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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/10/25 読売新聞朝刊
[国連・幻想と現実](1)「機能不全」の安保理(連載)
 
 「国際社会が一致してイラク国民を支援していく意思を示したと言える」
 米国などが、戦後イラクへの多国籍軍派遣と復興支援の拡大を狙って提出した決議1511が、国連安全保障理事会で全会一致で採択された今月十六日、ネグロポンテ米国連大使は議場で、各国大使に言い聞かせるように演説した。
 これに対しドラサブリエール仏大使は「この決議はもっと良いものとするべきだった」と憮然(ぶぜん)とした表情で発言した。さらに、安保理が終了するやいなや、仏露独の三か国の大使は共同声明を発表、米国が望んだ派兵も追加支援も一切行わない方針を公表した。
 「加盟各国に支援を要請する」と明記した決議に賛成しながら「我関せず」とする三か国の姿勢に、早々と支援を決めた日本の外交官は「あまりに節度に欠ける」と不満をぶちまけた。
 イラク戦争では、事実上、単独での武力行使に踏みきり、一時は政権内で国連無用論さえ出た米国。だが、戦争終結から五か月たち、イラク復興の遅れが顕著になると今度は安保理決議を取りつけ、人や資金の調達を目指す。国連や国際社会は圧倒的な米国の力に翻弄(ほんろう)されているように見える。
 対する仏露独などの主要国にとって安保理は、米国の一極支配に多国間主義で対抗するための最後のよりどころとなっているとも言える。
 国連安保理には、「国際社会の平和と安全」を担う集団安全保障体制の頂点としての役割以外に、国益を背負った各国がしのぎを削る国際政治の主戦場としての側面がある。しかし、「あまりにも後者の色合いが濃くなって、決議づくりが政治的な駆け引きに堕するようだと、ルールそのものが軽視され、安保理は機能しなくなる」(主要国国連大使)のは避けられない。
 第二次世界大戦の惨禍を二度と繰り返さないために発足した国連の安全保障体制は、冷戦時代、主にソ連の拒否権の乱発により満足に機能しなかった。
 冷戦崩壊直後の湾岸戦争(一九九一年)では国連を軸とした国際社会の協調ぶりが際だったものの、一時的なものに終わった。イラク開戦をめぐる安保理の「機能不全」によって、「国連による協調」への楽観論は、“幻想”と化した。
 そして今、超大国(米)と大国連合(仏露独)の対立が先鋭化し、安保理決議の形骸(けいがい)化が明らかになったことで、「国連が創設された一九四五年以来の危機」(アナン事務総長)との認識が広がりつつある。
◆世界的問題、解決困難に
 安保理の権威失墜を目の当たりにした国際社会は、国連に背を向け、単独防衛や二国間同盟などへ重心を移すのではないか――。
 アナン事務総長は、こうした危機感を背景に、九月の国連総会一般演説の冒頭、国際安全保障上の脅威や安保理改革などに関する「諮問委員会(ハイレベル・パネル)」を設置し、一年以内に意見集約する方針を示した。今のところ、国際法学者など専門家を集めた「賢人会議」的な組織となる予定だ。米国は協力を表明、欧州各国、日本も高い関心を寄せている。
 これは、米同時テロ後の世界で明らかになった新たな問題へ対応する試みだ。国連は、テロ組織による大量破壊兵器使用をくい止めることが出来るのか。米ブッシュ政権は、テロ組織やテロ国家には先制攻撃も辞さないとする新しい安保戦略「先制攻撃理論」を採用した。が、仮に核兵器保有国のインドとパキスタンが、互いに相手に対しそれを適用したら、核戦争ぼっ発は必至ではないか――。
 この問題をめぐって米国ではすでに議論が始まっている。米国際法学会のアンマリー・スローター会長が、ある国に対する武力行使を安保理が容認する基準として、〈1〉大量破壊兵器を所有ないし所有しようとする明確な証拠がある〈2〉深刻な人権侵害が行われている〈3〉他国への侵略意思を有している――の三点を明確化しようと提案したのもその一つだ。武力行使の基準をはっきりさせることで、「先制攻撃理論」と、安保理が担う集団安全保障体制との折り合いを付ける試みだ。
 しかし、冷戦崩壊後、国連安保理の枠組みにとらわれない国際社会の共同行動が目立ってきている。コソボ紛争(一九九九年)では、G8(主要八か国)が事実上の決定機関となり、ユーゴスラビア空爆を実施した。北朝鮮の核問題でも、解決の枠組みは少なくとも今のところは、日本、韓国を含んだ六か国協議の場だ。
 日本国内にも変化が生じている。これまで「日米同盟」「アジア重視」とともに日本外交の基軸とされてきた「国連中心主義」だが、国連の機能不全を踏まえて、日米同盟重視に軸足を完全に移すべきだとする考えが、自民党を中心に広がってきている。
 背景の一つに、システムとしての国連が創設から五十年以上を経た現在の国際情勢に追いついていない現実がある。第二次大戦の戦勝国として安保理常任理事国となった五か国のうち、米国と並ぶ超大国だったソ連は崩壊してロシアに代わり、英、仏も国際的地位を低下させた。一方で、日本、ドイツが経済大国に成長、インドなどの地域大国も生まれている。五か国が拒否権などの特権的立場を保持する根拠が希薄になるなど、国連の限界が明らかになってきた。
 そして唯一の超大国・米国は、国連を利用できるときは利用し、安保理の承認が得られない場合は、利害を同じくする国と「有志連合」を作って軍事行動に出ることも辞さない姿勢だ。
 「国連だけが持つ正統性と、米国の持つ力と指導力が一体化しなければ、地球規模の問題は解決できません」
 アナン総長は二十一日、米ピッツバーグでの演説で、国連への協力を呼びかけた。そこには、米国の圧倒的な力に翻弄(ほんろう)されながら、その「指導力」なしには何も成し遂げられない国連の抱えるジレンマが強くにじみ出ていた。
(ニューヨーク 勝田誠)
 
 国際社会への重大な脅威が相次いでいるにもかかわらず、国連が十分機能していない。自らの限界を露呈しているともいえる状況に、「無用論」さえ聞かれる。日本や国際社会の安全にとって国連は必要で頼りになる存在なのか。国連の現実を報告する。
 
 
 
 
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