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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/11/17 読売新聞朝刊
[政治考現学]国連安保理 理事国・日本に重責 「非常任」最多8度目
 
 この秋、国連安全保障理事会非常任理事国に選出された日本の任期が、来年一月一日からスタートする。五つの常任理事国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)を除けば、今回で安保理入り八回目という日本の記録は加盟百八十五か国の中でも最多だ。今度も、過去六回選出のインドを選挙で破った上での安保理入りだが、これによって日本の国連活動はどう変わり、どのような意味があるのか、などを探ってみた。
(政治部 山岡 邦彦)
〈舞台裏で決定〉
 ニューヨークのマンハッタンの東側、イースト・リバーに面した三十八階建ての国連本部。
 外交団が出入りする国連総会の建物をエスカレーターで上がり、左手の国連総会本会議場とは反対側の右手の回廊を赤じゅうたんを踏みながら突き当たりまでいくと、安全保障理事会の会議場がある。緊急事態が起きれば、深夜、早朝を問わず外交団と報道陣が集まる、国連本部で最もホットなスポットだ。
 日本の安保理入りは、九二―九三年以来。その時、日本の代表として連日のように安保理会議場に通った波多野敬雄前国連大使(現フォーリン・プレスセンター理事長)によれば、「安保理はディベート(討論)の場ですよ」。
 ただし、その場は、テレビ映像でもおなじみの会議場で開かれる公式会合ではない。会議場の手前にある別の部屋で行われる「非公式協議」だ。事務局が議事録を取ってはいるようだが、各国大使のもとに配布もされず、公表もされない。
 「公式協議は紙を読み上げ、投票を行い、記録を残すところ。すべては、コンサルテーションと呼ばれる非公式協議でのディベートでこなされ、『これでいこう』と決まったことだけが公式会合に上がる。時間的に見ると、非公式協議はほとんど毎日開かれ、短くて二時間、長くて四、五時間。公式協議は一週間に一回くらいで、時間も一、二時間」(波多野氏)。安保理の記録として表に出るのはまさに氷山の一角、その何倍もの事前の舞台裏での折衝に支えられている、安保理の実態が浮かび上がってくる。
〈廊下トンビ〉
 理事国以外の加盟国にとっても、安保理の動きは気になるところだ。冷戦終焉(しゅうえん)後、地域紛争が頻発する中で、安保理の決定が名実ともに力を持つようになってきたことが大きい。
 「加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安保理に負わせ、安保理が決定したことを履行することに同意する」との趣旨を規定している国連憲章はもとより、湾岸戦争を始めとして、安保理の決定を背景とした紛争収拾の動きが現実のものとなってきている。
 〈1〉非公式協議を行う小部屋の手前の控室に待機〈2〉出てきたメンバーに接触〈3〉議論の行方をできるだけ早く知る――重大な事態に対応し、安保理の非公式協議が開かれた時の理事国以外の国の外交団の行動パターンは、ざっとこんなものだ。
 「国連には二つの種類の市民がいる。物事を決める十五人(安保理理事国代表)と、決められたことにただ従う百七十人だ」という、ある西欧の国の大使のような指摘もある。
 九〇年八月、イラク軍のクウェート侵略に端を発した湾岸危機発生の際、日本は安保理メンバーではなかった。イラク制裁の行方、求められる対応――情報を求め、日本の外交官も国連本部の中を走り回った。
 当時、国連代表部にいた外務省中堅幹部は「あのときは大変だった。どうなっているのか逐一情報を取るため、廊下トンビの毎日だった」と情報収集に苦労したと述懐する。
〈PKO急増〉
 冷戦時代、東西対立のせいで機能不全も見られた安保理も、今では、湾岸危機、旧ユーゴスラビア内戦、カンボジア復興など世界中の紛争処理で中心的役割を果たすようになった。テーマも、安保以外に、民族、宗教、人権、飢餓、難民まで多岐にわたり、広がっている。
 安保理が派遣を決める国連平和維持活動(PKO)でも、停戦順守から新国家作りまで手がけたカンボジアのPKOの成功は記憶に新しい。犠牲者が続出したソマリアでの武力行使型PKOなど苦い教訓もあるが、現在も、世界十六か所に約二万五千人がPKOに派遣されている。
 PKOの活動経費を負担するのは加盟国だが、これをめぐり国連内部で安保理絡みの論議が起きている。
 「発言の機会のないまま、カネだけ払わされるのは民主主義の原則に反するではないか。『代表なきところに課税なし』だ」
 PKO急増の流れの中で、安保理の枠拡大論がにわかに高まってきた根底には、こんな論理もあった。
