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●中国経済の深刻な問題点
 ところが、今申し上げたようなことが光の部分だといたしますと、影の部分が同時に存在しているのが中国でございまして、ご承知のとおり中国は過剰投資だと言われていまして、今年に入って鉄鋼、セメント、アルミ、不動産の4分野についてはかなり厳しい規制を始めております。
 
図6 中国の経済事情
 
 それから人民元の切り上げの問題についてもずっと議論をしております。金利が2回上げられたのもご承知のとおりで、中国政府はソフトランディングを目指していまして、少しずつ投資の抑制をしているという状況です。
 中国は沿海と内陸、農村部と都市部の格差が大きいと言われていますが、格差というのはどこの国にもあることでございます。今、一部の農村で暴動が発生しているという報道がありますが、やはりこれは農村部における腐敗とか汚職、もちろん都市と農村との格差もあるんですけれども、いわゆる賄賂だとか、国の金、組織の金を使って、それを隠匿する人達に対する収奪される人達の、非常な憤りがあるわけです。
 特に農村部は乱開発で、開発、開発と年間300元とか400元位しか手取りがない人達の5年分位の年収である1500元位で土地を収奪された人達が生産手段も持たずになげだされた形になり、不満をもっていると言われているわけでございます。
 この汚職だとか腐敗の問題、再分配の不公平というのは、今後、適切な対応をとらなければ、私はオリンピック、万博を待たずにかなり大きな問題になると実感しております。単純に2010年までは、高度経済成長が続くと考えるのは安易すぎると思います。
 全世界のエネルギー資源を中国が吸いよせているといったのは、北京の商社の駐在の方でして、中国はありとあらゆるエネルギーを飲み込んでいるというわけでございます。エネルギーの逼迫です。
 環境問題も単なる政治課題ではなくて、本当に深刻になっていて、ようやく中国はこの問題にも本腰を入れそうだということです。
 朝鮮情勢は、中国にとっても隣国の核の保有というのは非常に神経を尖らしていまして、このリスクをどうやって無くすかが、6カ国協議での主体的な動きにもつながっています。
 
●日中間の諸問題
 日韓関係はヨン様ブーム、あるいはサッカーの共同開催で関係が明るくなってきているんですが、日中関係は経済分野を除いて、非常に厳しい状況になっています。「政冷経熱」という言葉は、中国では政治は冷たく交流は少なく、経済は活発だという言い方をしています。これらの問題をひとつひとつご説明をしたら時間がありませんが、ただひとつ言えるのは、日本の方はどちらかと言うとひとつの問題を全体の問題として、好き嫌いがストレートに反映してしまうのですが、中国の人達というのは靖国は靖国、ビジネスはビジネスと非常に複雑な意識を持ってまして、我々みたいに「ひとつ中国は云々」と全体イメージで嫌悪感を感じるのとは少し違うようです。私はこの問題は、長期的には楽観してますが、短期的には冷ややかな状況がしばらく続くかなという気がいたします。
 
●深刻なエネルギー不足
 実は昨日まで電力会社の幹部の皆様と中国の北京と湖北省、上海に行ってきました。今、中国は電力不足が大変な問題になっております。
 電力、エンジニアリング業界の皆様方と訪中して、つぶさに中央政府、地方政府をご案内いたしまして、いろいろ電力事情について調査をしてまいりました。その中で電力不足、あるいはその後の環境問題についてすごくチャンスがあるだろうということで、中国に出てビジネス展開しようということで九州は非常に進取の精神を持ってるなということを感じております。
 
●深刻な環境汚染
 それと環境汚染です。これはもう地球規模でして、中国も大変な問題になってます。私共が北京を離れて湖北に行った翌日から、中国全体が大変大きな霧で3日間マヒしてしまいまして飛行機が飛べない状況になったそうですが、これも多分、大気汚染と関係するだろうと言われています。酸性雨の問題もすごく深刻です。排水問題、ごみ問題というのは報道には出ませんが、本当に深刻な問題で悲鳴をあげつつあります。
 来年は経済も調整局面が続き、環境問題についても本腰を入れるということで、今までの高度成長のひずみを一気に調整するという年になりそうでして、ここに九州のチャンスもありそうです。中国の大気汚染などいろいろなことが九州に直接はね返ってきているのが現実です。それは中国が原因と一言では言えない訳ですが、世界的な枠組、京都議定書とかCDM(クリーン開発メカニズム)クレジットとか、中国政府は非常に認識を持ち始めています。
 
図7 深刻な環境汚染
 
 図7は北京の天安門に通じる長安街というところの写真ですが、5〜6年前までは自転車の洪水というのが北京名物でしたが、今はほとんど自家用車です。若い女性も1人で運転していたり、交通渋滞がひどくて、まったくアポイントの時間が読めない位、大都市は自家用車がすごくなっていて、昔の自転車にとって替わりつつあります。
 
●中国の対日新思考外交
 今年の4月に日本国際貿易促進協会のミッションが派遣されました。団長は橋本龍太郎さんで、日本の中央財界の皆様方をはじめ、船社、海運、物流あるいは関連の企業のトップで構成された150人規模の大規模ミッションで、日本の民間の訪中団としては最高レベルのものですけれど、今回、自治体の長として初めて、山崎福岡市長が副団長として参加されました。私も団員として参加させていただきました。
 東北3省全部回りまして、各省の省長や最高幹部の方とお話をして政策の一番新しい情報を聞いてきました。ポンピングブレーキという言葉を使い、この4月から段階的に軽く軽くブレーキを踏みながらソフトランディングをするということを盛んに強調していました。
 北京の釣魚台迎賓館でレセプションがありまして、中央にいるハンサムな方が王毅さんといいまして6カ国協議のホストをずっと務められた方で、現在、駐日中国大使で、日本語が堪能な知日派の方です。
 
図8 中国の対日新思考外交
 
●中国の物流をめぐるトピック
 今月11日に中国がWTOに入って3年になるということで、中国の商務省が物流分野への外資企業の参入をいよいよ認める方針を固めたという情報がございます。道路や船舶代理、貨物管理、運輸関連の業種にも外資企業の参入をこれから認めていくということで、これによって中国の国内企業が非常に打撃を受けます。特に陸送分野が、省別とか都市別で営業範囲が限られていまして、非常に規模が小さいということで、ここのダメージが大きいかも知れません。
 一方、海運関係や航空貨物等の全国的なネットワーク、特に海外と取引きをやっているところは、これでますますいろんな所との提携や再編が進んで競争力を強化してくるだろうというふうに言われています。
 それともうひとつ、香港の2020年までの港湾の計画が暴露されたとの報道がありました。大型バースを増設するというハード面だけではなくて、深港とか珠海港、黄埔港との連携、特に華南の貨物を取り込むために、コストを3割以上減らすという大鉈を振るうような計画が公に暴露されたという情報が入っておりました。







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