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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/01/31 毎日新聞朝刊
[平和の世紀を]考える・語る・創る 国連の活動と日本 明石康氏に聞く
◇元国連事務次長、明石康氏に聞く
 昨年末の国会で、停戦監視業務などへの参加凍結解除と、派遣隊員の武器使用基準緩和を柱とする改正国連平和維持活動(PKO)協力法が成立した。「国連第一主義」を掲げる日本は、国連の活動にどうかかわっていくべきなのか。国連事務次長やカンボジア暫定統治機構の国連事務総長特別代表などを務めた明石康・日本予防外交センター会長に聞いた。
【鯨岡秀紀】
◇平和維持目的
 ――国連の活動というとPKOが浮かぶ。PKOの歴史と現状は。
 ◆国連憲章には何も規定がないが、1948年にイスラエルとアラブ諸国の休戦協定を監視するために国連休戦監視団が、56年のスエズ運河危機では中東国連緊急軍が派遣された。この成果から、PKOは紛争の平和的処理、国連憲章第6章の平和的解決の一つの道具として役に立つということがわかってきた。
 90年代に入り、カンボジアやモザンビークなどで、それまでの制止的な役割よりも、国づくりの役割、暫定的な統治の権限を与えられた。両国では成功をおさめたが、93、94年ごろから、ユーゴスラビアやソマリアでは、内戦の真っただ中に投入され挫折した。存在する平和を維持する役割はできるが、存在しない平和を造成するのはPKOの力に余ることだった。
 ――PKOに対する期待は大きいが。
 ◆PKOは経験を経て形を変え、進化してきたが、万能薬ではない。武力行使を含む国連憲章第7章型の行動は高望みにすぎる。ただ、今までのような装備も不十分で訓練もされていない寄せ集めの軍隊では困る。より装備や訓練を完備し、90年代の民族紛争関連でも使えるような6・5章型(国連憲章6章と7章の中間的という意味)のPKOを目指そうとしている。
◇日本の遅れ露呈
 ――PKO法改正をどうみるか。
 ◆歓迎するが、国際常識に属することで、むしろ日本が今までどれだけ遅れていたかを示している。PKOが国連憲章6章に根ざすものである以上、日本国憲法に矛盾するものではないと思う。
 ――今後も国連軍ができる見通しはなく、多国籍軍も選択肢という状況が続くが、日本も多国籍軍に参加すべきか。
 ◆今後10年や20年は、国連軍は絵に描いた餅にすぎない。戦後の日本には特殊な状況があり、必ずしも参加すべきだとは言わないが、平和、平和と祈っていれば平和が来るという甘いものではない。国連は棚からぼた餅が落ちてくるような機構ではなく、日本も汗を流して主体的に参加し、加盟国が一緒になって作る機構だ。そういう発想が日本の識者にはあまりにも少なかった。
 ――日本では、軍事なしで非軍事のみの貢献がよく言われるが。
 ◆非常におかしい。あり得ない。すでに92年、カンボジアに自衛隊を送っている。後方支援とは言いながら、国際的には自衛隊は軍隊としてしか認められていない。軍事力を一国が使うか、国連の名のもとに使うかという大きな違いをわきまえるべきだ。国連憲章の基本的な精神は、各国が勝手に武力ないし軍事力を使うならば国際平和は危うい状況になってしまうから、そういうことはやめようということ。国連加盟国、国際社会が共同で行使する軍事力が集団的安全保障だ。
 ――国連に世界政府というイメージを持っている人が多いのでは。
 ◆国連軍はまさに世界政府が前提だ。世界共通の問題意識、価値観ができないと、国連軍もできないし、世界政府も生まれるはずがない。国家主権を前提とした世界では世界政府はあり得ない。国連の理念と現実を混同しないで、現実をきちんと見つめつつ、理念を忘れないことが大事だ。
 日本では理念が情緒的にとらえられ、国連の理解の仕方も、国連憲章の解説みたいなものが多い。国連は戦後政治によっていろいろ変容しつつある。現実の国連と、サンフランシスコの国連創設会議で考えられていた国連には大きなギャップがある。
◇「国連第一主義」
 ――日本人、日本政府はどんなことをしていったらいいのか。
 ◆まず、「国連第一主義」という看板を下ろした方がいい。日本は実質上、自由主義諸国、欧米諸国との協調を一番大事にしてきて、国連主義は当初からかなりスローガン化していた。日本は日本なりに米国との関係を重視しつつ、その枠内で広島、長崎の経験に基づいて軍縮へのキャンペーンなどはしてきたが、口先で唱えるだけで、実行する意思がないならやめた方がいい。しかし、理想を実現するためのたくましい方法論、戦術論を真剣に国民の間で論議するなら素晴らしいと思う。
 ――理想の実現へできることは。
 ◆PKOへのもっと積極的な参加。PKOに出している人の数は世界で61番目で、恥ずかしい限り。国際的な平和づくりや調停にも積極的に加わるべきだ。貧富の格差のない国際社会の構築に向けた政府開発援助(ODA)の積極的活用▽軍縮や核不拡散を目指したより一層の粘り強い努力▽アジア諸国とのより強固な信頼関係の構築▽ときとして一国主義に走りがちなアメリカとの積極的な対話――などいろいろなことがあると思う。
 ――日本の常任理事国入りについては。
 ◆日本は常任理事国になるべきだと思うし、そのことで安保理も強化されると思う。しかし、分担金が多いから常任理事国になって当然だという考え方にはくみしない。GNP(国民総生産)が大きい国が分担金を多く払うのは、お金持ちが所得税を余計に払うのと同じで、当たり前。
 日本が国際平和と安全のために、何ができるかはっきりしないまま常任理事国になっても、地位追求者で終わってしまう。日本人一人一人がもっと豊かな国際知識を持つべきだ。スポーツ欄が国際欄よりも多いような新聞を持つ国は、常任理事国になってもどれだけのことができるのか不安を持っている。
◇明石康(あかし やすし)
1931年生まれ。
東京大学教養学部卒業。バージニア大学大学院修了。
日本国連代表部大使、国連事務次長、国連カンボジア暫定統治機構代表、事務総長特別顧問などを歴任。現在、東洋英和女学院客員教授。
 
 
 
 
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