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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/11/12 毎日新聞朝刊
[社説]天皇陛下のご即位を祝う
 
 天皇陛下の即位の礼の日がきた。
 きょう十二日、皇居で厳かに営まれる式典には、内外から約二千五百人が参席して即位を祝福する。儀式の後、皇居からオープンカーでパレードに臨まれる天皇、皇后両陛下のお姿は全国のお茶の間にも届くはずだ。
 私たちも心からお祝いを申し上げたいと思う。
 今回の一連の即位儀式は、新憲法の下での初の体験である。このことは、天皇陛下が新憲法の象徴天皇制の規定に基づいて即位した初めての天皇であることを示している。
 昭和天皇は旧憲法時代から天皇の位にあった。その時代の天皇は、憲法を超えた存在だったといってよい。だが、主権が国民にあることを宣言した新憲法では、天皇制のよりどころも憲法の枠内にあるとされるようになった。
 昭和天皇も新憲法下では「象徴」であったことは当然だが、最初から「象徴」として即位したのは、天皇陛下が初めてなのだ。その意味では、憲法の予定した象徴天皇制が本格的に機能を始めたことになる。その意義は小さくない。
 もちろん、そのことは天皇陛下ご自身も承知されている。昨年一月九日の即位後朝見の儀で「日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより、ここに、皇位を継承しました」と、いわれているからだ。
 即位の正統性を憲法に求めることに限らず、憲法とともに歩んでいこうとされる陛下の姿勢は、すでにはっきりしている。
 即位後朝見の儀では「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い」と述べられた。昨年八月の即位後初の公式記者会見でも「国民とともに憲法を守ることに努めていきたい」と、重ねて意思を表明されている。
 その天皇陛下のご姿勢を私たちも歓迎するものだ。
 象徴天皇制は、憲法にそう規定されているというだけでなく、国民から強く支持されている。それには、「開かれた皇室」に向けての、皇室の側からの不断の積み重ねが大きく貢献していることは間違いない。
 昭和天皇は戦後、焦土になった日本をくまなく回り、敗戦にうちひしがれた私たちの肩をたたいて励まされた。大群衆にもみくちゃになりながらの巡幸もあった。
 そのお姿が「国民と歩む皇室」像の礎となっている。
 天皇陛下も即位後、ご自身のことは「私」、出席者に対しては「皆さん」と呼びかけるようになられた。交通規制などさまざまな点で、気さくなスタイルを編み出されている。
 国民の間には、カリスマ性のある統治者タイプの天皇にあこがれを抱く意見もないではない。天皇の権威を強化しようとする動きもある。
 しかし、天皇の権威の絶対化が何をもたらしたかは、過去の歴史が証明している。さらに「開かれた皇室」の実現に、皇室も努めてほしいし、国民も努力すべきではないか。
 戦後になってようやく縮まった皇室と国民との距離を、再び広げようとする試みが許されてよいはずがない。
 即位の礼には、海外からも百六十の国と国際機関の代表が祝福の列に加わる。国際社会におけるわが国の影響力の大きさを、改めて思う。皇室外交の重要さもいっそう増すだろう。その点では、これまでにも大きな足跡を残されている両陛下に、これまで同様のご活躍を期待したい。
 昭和史をひもとくと、即位の大典のあった三年には、軍部が中国大陸で張作霖爆殺事件を起こしている。国際的な孤立感が次第に募り、軍国主義が国民に前近代的な国家主義を強制していく。その一部始終に「天皇」の名前が使われた。
 危険な兆候が露(あらわ)になりつつある中での、花電車やちょうちん行列であったのだ。
 私たちは、苦い教訓に学ぶ必要がある。即位の礼の日に、不幸な過去を繰り返さない決意を確認したい。
 
 
 
 
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