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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/10 毎日新聞夕刊
[特集ワイド2]今週の「異議あり!」 国連の万能視
明石康・元国連事務次長
◇米政権が軽視するのも問題だが・・・限界を知ったうえで理想の形に育てよう
 日々多くの死傷者が出ているイラク戦争の報道に接するたびに、国連がもっと介入できなかったかと思う。「戦後」を見据えた議論が始まっても、アナン事務総長の姿勢はどこか心もとない。国連事務次長を務めた明石康さん(72)は多くの日本人が持つ「国連万能」の考え方をいさめたうえで、「私たち自身が国連を理想の形に育てていく気概を持たなければ」と訴える。
【三角真理】
 
<米国のイラク攻撃を止めることは、アナン事務総長にはできなかったのでしょうか>
 ◆彼は今回、国連を通じた解決を図るため、水面下で行動したと思います。しかし、米国は、すでに中東地域に軍事力を集結させるなど、国連の解決を待てるような状況ではなかった。米国が攻撃をする前の3月10日、「安保理の支持がない軍事行動は国連憲章に違反する」と婉曲(えんきょく)的ながら攻撃準備を進める米国を批判しました。精いっぱいの抵抗だったと思います。困難な状況の中でよくやっていると思います。
 彼は国連事務局のトップですが、実権はそれほど大きいものではありません。国際平和や安全の問題に関しては、基本的には安保理の公僕という限界のある立場です。
 
<そもそも国連事務総長の権限とは>
 ◆事務総長については、国連憲章の97条から99条に規定されています。97条では国連の行政面での最高責任者であること、98条では安保理や総会から委託された任務を行うこと。そして99条では、私はこれを「正宗の名刀」と呼んでいますが、平和や安全に関係することに安保理の注意を喚起することができるとうたっています。ただし、これを頻繁に“抜いて”はいけない。国際情勢をよく見て、自分に具体的で建設的な役割が果たせると判断した時に使うものです。なぜなら安保理は、事務総長が言ったからといって従わなければいけないわけではない。安易に「名刀」を抜き、それが何の役割も果たせないようなことになれば、99条は、名刀とは程遠い「ただの刀」になってしまうからです。
 
<難しい立場だと思いますが、事務総長とはどのような姿であるべきなのですか>
 ◆国際政治の分析が正確で、見解が公正、中立であること。それでこそ加盟国から信頼を得て、リーダーシップと影響力を発揮できるのです。彼の影響力は大変、微妙なところで測られています。事務総長とは道義的、心理的な影響力を持つ存在です。独自の軍事力や経済力はないのです。何が出来るのか、みずから客観的に分析して動かなければなりません。
 
<それでも紛争解決の組織として国連に期待はあります>
 ◆国連は、「世界政府」でも「世界連邦」でもないのです。加盟国政府の上に立ち、強制できる力はない。にもかかわらず、日本人には「国連に祈っていれば平和がくる」と誤解しているところがある。
◇日本人は知恵を出して
<では国連はどのようなものと考えたらよいでしょうか>
 ◆国際世論のバロメーター(指標)を測る場であり、国際社会のルールづくりの中心になるところ。そして国際社会が危機に陥り、行き詰まった時にイニシアチブをとる組織です。各国政府の同意に基づき運営される国際機構です。
 その中で、やはり米国の存在は大きい。米国は経済、政治、軍事、そして文化に絶大な力を持ちます。米国なしには世界は動かない。米国が国連内にいるからこそ、国連が力を持ちうるというのが現実です。しかしながら、今の米政権があまりに国連を軽視している。これが問題なのです。
 
<ジレンマを抱えた組織なのですね>
 ◆国連が出来て57年。この間常任理事国5カ国の顔ぶれは変わらず、見直す必要もあるでしょう。しかしこれは長期的な課題です。また5カ国だけが「拒否権」を持つことを問題視する声もありますが、拒否権は一つの安全弁なのです。というのは、国際連盟の時代に、自分の意見が通らないといって日本やドイツが脱退するなどして、結果的に組織が弱体化した。拒否権はこれを防ぐ、いわば、国連内での大国のガス抜きの意味があります。
 国連が完全なものでないとはいえ、今ある安保理を活用していくという視点こそ重要です。
 
<では、国連に何を期待すべきなのでしょう>
 ◆国連の限界を知ったうえで、具体的にどのような行動がとれるのかを、現実的に主体的に考えることが必要です。理想に近い形に私たち自身が育てていく、と考えることです。「多額の国連分担金を払っているのに安保理の常任理事国にしてもらえない」「ODA(政府開発援助)の額が大きいから減らそう」という発想ではなく、例えば、平和を定着させるために、より賢いお金の使い方があるのではないか、地球温暖化をどうすれば食い止められるかなどを地道ながら一生懸命考えることです。平和を具体化する方法は一つではありません。
◇明石康(あかし やすし)
1931年生まれ。
東京大学教養学部卒業。バージニア大学大学院修了。
日本国連代表部大使、国連事務次長、国連カンボジア暫定統治機構代表、事務総長特別顧問などを歴任。現在、東洋英和女学院客員教授。
 
 
 
 
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