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私はこう考える【死刑廃止について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/04/07 毎日新聞夕刊
死刑制度、存続?反対? 「社会秩序守るため」「世界の潮流に逆行」
 
 「過酷な使命だろうと、職に就いた以上、職責を果たすべきだ」と、後藤田正晴法相が死刑執行命令書に署名し、先月、三年四カ月ぶりに死刑が行われた。死刑廃止に取り組んできた関係者から「世界の廃止の潮流に逆行する行為」との声が上がる一方で、「社会秩序を守るためにはやむを得ない」と法相を支持する声もある。現在、死刑判決が確定し刑務所にいる死刑囚は五十五人。再燃した死刑制度存廃をめぐる問題点を整理した。
 東京・渋谷で今月四日開かれた死刑執行に反対する抗議集会。島田事件の再審でえん罪を晴らした元死刑囚の赤堀政夫さん(63)があいさつに立った。仙台拘置支所で先月二十六日に死刑を執行されたとされる死刑囚とは、同支所で一緒に過ごした時期がある。「ほとんど話す機会はなかったが、毎日のように運動場などで顔を合わせた。いつも『元気でな』と目で合図をしたもの。あの人が執行されてしまったとは」と悲しげな表情で訴えた。
 政府が死刑制度存続の姿勢を崩さない一つの理由は、「世論」と言える。後藤田法相は、先月二十九日の参院法務委員会で、一九八九年の総理府の世論調査を基に「六七%が死刑存置で、これが国民の大方の意見」と答弁している。
 「遺族の感情」という問題もある。凶悪事件で肉親を奪われた遺族は加害者への恨みを「死刑でも足りない」と表現する場合が多い。そして、判例は死刑を憲法三六条で禁止する「残虐な刑罰」には当たらないとしている。
 元検事総長の前田宏弁護士は「死刑判決を出さざるを得ない凶悪犯罪があるという現実が重要。『死刑をやめたら、どうなるの』という素朴な心配が多くの国民にある。死刑は、そのような国民感情を基盤に存続している。将来的に世論によっては廃止もあり得るのだろうが、今はそこまでいっていない」と話す。
 こうした死刑存続論に対し、廃止運動を続けている菊田幸一・明治大教授(刑事法)は「死刑の誤判は取り返しがつかない。総理府の世論調査も『どんな場合でも死刑廃止に賛成か』などと質問しており、誘導的だ。人権擁護団体アムネスティのメンバーが昨年、鹿児島市内で三百十五人に聞いたところ、六割近くが廃止だった。詳細な世論調査を継続的に行う必要がある。また死刑制度が残っているのは、先進国では日本とアメリカの三十六州だけという事実も考えるべきだ」と話す。
 自民党の志賀節衆院議員や社民連の江田五月代表らを中心に、超党派の国会議員による「死刑廃止議員連盟」の結成準備も進められている。
 いかに凶悪犯とはいえ、死刑が「法の名の下で行われる殺人」であることに間違いはない。その存廃はやはり、幅広い国民的論議が基本になるだろう。
◇全面廃止は47カ国
 市民団体「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が昨年六月まとめた資料によると、死刑制度がある国は百六カ国で、ない、または事実上廃止の国は八十三カ国。あるのは日本のほか中国、韓国、エジプトなど。全面的な廃止はフランス、ドイツ、デンマーク、オーストラリア、オランダなど四十七カ国。イギリス、アルゼンチン、ブラジル、カナダなど十六カ国は、軍法によるなど特別な場合を除き廃止。ギリシャなど二十カ国では、過去十年以上執行がない。
 例えば、フランスでは一九七七年を最後に死刑が執行されず、八一年の大統領選でミッテラン大統領が廃止を公約、当選後に法案を国民議会に提出して採択され、廃止となった。ドイツでは統合前の西ドイツ時代の四九年に廃止された。一方、アメリカは各州の法によって異なり、三十六州で存続している。
◆死刑が確定した事件一覧◆
事件名(性別) 事件・判決内容(★は再審請求中)
電気店員強盗殺人事件(男) 1966年、福岡市の電気店で店員が殺され、現金約22万円が奪われ放火された。放火は否認。70年11月、上告棄却。★
名張毒ぶどう酒事件(男) 61年、三重県名張市で農薬入りのぶどう酒を飲んだ妻ら5人が死亡。犯行否認。一審無罪、二審死刑。72年6月、上告棄却。★
波崎殺人事件(男) 63年、茨城県で200万円の保険に加入させられた男性が青酸化合物を飲まされ死亡。犯行否認。76年4月、上告棄却。★
ピアノ殺人事件(男) 74年、神奈川県平塚市の団地で、ピアノの音がうるさいと階下の母子3人を刺殺。76年10月、控訴取り下げ。
清水一家強盗殺人事件(男) 66年、静岡県清水市の民家で一家4人が殺害され、現金約20万円が奪われ放火された。無罪主張。80年11月、上告棄却。★
薬局一家強盗殺人事件(男) 74年、北海道釧路市の薬局一家3人が殺害され現金などが奪われた。刑事責任能力が争われ、81年3月、上告棄却。★
雨宿り強盗殺人事件(男) 77年、長崎県の海の家の女性経営者が、殺人を犯し仮出所中の男に殺され現金約2万円が奪われた。81年6月、上告棄却。★
老女強盗殺人事件(男) 77年、東京都世田谷区の土地を売りに出した女性を共犯者と連れ出し殺害、登記書類を奪った。82年9月、上告せず確定。
徳島老人強盗殺人事件(男) 78年、徳島県内で行きずりの老人2人が殺され、現金2800円が奪われた。83年5月、控訴取り下げ確定。
大阪電解殺人事件(男2人) 74年、大阪市の会社幹部2人を殺害、神戸・ポートアイランドに埋め、事務所から小切手を盗んだ。84年4月、上告棄却。
3女性刺殺事件(男) 77年、群馬県伊勢崎市で交際を拒んだ女性ら3人を殺害。85年4月、上告棄却。養父母との面会を断られ国家賠償訴訟中。
旅館女主人殺人事件(男) 84年、青森市の旅館で女性経営者を刺殺、旅館前で通行人も刺殺。85年7月、控訴取り下げ。
小学生誘拐殺人事件(男) 86年、東京都江東区で小学1年男児を誘拐、殺害し身代金2000万円要求。87年1月、控訴取り下げ。
連続企業爆破事件(男2人) 74年、死者8人、負傷者165人を出した三菱重工ビル爆破など。殺意の不存在などを主張。87年3月、上告棄却。★
半田保険金殺人事件(男) 79―83年、愛知県などで知人3人を殺害、保険金2000万円をだまし取った。87年4月、上告せず確定。
女子大生誘拐殺人事件(男) 80年、名古屋市の女子大生を誘拐して殺害、身代金3000万円要求。死刑廃止を訴えたが、87年7月、上告棄却。
工場主強盗殺人事件(男) 75年、東京で工場主が殺害され、現金約1000万円が奪われた。自分の妻も保険をかけ殺そうとした。87年7月、上告棄却。
警察官強盗殺人事件(男) 76年、けん銃を奪おうと東京・東村山署の派出所から警官を誘い出し殺害。87年10月、上告棄却。
中学生・老女殺人事件(男) 79年、佐賀県で女子中学生を誘拐し殺害、家族から現金をだまし取った。熊本県の民家でも老女を殺害。87年12月、上告棄却。
連続保険金殺人事件(男) 78―79年、共犯者と、内妻の連れ子ら3人を保険金目当てに殺害。2人について無罪主張。88年3月、上告棄却。
病院長殺人事件(男2人) 79年、北九州市で知人の病院長を誘い出し現金95万円を奪い殺害、遺体をバラバラにして捨てた。88年4月、上告棄却。
中学生誘拐殺人事件(男) 78年、茨城県日立市で女子中学生を誘拐、殺害し、身代金3000万円要求。88年4月、上告棄却。
群馬2女性殺人事件(男) 81―82年、群馬県内で農作業中の女性2人を乱暴しようとして殺害。責任能力などが争われたが88年5月、上告棄却。
連続強盗殺人事件(男) 67―73年、名古屋と大阪で売春の女性ら4人を殺害、現金などを奪った。一部少年時の犯行。88年6月、上告棄却。★
神田ビル放火殺人事件(男) 81年、使い込みの発覚を恐れ、会社の上司とビル管理人を殺害、ビルに放火した。88年7月、上告棄却。
保険金放火殺人事件(夫婦2人) 84年、北海道夕張市で共犯者に自社の寮へ放火させ、6人焼死。保険金1億3800万円をだまし取った。88年10月、控訴取り下げ。
銀座ママ強盗殺人事件(男2人) 78年、東京でクラブママを殺害、129万円を奪い、愛媛県でホステスを殺害。上告取り下げ(88年10月)と上告棄却(90年2月)。
伯父一家強盗殺人事件(男) 83年、事業の資金繰りに困り、東京都大田区で伯父一家3人を殺害、預金通帳を奪った。88年10月、上告取り下げ。
日建土木殺人事件(男) 77年、名古屋市の土木会社の実質経営者と共謀、保険金目的で暴力団員に社員を殺害させた。89年3月、上告棄却。
2女性強盗殺人事件(男) 73―74年、埼玉県で別れ話などから女性2人が殺され、指輪などを奪われた。殺意否認と無罪主張。89年6月、上告棄却。★
殺し屋連続殺人事件(男) 70―73年、貸金取り立てのもつれなどから元暴力団員らを雇い、茨城県などで会社社長夫婦ら3人殺害。89年10月、上告棄却。
一家3人殺人事件(男) 85年、埼玉県岩槻市で弟が自殺したのは粗暴な父親のせいだとして父親ら3人を殺害。89年11月、上告棄却。
2中学生強盗殺人事件(男) 76年、群馬県伊勢崎市で隣家に強盗に入り、留守番の少女2人を殺害し放火。89年12月、上告棄却。
主婦殺人事件(男) 79年、熊本県内で農作業中の主婦を乱暴しようとし、抵抗され殺害。無罪主張。90年4月、上告棄却。
連続射殺事件(男) 68年、東京、京都などでガードマンら4人を射殺。2審で無期懲役。90年4月、差し戻し審の上告棄却で死刑確定。
長崎3人殺人事件(男) 78年、長崎県佐世保市で借金を断られた友人ら2人を殺害、現金を奪った。保険をかけた自分の妻も殺害。90年4月、上告棄却。
2女性乱暴殺人事件(男) 72―74年、北海道で帰宅途中の女性3人に乱暴、うち2人を殺害。無罪主張。90年9月、上告棄却。★
食糧商一家殺人事(男) 71年、神奈川県三浦市で借金を断られて腹を立て、船舶食糧商一家件3人を殺害。無罪主張。90年10月、上告棄却。★
直方強盗殺人事件(男) 80年、福岡県直方市で民家に侵入、家人の女性に見つかり、現金2000円を奪い殺害。90年12月、上告棄却。
事故偽装殺人事件(女) 74年、東京で夫をガス中毒に見せかけ殺害。78年、男性に睡眠薬を飲ませ殺害。夫殺しは否認。91年1月、上告棄却。★
景品商強盗殺人事件(男) 83年、東京都荒川区で知人に借金を断られて殺害、現金128万円を奪った。91年2月、上告棄却。
小学生誘拐殺人事件(男) 84年、広島県福山市で小学3年男児を誘拐、殺害し、身代金1000万円を要求。偶発的犯行を主張。91年6月、上告棄却。
母娘強盗殺人事件(男) 81年、埼玉県大宮市で仲間と知人方に侵入、母娘を殺害し現金70万円を奪った。91年11月、上告棄却。
両親殺人事件(男) 74年、千葉県市原市で交際相手の女性について両親にとがめられたことから殺害。無罪主張。92年1月、上告棄却。
幼女殺人事件(男) 79年、幼女殺人で無期懲役刑を受け仮釈放中に東京都北区で幼女にいたずらし、発覚を恐れ殺害。92年2月、上告棄却。
飲食店主強盗殺人事件(男) 90年、福島県の飲食店で女性経営者を殺害、現金2万5000円を奪った。殺意を否認したが、92年7月、控訴せず確定。
母娘強盗殺人事件(男) 85年、熊本県内で前妻の叔母宅に侵入、前妻の居所を聞いたが断られ、2人を殺害、現金を奪った。92年9月、上告棄却。
赤穂強盗殺人事件(男) 83年、兵庫県赤穂市で借金返済のため同僚の妻子を連れ出し殺害、健康保険証を奪った。92年9月、上告棄却。
連合赤軍事件(男女2人) 71―72年、群馬県の山岳アジトで仲間12人の殺人、長野県あさま山荘での銃撃戦など。殺意否認。93年2月、上告棄却。
 
 
 
 
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