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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/05/27 産経新聞朝刊
【主張】「神の国」釈明会見 本質を論議せぬ風潮を憂う
 
 森喜朗首相が神道政治連盟国会議員懇談会でのあいさつで「日本は天皇を中心にしている神の国」と発言してから十日余り、政界はその表現をめぐって揺れつづけた。首相が二十六日の記者会見で、改めて発言には「信教の自由」や「国民主権」を否定する意図は毛頭ないと説明し、「表現が誤解と混乱を招いた」ことを国民に向かって陳謝したのは、衆院解散を控え、政治的混迷に終止符を打つのが目的であった。
 しかし野党側は、首相が発言自体の撤回はしないとしていることなどを理由に、なおこの問題を政局や選挙戦の焦点に据える構えを続けている。
 野党がそのような態度をとるのは、発言全体の意味や意義よりも、「天皇中心の神の国」という誤解を生む表現を批判的にとらえ、あげつらうことが衆院選に向けて有利であるからにほかならない。
 つまり、一部の政治家やマスコミが主導するそうした社会風潮がわが国にはある。野党はその風潮に同調することが、衆院選での追い風になると踏んでいる。自民党内にも同じ見方から、選挙での敗北を恐れて、予定される六月二日の衆院解散の先延ばしを望む声がある。
◆片言隻句に飛びつく弊害
 先の石原慎太郎都知事の「三国人」発言の時も同じような現象が起きた。われわれは、片言隻句をとらえて本質的議論を封じる社会風潮を憂える。戦後日本社会が、そうした風潮によってゆがめられ、被ってきた弊害はけっして小さくない。そこからの脱皮が、かねてからのわが国の大きな課題のひとつであると考えるからだ。
 森首相の発言の全体をみれば、釈明会見でも述べたように、教育に宗教心をどう取り入れるかが重要だと主張するところに真意があったのは明らかである。それは、発言の後半で神道のみならず複数の仏教の開祖名を挙げ、「宗教は心に宿る文化だ。そういうことをもっと大事にしようということを教育の現場でなぜ言えないのか。信教の自由だから触れてはいけないのか。そうではない」と強調している部分で歴然と分かる。
 しかし、野党などは「天皇中心の神の国」という部分的表現をとらえて、「国民主権を否定するもの」「皇国史観や国家神道支持の思想の表明」などと指摘した。森首相が現行憲法の「国民主権」を否定し、明治憲法下の世の中に日本を戻そうと考えているという解釈をする。
 百歩譲って仮に野党の主張のように森首相の心中がそうだとしても、現在の日本では空論に過ぎない。首相は、釈明会見でも「国民主権」や「信教の自由」を順守すると言明した。そうである以上、批判は次の議論に発展はせず、野党の態度は批判のための批判にしかならない。
 首相発言を契機に論議すべきは、近ごろの青少年による犯罪が多発する社会を改善するにはどのような教育改革が必要かであり、そこでの宗教教育の位置づけであるはずだ。
 わが国の教育界は、特定の宗教を生徒・児童に押し付けることを禁じる憲法の規定がことさらに拡大解釈されている現状がある。その結果、神話を教えなくなったほか、剣道場から神棚が消え、精神修養のための座禅の体験学習にさえクレームがつく。
◆首相に求められる慎重さ
 東京の国立(くにたち)第二小学校では、教師が「旗(日の丸)は占領の印」と教え、児童が卒業式に日の丸を掲揚した校長に土下座を求めた。法制化された国旗を掲揚することさえ、戦前の軍国主義に通じると教える教育がまだ根強く残っている。教育改革ではそうした問題を放置できない。
 ただ、森首相には、首相としての発言は慎重のうえにも慎重であるべきだと指摘しておきたい。とくに、憲法改正論議とともに、戦後タブー視する時期があった天皇制、戦争責任など歴史認識関連、靖国神社参拝、核問題、差別問題−などでの軽率で不用意な発言を待ち受け、問題化しようとする勢力が、残念ながら日本の政界やマスコミなどに存在する。
 「三国人」という言葉が発言に含まれていたために、石原都知事の不法入国者による犯罪激増問題への警鐘は発展的論議とならなかった。今回も、首相の不用意な表現が、教育における宗教心の必要性という重要な議論提起をほとんど無駄にしてしまった。
 軽率な発言は、結果的に政治混乱を招き、政治不信を拡大させるどころか、国民生活にマイナスとなる政治停滞を招くケースも少なくない。首相には、慎重に発言を積み重ねて、国家、国民に必要な政策を推進していく英知が求められる。
 
 
 
 
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