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私はこう考える【公営競技・ギャンブル】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/07/07 毎日新聞夕刊
[スポーツここが知りたい]中央競馬 “成長神話”に陰り 震災などが影響
 
◇春季売り上げ、前年比減 スター不在も原因に 質の向上が長期的人気に
Q 中央競馬の人気に陰りが見えると言われますが、現状はどうなっているでしょうか。
A 中央競馬の年間売り上げは、日本中央競馬会(JRA)が発足した一九五四年以来、一貫して伸び続けてきた。昨年1年間で3兆8065億円余を記録し、発足当初の約339倍。八四年と比べても2.5倍強に膨れ上がってきた。
 だが、今年はそんな“成長神話”が、一つの区切りを迎えることは避けられそうもない。一月十七日の阪神大震災、一連のオウム真理教事件は、競馬にも暗い影を落とした。
 中央競馬は六月の第二週で「春季番組」を終えた。この時点での総売り上げは1兆7637億2740万円余で、昨年の同じ時期を金額で約733億5000万円、率で4%下回った。ダービー、オークスや宝塚記念など7つのG1競走が組まれたが、売り上げが前年を上回ったのは安田記念、宝塚記念だけだった。実際は、昨秋のG1シリーズでも秋の天皇賞や有馬記念など4レースで売り上げが前年割れを起こし、不振の兆候は表れていた。
 過去40年間、好不況の波の中でも、成長を続けてきた中央競馬。九〇年以降のバブル崩壊で、他の公営競技は打撃を受けたが、JRAだけは、昨年も前年を1.6%上回っていた。
 だが、大震災では、被災地・兵庫県宝塚市にある阪神競馬場が、施設の倒壊や馬場の亀裂などで、十二月の再開が決まったばかり。また、神戸の場外発売所(ウインズ)も五月まで業務がストップしていた。
 震災の売り上げへの影響は、JRAでも正確には把握していないが、近畿地方の5つのウインズが前年比350億円減、京都、阪神両競馬場での場外発売高も615億円減。京都の5開催の売り上げは、昨年の阪神5開催の売り上げを上回ったが、ネットの影響額は約720億円と推定できる。
 一方、関東では地下鉄サリン事件をはじめとする一連のオウム真理教事件の影響が出た。17のウインズの売り上げは289億円減少。無差別テロへの不安から、長時間、ウインズなどに滞留しなくなったファンが増え、購買額も落ちた。
 また、例年ならG1競走の前景気を盛り上げていたスポーツ紙が、オウム関連記事で埋め尽くされたことも響いた。ダービー直前の五月二十二―二十七日までの6日間、関東のスポーツ6紙の一面のうち、中央競馬の記事は13回で、昨年の28回から激減した。
 だが、外部環境だけが原因とは言えない。強い馬がいてこそ、メディアの扱いも大きくなるが、今年はスター不在だった。昨年の四冠馬ナリタブライアンが故障で休養。四歳馬最強と見られたフジキセキも、皐月賞前に屈けん炎で引退。公営・笠松から桜花賞、オークスに挑んだライデンリーダーの健闘はあったが、牡馬クラシックがやや低調な感は否めなかった。
 JRAが初めて経験する苦境。徳永邦彦広報室長は「危機感は持っているが、今は何が妙案かを考えている段階。興行は人気が落ちると、歯止めがかからなくなる。早く手を打たねばと思っている」と話す。
 ただ、競馬人気がこのまま下降線をたどるのか、と言えば、必ずしもそうは言えないだろう。
 今年一月にアスキー社が発売した競走馬を育てるゲームソフト「ダービースタリオン3」は、同社で初めて、単品で公称120万本売れ、ガイドブックまでがベストセラーの上位に入った(東販調べ)。
 このゲームは、相当にマニアックな血統の知識を駆使して、画面の中で強い馬をつくるのがコンセプト。娯楽としての競馬が飽きられたわけではなさそうだ。ただ、現実の競馬が盛り上がるには、ゲームをしのぐようなスターの存在が欠かせない。
 ナリタブライアンの復帰や、三歳世代の強い馬の台頭が待たれる。
 単に売り上げだけを考えれば、JRAの競馬場やウインズのない県は全国に34もあり、電話やパソコン通信を利用した在宅投票の普及が進めば、増加の余地は残されている。
 しかし、長期的には、馬や騎手、調教技術のレベルを上げ、競馬の質を高めることが、長期的な人気浮揚に結び付くのではないだろうか。
(野元賢一)
◇主なG1競走の売り上げと前年比◇
桜花賞
304億2024万 ▼ 4.7%
皐月賞 334億0989万 ▼13.4%
天皇賞・春 363億3875万 ▼ 8.8%
安田記念 277億7626万 23.5%
オークス 347億6300万 ▼ 3.2%
ダービー 521億3437万 ▼ 8.2%
宝塚記念 348億1272万 12.0%
天皇賞・秋 421億0587万 ▼ 1.9%
菊花賞 419億5040万 7.6%
エリザベス女王杯 378億5782万 9.7%
マイルCS 248億9181万 8.2%
ジャパンC 298億3504万 ▼16.0%
スプリンターズS 219億0422万 ▼ 1.9%
有馬記念 746億0126万 ▼ 5.4%
(宝塚記念までは今年の実績、以下は昨秋。1万円以下切り捨て。▼は減少)
 
 
 
 
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