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●海外との経済依存を深める中国
 最近のトピックですが、貿易統計では中国は2004年の貿易総額の見通しが1兆1千億ドル、日本は1兆ドル前後となり、アメリカ、ドイツに次いで世界第3位になりました。まさに中国経済は、国内が好況というよりは外国との貿易あるいは海外からの投資に依存して成長しているとも言えるかも知れません。
 
●アジアとの結びつきが強まる九州
 そういう中で九州とアジアとの貿易あるいは世界との貿易については、最近九州経済産業局から新しいレポートが出ました。
 
図2 2003年九州の貿易統計
 
図3 2003年九州の対中貿易
 
 去年の統計額は、輸出は過去最高。輸入の方も6年ぶりに3兆円を突破ということでございます。これをアジアでみますと、過去10年で九州の貿易が1.7倍になったのに対して、中国貿易に限ってみますと輸出が3割も伸びています。今まで輸入の貨物ばかりということで、私もこの20年間どうやって輸出の貨物を増やすかというお手伝いを、業界や荷主の皆さんと一生懸命考えてきたわけですが、輸出が3割、輸入も1割以上増加したということで九州と中国の貿易は4年連続で過去最高を記録しています。まだ貿易入超でございますけれども、赤字の幅が輸出の伸張によって2年続けて縮まっているということです。
 皆様方、いろんな物流の基地でご経験されていますように、輸送機械、電器機械、鉄鋼等、どちらかというと重厚長大なものほど、日本の高級製品が輸出されているということでこざいます。
 貿易だけでなくて、九州の地場企業の進出件数も累計で200件近くになっておりまして、そういう企業が部品調達あるいは製品を再輸出するというようなことで、物流はますます九州と中国の間で大変活発になってるということはお分かりになると思います。
 
●コンテナ取扱量
 コンテナの取扱量についても、これも皆さん数字はご承知だと思います。世界ランキング、米を追い抜いて中国がNo.1だという中で、アジアの港が上位を全部占めています。釜山とか高雄とか東アジアの物流が活発になっている訳ですが、中国国内を見ても上海、深川、青島の伸びが非常に大きいというのがわかると思います。
 
図4 2003年コンテナ取扱量
 
 このような物流の需要、コンテナ化、大型化に対応しまして上海、大連、青島、廈門、深でも交通インフラ、港湾インフラが次々と拡大しているということです。どこもアジアのハブ、あるいは国内の中継港を目指して大規模な投資をしている。様々な自由化の政策あるいはWTOの加盟で、物流が非常に勢いづいているということです。
 
●中国の経済事情
 中国の経済事情は、ここであらためて紹介する必要はございませんが、人口は13億人。GDPが日本の大体4分の1位、世界で7位です。
 ところがGDPの換算というのは時価の米ドルのレートで比べます。日本の円は少し高すぎる、中国元は評価が安すぎる、切り上げろということで、これを単純に比較しても、実態が必ずしも反映されないので、購買力平価の指数で換算すると、もう中国は世界で第2番目の経済力ということになるという見方もあります。日本が3兆ドル強というのに対して、中国は購買力平価でいうと6兆ドルを越えています。ところがこれを総人口13億で割るとどうしても一人当りのGDPは1千ドルということになり、ようやくひもじい状態から抜け出したというのが統計上の話でございます。
 しかし、ここ20年近く、平均で7%以上の成長をしておりまして、一人当りのGDPはまだまだ発展途上国レベルですけれども、沿海部ではGDPが一人当り3千〜5千米ドル、つまり豊かになってマイホーム、マイカーブームも起こり、海外旅行に行く人達も出ています。
 
●中国特需
 この半年位でしょうか、中国特需という言葉を時々耳にされると思います。日本が非常に景気が悪い中で、特需に見えるほど、SARSが終わった後の対中貿易、特に輸出が非常に伸びているということでございます。日本側と中国側の統計が違うのはご承知のとおりですが、日本側の統計でも今年の2月に初めて単月で黒字になったということで、日本の中国向け輸出が、急速に増えました。特に鉄鋼、セメント、建材、建築機械、電器などが中国に輸出されるようになりました。
 
図5 中国特需
 
 海運業界も中国特需で、非常に業績を上げているということで史上空前の好決算をあげている所もあるということです。荷動きも活発化している、運賃も高騰している、船も非常に逼迫しているということです。
 つい1年前、SARSで中国に行けない、来てもらっても困ると言っていたのですが、それまでずっと日本のデフレは中国が輸出してたという、いわゆるデフレの元凶、中国脅威論からいつのまにか、アメリカと並んで日本の輸出景気を支える国といわれるようになったわけです。







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