 一方で、安保理は、紛争になりそうな地域で事前に芽を摘んでいく予防的側面や、飢餓、難民対策など人道的側面、さらには紛争後の復興、開発の準備に力点を置き始めた。ザイール、アフガニスタンなど、今後、停戦、そして、その後の復興に向け、対象となる紛争地域も少なくない。
 役割が増大する反面、見直しを求める声も強まる中で、日本が真に「頼りにされる」国になれるかどうか、来年からの二年間は、まさに日本にとって正念場であることだけは確かだ。
〈不公平な議席〉
 安保理メンバーになってから、何が一番変わったのか。波多野氏は「まず発言権があること。すべての重要な問題が安保理で議論される事態となると、各国から頼りにされる。いろいろ頼みにくる。安保理で敵を作ってでも発言する、そういう国に、頼んでくるんです。主張がはっきりしない、どっちかわからん国には、頼みに来ない」と語る。
 理事国の威光は強く、ふだんは注目もされない小さな国の場合、理事国選出後、「何か、頼みたいことはないか」と外相が安保理入りを武器に、各国を回ることもあるという。
 安保理理事国の威力を裏付けた形だが、不公平さもつきまとう。加盟国が増加しても安保理の議席は増えない。六五年の憲章改正で非常任理事国が六から十に増えたのが唯一の例外だ。
 非常任理事国は地域代表として、「アジア」に二、「アフリカ」に三、「中南米」に二、「西欧その他」に二、「東欧」に一が割り当てられている。各グループは毎年春、立候補表明国の中から統一候補を絞るが、決着がつかないと秋の国連総会での決選投票となり、投票総数の三分の二以上の支持を獲得しなければならない。
 加盟百八十五か国のうち安保理メンバーに一度もなったことがない国は七十か国以上ある。米英仏の常任理事国が含まれる「西欧その他のグループ」は二十七か国だが、安保理未経験国は六か国。一方でアジアは四十八か国のうち、未経験は二十七か国に上る。
〈メモ〉
◆10か国、任期2年
メモ 安保理は、交代なしの常任理事国五か国と、五つの地域グループに割り当てられた非常任理事国十か国(任期二年、連続選出は不可)から構成される。常任理事国はP5(パーマネント・ファイブ)と呼ばれ、母国語が国連公用語。
 非常任理事国は毎年秋の国連総会で五議席ずつ改選、秘密投票で選出される。議長は、理事国の国名のアルファベット順に一か月交代。日本は最近では八七年十一月、九三年一月に務めた。安保理協議には、国連事務総長も出席し、議長の横に座る。
《1997年の国連安全保障理事会理事国》
地域グループ 国名 任期
◇常任理事国
  中国、フランス、ロシア、英国、米国  
◇非常任理事国(任期2年)
アジア(48か国) 日本 98年末まで
韓国 97年末まで
アフリカ(53か国) エジプト 97年末まで
ギニアビサウ 97年末まで
ケニア 98年末まで
中南米(33か国) チリ 97年末まで
コスタリカ 98年末まで
西欧その他(27か国) ポルトガル 98年末まで
スウェーデン 98年末まで
東欧(20か国) ポーランド 97年末まで
グループ帰属未定4か国
国連加盟国総計185か国
《非常任理事国の回数が上位の国》
 日本(8回)ブラジル(7回)インド、アルゼンチン(各6回)カナダ、コロンビア、パキスタン、イタリア、ポーランド(各5回)オーストラリア、ベルギー、オランダ、ユーゴスラビア、エジプト、パナマ、ベネズエラ(各4回)
《常任理事国と日・独の通常経費、PKO経費分担率(%)の推移》
  1974 1983 1986 1992 1996
日本 7.15 10.32 10.84 12.45 15.435
7.150 10.320 10.840 12.447 15.487
米国 25.00 25.00 25.00 25.00 25.000
28.894 30.400 30.646 31.387 30.965
英国 5.31 4.67 4.86 5.02 5.315
6.137 5.679 5.958 6.102 6.583
12.97 10.54 10.20 6.71 4.450
14.990 12.817 12.504 11.437 5.512
5.86 6.51 6.37 6.00 6.408
6.773 7.916 7.809 7.293 7.935
中国 5.50 0.88 0.79 0.77 0.735
6.357 1.070 0.968 0.936 0.910
8.32 9.93 9.59 8.93 9.043
8.320 9.930 9.590 8.928 9.073
(注) 〈1〉上段が通常分担率、下段がPKO分担率
〈2〉ロシアについては1996年以外は旧ソ連の分担率
〈3〉ドイツについては1974、1983、1986年は東西両ドイツの分担率を合計したもの
 
 
 
 
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