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〔21〕シトルルス・コロシンティス(スイカ属、ウリ科)
学名:Citrullus colocynthis(L.)Schrad.〔=Cucumis colocynthis L., Colocynthis vulgaris Schrad.〕/〔和名:コロシントウリ〕/英語名:Colocynth〔=Bitter apple, Bitter gourd/アラビア語名:
出土遺物番号〔1点〕:RT3415
解説:一年生の砂漠の匍匐植物で、砂漠のワーディーや平原で生育し、シナイ半島では現在も生育している。この遺物は果実の果皮で、地元に由来する。
 
〔22〕ココス・ヌシフェーラ(ココヤシ属、ヤシ科)
学名:Cocos nucifera L./〔和名:ココヤシ〕/英語名:Coconut〔=Coco-nut palm〕/アラビア語名:jawz al-hind
出土遺物番号〔9点〕:RT100, RT696, RT926, RT3041, RT3497, RT3792, RT4024, RT4528, RT4881
解説:常緑の扇状のヤシ樹で、中央アフリカの暑い地域で生育する。出土遺物は加工された果実の果皮の形状で、“ゴーザ(Goza)”と呼ばれる喫煙具〔水ギセル〕の破片のように見える。遺物は中央アフリカからもたらされたものであろう(図版2-1、2)。
 
〔23〕コムミフォラ・オポバルサムム(モツヤクジュ属、カンラン科)
学名:Commiphora opobalsamum(L.)Engl.〔=Balsamodendron gileadense Kunth, Amyris gileadensis L.〕/〔和名:メッカ・ミルラ〕/英語名:−〔Balm of Gilead, Malsam of Mecca〕/アラビア語名:
出土遺物番号〔4点〕:RT2923, RT5091, RT5129, RT6122
解説:常緑の低木で、エジプトのエルバ山域の暑くて水気がある砂漠のワーディーで生育する。その材木は非常に緻密で、暗い色をしている。茎の材構造の特徴としては、生長輪はない。木部の導管は、1〜4の導管が放射方向に集合して、散在している。放射組織は3〜12列で、放射組織内に腺がある。出土遺物は加工された材の砕片の形状である。遺物はエルバ山域からもたらされたものであろう(図版2-3〜-6、カラー図版4-1〜4)。
 
〔24〕コルチョルス・カプスラリス(ツナソ属、シナノキ科)
学名:Corchorus capsularis L./〔和名:ツナソ=綱麻、黄麻〕/英語名:Jute-plant〔=Gunny-bag〕/アラビア語名:
出土遺物番号〔ll点〕:RT250, RT436, RT499, RT504, RT664, RT1711, RT1860, RT1916, RT2418, RT2800, RT2809
解説:栽培種の繊維植物だが、エジプトでは栽培されていない。出土遺物はすべて繊維かマットかロープで、遺物は他地域に由来するであろう。
 
〔25〕コルディア・シネンシス(カキバチシャノキ属、ムラサキ科)
学名:Cordia sinensis Lam.〔=C. rothii Roem. et Sch., C. gharaf Ehr. ex Asch., C. subopposita DC.〕/英語名:−/アラビア語名:
出土遺物番号〔3点〕:RT164, RT193, RT1496
解説:常緑の高木、または、低木で、エジプトの砂漠のワーディーやオアシスで生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部の導管は、2〜3の導管が放射方向に集合して、散在している。放射組織は3〜6列で、接線縦断面で見ると50細胞まで。出土遺物は加工された材の砕片の形状である。この植物はエルバ山域で生育するので、遺物はエルバ山域からもたらされたものであろう。
 
〔26〕コリアンドルム・サティブム(コエンドロ属、セリ科)
学名:Coriandrum sativum L./〔和名:コエンドロ〕/英語名:Coriander/アラビア語名:kusbara
出土遺物番号〔1点〕:RT445
解説:一年生の栽培種の野菜であり、また、薬用植物でもあって、ナイル・デルタと水気がある平原で栽培される。遺物はその実で、地元に由来する。
 
〔27〕クプレッスス・セムペルビレンス(イトスギ属、ヒノキ科)
学名:Cupressus sempervirens L./〔和名:イトスギ〕/英語名:Cyprus-tree/アラビア語名:sarw
出土遺物番号〔2点〕:RT623, RT1304
解説:常緑の高木で、レバノン、ヨルダン、シリア、イスラエルの高所で生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部の導管は仮導管で、春材から秋材への変わり目にある。放射組織は1列で、まれに2列がある。樹脂道はない。出土遺物は加工された材に装飾された砕片で、ポットあるいは家具の一部の形状をしている。この植物はエジプトでは生育していないので、遺物は他地域からもたらされたものであろう(図版2-7〜9)。
 
〔28〕ドドナエア・ビスコーサ(ハウチワノキ属、ムクロジ科)
学名:Dodonaea viscosa(L.)Jacq./〔和名:ハウチワノキ〕/英語名:−/アラビア語名:
出土遺物番号〔2点〕:RT3438, RT5751
解説:常緑の高木で、水気がある場所やエルバ山域の高所で生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪はない。木部の導管は単独で散在しているか、あるいは、小さな導管に囲まれて集団になっている。放射組織は1〜3列で、2列はほとんどない。樹脂道はない。出土遺物は加工された材の形状である。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔29〕エフェドラ・アフィラ(マオウ属、マオウ科)
学名:Ephedra aphylla Forssk.〔=E. alte C.A.Mey.〕/英語名:−/アラビア語名:
出土遺物番号〔1点〕:RT7642
解説:常緑の低木で、シナイ半島の水気がある高所で生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部の導管は散在している。放射組織は1〜6(9)列。出土遺物は管(tube)状の形をしている。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔30〕ファイドヘルビア・アルビーダ(ファイドヘルビア属、ネムノキ科)
学名:Faidherbia albida(Delile)A. Chev./英語名:White-acacia/アラビア語名:
出土遺物番号〔19点〕:RT186, RT231, RT444, RT539, RT807, RT1513, RT2949, RT3782, RT4588, RT4728, RT4748, RT4769, RT4928, RT5149, RT6019, RT6084, RT6090, RT6749, RT7728
解説:落葉性の高木で、ワーディーの斜面や基底の地面で生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪はない。木部の導管は散在し、円形で単独か、あるいは、2〜5の放射方向の導管が集団になっていて、ゴム成分がある導管もある。放射組織は1〜2列だが、2列はほとんど見られない。出土遺物は加工された材の形状で、手作業の紡ぎ用具や針のような物であろう。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来するであろう(図版3-1〜3)。
 
〔31〕フィクス・パルマータ(イチジク属、クワ科)
学名:Ficus palmata Forssk. /英語名:Fig/アラビア語名:
出土遺物番号〔16点〕:RT27, RT31, RT49, RT159, RT250, RT829, RT1700, RT2217, RT2547, RT2674, RT2703, RT2798, RT3191, RT3239, RT3885, RT4772
解説:落葉性の野生の、または、栽培された高木で、砂漠のワーディーや泉の近くで生育する。茎の材構造の特徴として、生長輪は明瞭である。木部の導管は散在していて、単独であるか、あるいは、2〜4(7)の導管が放射方向に集団になっている。放射組織は1〜4列。出土遺物の形状は、加工された材、あるいは、未加工の材である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔32〕フィクス・プシュード−シコモルス(イチジク属、クワ科)
学名:Ficus pseudo-sycomorus Decne.〔=F. palmataForssk.〕/英語名:Fig/アラビア語名:jummayz
出土遺物番号〔1点〕:RT1051
解説:落葉性の野生の高木で、砂漠のワーディーや泉の近くで生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪はぼんやりしている。木部の導管は、2〜6(8)の放射方向の導管が集団になって、散在している。放射組織は1〜5列で、高さは80細胞まで。出土遺物は未加工の材の形状である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔33〕フィクス・シコモルス(イチジク属、クワ科)
学名:Ficus sycomorus L.〔= Sycomorus antiquorum Gasp.〕/英語名:Sycomore-fig〔=Sycamore, Mulberry fig, Pharao's fig〕/アラビア語名:jummayz
出土遺物番号〔10点〕:RT3376, RT3829, RT3904, RT4707, RT5602, RT5633, RT5773, RT6831, RT7823, RT7887
解説:常緑、ないし、寒い冬には落葉する高木で、砂漠のワーディーやナイル・デルタで生育する。茎の材構造の特徴として、生長輪はないか、あるいは、非常にぼんやりしている。木部の導管は散在し、2〜3(6)の導管が放射方向に集団になっているか、あるいは、ほとんど集合していない。放射組織は、1〜4列で高さは14細胞まで、および、5〜14列で高さ1.4mmまでで、時には放射組織内に乳管が観察される。出土遺物は加工された材、および、未加工の材の形状である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔34〕イチジク属(種名不明、クワ科)
学名:Ficus sp./〔和名:イチジク属〕/英語名:Fig/アラビア語名:
出土遺物番号〔9点〕:RT354, RT3869, RT4373, RT4499, RT4680, RT5120, RT5596, RT5838, RT5877
解説:出土遺物は、加工された材、および、未加工の材の形状である。この植物遺物は非常に破壊されており、そのため種の同定はできない。
 
〔35〕ワタ属(種名不明、アオイ科)
学名:Gossypium sp./〔和名:ワタ属〕/英語名:Cotton/アラビア語名:
出土遺物番号〔12点〕:RT250, RT393B, RT400A, RT494A, RT574B, RT607B, RT608B, RT1049, RT1468D, RT1612, RT1711B, RT1861
解説:一年生の栽培される繊維作物。出土遺物は織物、繊維、綿の糸の形状をしている。繊維の存在だけでは、種の同定はできない。
 
〔36〕ホルデウム・ディスティチョン(オオムギ属、イネ科)
学名:Hordeum distichon L./〔和名:ヤバネオオムギ〕/英語名:Barley/アラビア語名:
出土遺物番号〔5点〕:RT252, RT445B, RT606D, RT664D, RT1464B
解説:栽培される一年生の穀物作物。出土遺物は穀粒、稈の砕片、および穂の形状である。この植物は地元に由来するであろう。
 
〔37〕ホルデウム・ブルガーレ(オオムギ属、イネ科)
学名:Hordeum vulgare L.〔=H. sativum Pers.〕/〔和名:オオムギ〕/英語名:Barley〔=Common Barley〕
/アラビア語名:
出土遺物番号〔10点〕:RT101, RT250, RT445, RT471C, RT577B, RT662B, RT664C, RT1468B, RT1620, RT2255B
解説:栽培される一年生の穀物作物。出土遺物は穀粒、稈の砕片、および穂の形状である。この植物は地元に由来するであろう。
 
〔38〕ヒファエネ・テバイカ(ドームヤシ属、ヤシ科)
学名:Hyphaene thebaica(L.)Mart.〔=H. coccifera Pers., Coccifera thebaica L.,Cucifera thebaica DeL.,Corypha thebaicaL.,Douma thebaica Poir.〕/〔和名:エジプトシュロ〕/英語名:Doum-Palm〔=Ginger bread tree〕/アラビア語名:
出土遺物番号〔33点〕:RT37, RT250, RT423A, RT519, RT523A, RT524, RT551, RT560, RT563, RT663, RT930, RT941, RT996, RT1122, RT1223, RT1346, RT1468A, RT1702, RT1737, RT1738, RT1831, RT1854, RT1856, RT1927, RT2319, RT2377, RT2564, RT2825, RT2900, RT4692, RT6712, RT7793, RT8537
解説:常緑で、又に分かれた扇状葉のヤシ樹で、砂漠のワーディーや平原で生育する。出土遺物は、葉の細長い片でできている加工されたバスケットか、マットか、ロープの形状で、また、樹幹や根の砕片や塊りもある。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔39〕インペラータ・シリンドリカ(チガヤ属、イネ科)
学名:Imperata cylindrica(L.)Beauv.〔=Lagurus cylindricus L.〕/〔和名:チガヤ〕/英語名:Halfa-grass/アラビア語名:
出土遺物番号〔1点〕:RT394
解説:常緑の草本で、荒れ地で生育する。出土遺物は、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)あるいはエジプトシュロ(Hyphaene thebaica)の葉の細長い片でできた、加工されたバスケットに詰める遺物の形で使われた稈(中空で節のある茎)である。この植物はシナイ半島で生育しているので、この遺物は地元に由来する。







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