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●アジアと九州の一体化
 そういう意味で中国の沿海部との間で、港も空港もそうでしょうけど、どんどん九州とは競争的な関係を生み出してまいります。と同時にやっぱり九州と繋がりたいというような連携を生み出していく。「中国の農業は脅威だ」ということをいわれる方がありますが、中国は洪水と旱魃がもの凄い。酸性雨ももの凄い。ですからいつか、中国は、石油と同じように農産物も、輸入国に転換する時が来るかもしれないのです。そうなった時、九州は高級な果物だけではなくて、むしろ食糧などの農作物の供給地になるかもしれないということを、私は本気で感じたりします。
 
会場風景
 
 そういう意味で、観光、人材、ソフト、IT、工業、商業、農業でトータルに九州をアピールする必要を常に感じています。
 様々な人材が九州にもおられます。地元出身の人、自分の故郷を愛する人だけがアジアに向けて情報発信ができるのだと思います。是非そういう方々を活用されて、いろんなネットワークを作られればいいんじゃないかなと思います。
 というのは、今、各地でお手伝いをしておりまして、本当に可能性を感じているんですが、これをもっと九州全域でいろんな方と連携できるシステム、そういう意味で運輸とか交通とか、電力、エネルギーというのは、現在、九州レベルで考えられる数少ない分野だろうと思います。実はこういう形で地域が、どこか勇気を持った同盟関係が出来て、それがアジアと繋がるという成功事例を是非日本中に発信したいというのが私の小さな野心でもあります。
 
●中国にどうアプローチするか
 最後に中国にどうアプローチするかというアドバイスでございますけれど、一般的に、どうもアプローチが総合的すぎるという気がします。「中国」と一言で言っても、北から南までそれぞれ違うということで、地域を絞ることも必要です。
 それから方法論にしても、いろんなことを考えられておりますが、もうちょっと焦点をしぼってから取り組むべきだと思います。もし来年、物流の外資参入が認められたらどんなことを展開できるのか、そういうチャンスを掴むのです。
 一番大事なことは人任せ、人まねの事業ではだめだということです。これは企業も自治体も同じだろうと思います。いろいろ視察や調査のお手伝いをしますが、本当に実効あるものになるということは、やっぱり、ご担当の方の自身のもつ総合パワーが発揮されてこそだと思います。
 本当にこの九州という所はどこも個性があるところです。そういう意味で私は地域の一番というのをアジアに売り込んでいくべきだと思います。その地域の強みというのが必ず海外でも通用する時代になったということを強く感じます。
 そういうことを売り込むことによって、結果的に私は港湾、空港の利便性は高まると信じています。
 今、残念ながら外から見ると日本というのは東京、せいぜい大阪までしか目にうつりません。ですから、じゃあ、東京、横浜、神戸とどう違うんだという比較をどうしてもしてしまいます。あるいは博多と門司とどう違うかとかですね。「いろんな考え方もあると思いますけど、私達はこう考えます」というようなことを明確にメッセージができる。そういう意味でこれから単にホームページの中国語訳を作るという程度のことではなくて、アジアの人達を意識したメッセージ性の高い情報発信を是非心がけていただきたいと思います。
 
●物流の重要性を認識しているか
 物流関係の皆様方はともかく、我々、国際関係、あるいは企業の方、自治体の方が、中国とのビジネスで、物流の重要性というのをどれだけ認識しているでしょうか?本当に今、いろんなサービスがありますけれども、やはり九州の利便性だとか、いろんなことについてまだまだ認識が少ないと思います。私が何度も言うように貿易も投資も、物流と決済(お金のやり取り)が一番大切です。もちろん、手続きとか契約、法律、特許だとか、もちろん他にもたくさんあるんですけれど。物流と決済の重要性は、何度言っても言い過ぎじゃないと思っています。
 もちろん、物流関係の皆様方にはその専門情報以外に、様々な海外の情報を、ご存知です。特に中国がWTO加盟でどんどん規制が緩和される中で、なかなか情報が伝わってこないために、企業のビジネス展開が、非常に遠回りをしている状況がございます。そういう意味で物流の分野の方に強力に支援していただくことというのは、地域の経済発展に本当に役に立つというわけであります。
 
●攻めの姿勢のできる地域が発展する
 今日のひとつのキーワードが「守りから攻め」ですが、やはり攻めの姿勢でいる所が、これから企業でも地域でも発展します。地理的に優位とか大都市の大きな後背地があるということも、ひとつの条件ではありますが、そういうことだけで優位になるわけではないと考えます。上海や北京もそうですけれど大連、廈門、寧波、広州という所がどれだけ、今、世界中に注目されているかというのはご承知のとおりであります。
 攻めと守りのバランスは、これからとても大切で、これは企業、個人、家庭も皆そうだろうと思います。
 そういう意味でどれだけ組織のリーダーあるいは担当者の本気度があるかというのが、本当に問われているのかなと思います。これまでのように、国際ビジネスが必ずしも東京だけで行われるとは限らなくなります。アジアとの交流は私達九州の人間が直接繋がっていかないと絶対上手くいきません。それには地元のことを知らなければいけないという意味で、熱意が必要だろうと思います。そこから逆に、新たな東京、中央との関係も生まれましょうし、地方間の連携というのが構築されるんだろうと思います。
 非常に下世話な言い方ですが、私は内心、九州は本当にチャンスなんだけどなあと思っています。このチャンスを生かすのはどこなんだろうと密かに考えています。
 モノの流れ、ヒトの流れ、カネの流れがますます海外、国内も区別がなくなっているということを皆様方を通して私も知りつつあるということで、特に物流の分野がそのことをはっきりと証明しているのではないでしょうか。
 
●中国貿易から見た四つの視点
 最後になりましたけれど、中国貿易からみた4つの視点をご紹介します。商流は90年代、中国の台頭で大きく変わりましたが、九州、日本、アジア、世界の動きが静かですが非常に大きく変化しているということです。
 
図23 中国貿易から見た4つの視点
 
 次に、冒頭4枚のカップルの写真を見ていただいたように、いろんな所で経済社会、消費社会の大転換が起こっていることもご認識いただいたことと思います。
 三番目に中国ビジネスのリスクは昔に比べても決して減っていません。予想もつかない様々な変化があります。ミクロのビジネスでも巨大な中国のマクロ社会の波にほんろうされるのです。中国と25年おつき合いして、ずっと平坦な道というのはありませんでした。でも、中国を避けて日本国内だけで繁栄発展できるかというと、どうもそうではないんじゃないかと思います。
 21世紀のアジアをめぐる様々な経済社会の変化の時代に臨み、これを大きなチャンスだととらえて、多くの九州の皆さんと共に、これを活かしていこうというムーブメント(うねり)を起こしていこうではありませんか。
 長時間ではございましたが、皆様のお役に立ちましたでしょうか。
 ご静聴有り難うございました。







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