナ間の油膜の形状変化はごくわずかであり、ライナ変形が油膜形成に及ぼす影響は小さいと考えられる。
 
図4.1.3 内部変形計算値と計測値の比較







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