日本財団 図書館


物・文化の交流
 北前船は、地域の特選品を運んだ。北海道からは、ニシンや鰯(いわし)を干した魚肥が大量に備後に入った。これは備後の綿作や畳表になくてはならない効果的な肥料であった。その肥料を使った綿や古手は、北前船などによって北陸や北海道へ運ばれた。そこではこの綿や古手を用いて独特の着物などが作られた。
 また北前船は、様々な文化も伝えた。
 
木綿橋
 綿の生産地であった備後には数多くの綿問屋があり、ことに福山には大きな問屋が軒を連ね、そこには木綿橋という橋もあった。なお富山県の高岡市には、文政8年(1825)に福山の木綿商の岩屋弥四郎を訪ね商談をしたとの記録がある。
 
さっくり
 
京都府立丹後郷土資料館蔵
 「さっくり」とは、一般的に「裂き織り」と呼ばれる織物で、たて糸に麻、木綿などを使い、よこ糸に細かく裂いた古手の木綿を織り込んだものである。ずっしりと重く丈夫な作りである。このさっくりは、主に男達の海着や山着として着られた。この木綿や古手は、大坂、備後から北前船によってもたらされ、各地に伝わった。
 
さしこ
 
京都府立丹後郷土資料館蔵
 さしこは、2〜3枚の布を合わせて、細かく刺し縫いしたものである。1枚だけでは弱い木綿布も、重ねることで補強され、保温性が増す。激しい労働に耐え、長持ちがした。
 このさしこは、廻船の船乗りの家に伝えられたもの。細かな縫い跡が、美しい抽象絵画を見るようでもある。そこには、あたたかな心と美意識が感じられる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION