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4. バリアフリー化の現状と問題点
 ここでは、壱岐市における交通網と外出行動の特徴を踏まえ、壱岐島(本島)内から福岡市内への外出と、大島・長島・原島の各島から壱岐本島の郷ノ浦市街への外出を例として、その外出行程に即して、バリアフリー化の現状と問題点を整理する。
 
(1)壱岐島内〜福岡市内(博多〜壱岐〜対馬航路)
 壱岐島内から福岡市内へ外出する際、午前中に博多港に着く便には、郷ノ浦港発のフェリー(9:25着)とジェットフォイル(10:30着)、芦辺港発のジェットフォイル(10:10着)があるが、特に高齢者の通院や買い物等においては、最も到着時刻が早く、運賃が安いフェリー便の利用が多い。一方、午後に博多港を出発する便は、郷ノ浦港行きのジェットフォイル(15:35発)もあるが、日中〜夕方のフェリー2便(13:45発と18:45発)はいずれも芦辺港行きであることから、帰路は芦辺港利用となることも多い。
 そこで、ここでは、往路に郷ノ浦港を利用し、帰路では芦辺港を利用するケースを想定して、外出経路に即したバリアフリー化の現状と問題点を整理する。
 
(1)郷ノ浦港への陸上交通
■自家用車利用が中心、優先駐車スペースの利用マナーの問題あり
 壱岐においては港湾までのアクセス手段として自家用車の利用が中心であり、車いす利用者をはじめとする身障者についても、家族や知人等が同伴して自家用車利用でアクセスする場合が多いと思われる。
 郷ノ浦港では、駐車場のターミナルビル近くに身障者用駐車スペースが設けられているが、一般利用者が停めてしまっていることも多い。駐車場全体で全く空きがないことは少ないことから、乗船までの時間がない場合などに身障者用駐車スペースに車を停めてしまう利用者がいるものと考えられる。
 
■各港へのバス路線はダイヤも連携しているが、利用者は少ない
 壱岐島内の各港に乗り入れる路線バスは、フェリーやジェットフォイルのダイヤに合わせて運行されている。港湾へのアクセスは自家用車利用が中心のため、これらの路線を利用する人の絶対数は少ないが、利用者には自家用車を運転できない高齢者等のほか、島外から仕事などで来た人の利用もある。
 
■ワンステップバス導入時の取り組みと効果
 島内の路線バス車両29台(大型18台、中型4台、小型7台)のうち、2台がスロープつきワンステップバスである。利用客、特に高齢者からの評判は大変よく、事業者ではどの路線・便を走るか決めていないものの、利用したい場合は事前に電話連絡があれば、希望の路線に配車するようにしている。
 事業者では、ワンステップバスの導入にあたり、全運転手に対して、その利用方法や利用客への対応について、実際に車いすを使用するなどして講習を実施したほか、病院職員を中心に介助などを行う団体や、車いす利用者の家族会などを対象とする講習会も行った。
 問題点としては、大人の車いす利用者が乗降する場合、スロープを押し上げるのに乗務員のほかにもう1人程度が必要となること、特に降車時には傾斜がきつく危険を感じる場合があること、島内の道路は道幅の狭いところが多くスロープ板を出すと後続車が通れなくなる場合があることなどがあげられている。
 また、各港に乗り入れる路線には小型のマイクロバスが配車されることが多く、ワンステップバスが配車されることは少ない。
 
■バリアフリー化車両の普及には時間を要する
 壱岐においても、人口減少や自家用車の利用拡大等に伴いバス事業の経営状況は厳しく、ここ2年間は新しい車両が導入されていない。車両購入に対する補助金も削減されてきており、事業者の自己負担が大きくなってきていることから、今後も新車の購入は経費負担の問題が大きく、バリアフリー化車両の導入拡大には時間がかかるものと考えられる。
 こうしたことから、事業者としては、乗務員への教育を徹底させることが重要と認識されている。
 
(2)郷ノ浦港の旅客船ターミナルおよび乗下船
■郷ノ浦港のターミナルビルはバリアフリー化対応済み
 郷ノ浦港のターミナルビルは1993年に建設されたもので、ターミナルビルの出入口から乗船券販売所までは上下移動も段差もなく、身障者用トイレも設置されている。
 
身障者用トイレ
 
バス停と出入口
 
コンコースと乗船券販売所







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